真赤な恋の物語

まっかなこいのものがたり|The Scarlet Rose|----

真赤な恋の物語

レビューの数

4

平均評点

54.5(17人)

観たひと

23

観たいひと

2

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 日本
製作年 1963
公開年月日 1963/8/11
上映時間 99分
製作会社 松竹大船
配給 松竹
レイティング
カラー カラー/シネスコ
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督井上梅次 
脚本白坂依志夫 
井上梅次 
製作白井昌夫 
撮影長岡博之 
美術熊谷正雄 
音楽黛敏郎 
録音平松時夫 
照明小泉喜代司 
編集浜村義康 
スチール長谷川宗平 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演岡田茉莉子 藤丘摩紀
吉田輝雄 立野三郎
榊ひろみ 堺恵子
大木実 片目のボス
藤木孝 赤木健二
根上淳 鬼頭
諸角啓二郎 辻村
北竹章浩 
安部徹 山田警部
明智十三郎 田所刑事
山本幸栄 吉本刑事
沖秀一 片目の部下A
長谷川竜男 片目の部下B
松原浩二 トミイ堺
土紀洋児 浅井
竹田法一 煙草屋の親爺
土田桂司 黒眼鏡の刑事A
渡辺紀行 黒眼鏡の刑事B
山路義人 船長

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

メリメ原作“カルメン”より翻案。「嘘(1963)」の白坂依志夫と「わたしを深く埋めて」の井上梅次が共同で脚本を執筆。井上梅次が監督したメロドラマ。撮影は「二人だけの砦」の長岡博之。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

立野三郎警部補刑事は赴任早々、すでに内偵中の密輸組織の中へ潜入することを命ぜられた。それはミナト屈指のキャバレー“ハバネラ”だった。ここでは、最近支配人の鬼頭を中心に、歌手であり、彼の情婦でもある美貌の摩紀をめぐって地下組織が暗躍しているというのだ。麻薬患者のピアノ弾きのあとに入った三郎は、うまく摩紀に接近することができたが、その情熱的な魅力に、ひきこまれていくのだった。或る日鬼頭と摩紀がたくらんだ麻薬取引の情報を知った三郎は警察に通報した。多量の麻薬は押収された。三郎の密告と知った鬼頭は、ガスライター責めのリンチで、三郎にドロをはかせ、サツの廻しものというその身を買収した。すてばちになった三郎は、摩紀との情欲の生活に陥ちこんでいった。摩紀と三郎の仲を嫉妬した鬼頭は、殺そうと迫った。ちょうどその時、鬼頭のボスでハバネラを舞台に暗黒街に君臨していた片目と呼ばれる男が高飛び先から突然帰ってきた。鬼頭の裏切行為に怒った片目は残忍な“また裂き”のリンチで殺してしまった。摩紀のとりこになった三郎は、ともすると片目に傾きかける摩紀を前にこの大者を相手どって五分の勝負を打つばかりでなく、片目の乗るモーターボートに火をかけ、消してしまうのだった。かくして三郎は警察官を辞職し“ハバネラ”の支配人となった。甘い夢を見る彼の前に人気歌手赤木健二の出現は、意外であった。若々しい肢体に魅惑された摩紀は健二との情欲におぼれた嫉妬に狂った三郎は摩紀の胸を刺した。ぐったりした摩紀を抱く三郎の背中を片目の手下の銃口が火を吐いた。打ちよせる波の中に二つの死体が洗われていった。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1963年10月下旬号

日本映画批評:真赤な恋の物語

1963年9月下旬号

日本映画紹介:真赤な恋の物語

2022/08/12

2022/08/13

50点

テレビ/有料放送/衛星劇場 


カルメン‘63。

ネタバレ

メリメの『カルメン』を現代日本(当時)を舞台に翻案化。ジプシー娘と将校の恋愛を、キャバレーの人気歌手と潜入捜査官の物語に。岡田茉莉子が演じる情熱の女と、吉田輝雄が演ずる恋愛にハマって身を持ち崩していく警察官という配役は悪くないし、「嵐を呼ぶ男」で文字通り日本映画界に嵐を呼んだ井上梅次がバックステージを犯罪に絡めて描く作品がどのようなものか序盤では期待させられた。

しかし、胸ポケットに入れた警察官としての給料袋を見つかってバレてしまうなんて潜入捜査官としてはダメダメだろう。カルメンに熱を上げた悪人たちを排除していくストーリーにもリアルさも緊張感も感じられない。

情痴殺人に至るという既定の結末にただただ辻褄を合わせただけの苦しい作品になってしまっている。

(※BD-R 録画 CATV 衛星劇場)

2022/05/25

2022/05/25

62点

テレビ/有料放送/衛星劇場 


悪の道へ

ビゼーのカルメンを翻案したもの。日本だと闘牛士はいないので、色々背景やら何やらをうまくギャングの世界に置き換えたもの。
原曲をうまく利用してそれらしく作ってある。ストーリーは陳腐だが、原作に敬意を表しての採点である。
カルメンに当たるのが岡田茉莉子。岡田の悪女ぶりもなかなか良い。ラストは日本的にまとめてある。ドン・ホセが吉田輝雄。彼は警察官で岡田の誘惑に負けて悪の道に踏み込んでしまう。ミカエラはキャバレーの花売り榊ひろみ。闘牛士は藤木孝。

2022/05/01

2022/05/02

35点

テレビ/有料放送/WOWOW 


どうすれば、これほどタガが緩んだ映画が出来るのか?

これが「勝利者」や「嵐を呼ぶ男」で石原裕次郎の人気を不動のものに高めた井上梅次の仕事なのか。
白坂依志夫は共同脚本の井上梅次に飲み込まれたか。それとも原作者メリメに飲み込まれたか。1958年当時、まだ彼は増村保造(暖流、巨人と玩具)、岡本喜八(結婚のすべて)、須川栄三(僕たちの失敗)、篠田正浩(燃ゆる若者たち)などと脂が乗り切った仕事をしていた頃のはずが、とんでもないダルいシナリオに仕上がげたものだ。
黛敏郎が井上梅次とタグを組んで、どんな相乗効果が生まれるかと密かに期待したのだが、この当時、市川崑、今村昌平、川島雄三、野村芳太郎、渋谷実、中村登と矢継ぎ早に聴かせたシャレた感覚がここには無い。メリメの「カルメン」ということで引き受けたのかもしれないが、ビゼーに挑もうとして、とんだドンキホーテになってしまった。台本を見てから引き受けるかどうかを考えるシステムは日本にはなかったのだろう。

安部徹や明智十三部らの刑事がキャバレーに踏み込んできてドアを叩くと、中にいた吉田輝雄と岡田茉莉子は恐れ慄(おのの)きながら抱き合ってそのドアを注視する。延々とドアを叩き、延々とドアを見つめるカットバックが重ねられる。刑事がそこまで迫っているんだ、ヒーロー、ヒロインは逃げるなり隠れるなり動きようがあるはずなのに、ただただドアを見つめるばかり。観ていて苛立つやら呆れるやら馬鹿らしくなるやら。
せめて、吹き替えなしの藤木孝の、生きの良い歌と踊りが見聞きできたのをよしとするか。

2018/04/11

2018/07/20

30点

映画館/東京都/シネマヴェーラ渋谷 


やはり粗雑な60年代梅次

ネタバレ

シネマヴェーラ渋谷のニッポンノワール特集「真赤な恋の物語」は、今特集で4本目の井上梅次映画ですが、この映画が作られた1963年、梅次は、「第三の影武者」(4月21日公開、大映京都、市川雷蔵主演)、「わたしを深く埋めて」(6月8日公開、大映東京、若尾文子主演)、「暗黒街最大の決斗」(7月13日公開、東映東京、鶴田浩二・高倉健主演)、「真赤な恋の物語」(8月11日公開、松竹大船、岡田茉莉子主演)、「犯罪作戦NO.1」(10月19日公開、大映東京、田宮二郎主演)、「踊りたい夜」(12月14日公開、松竹大船、水谷良重主演)と6本もの公開映画を、都合4つの撮影所を股に掛けて作るという濫作ぶりで、わたくしが観ていない「第三の影武者」を除いて、予算規模が大きいだけ見た目が派手だった「暗黒街最大の決斗」がなんとか面白さをキープしていたほかは、どれもこれも小手先を弄した60年代梅次らしい雑な映画で、この「真赤な恋の物語」もそうした雑な映画の一つと断じて良いでしょう。
メリメ「カルメン」を翻案した本作で、ヒロイン岡田茉莉子は、港町横浜にあるキャバレー“ハバネラ”の歌手という設定ですが、岡田本人が歌っているわけではなく、歌声は吹替えです。映画は、このキャバレーの支配人・根上淳が、ピアニストとして働いていた松原浩二を船に乗せて溺死させる場面から始まります。恋多きヒロイン岡田茉莉子が松原浩二に熱を上げたため、岡田に対してパトロン面している根上が嫉妬し、殺したというわけです。岡田としては、お気に入りだったピアニストが姿を隠してしまったことに不満タラタラです。
場面変わると、横浜駅に着いた男・吉田輝雄が怪しげな男二人に拉致されます。吉田輝雄の役柄は、この横浜に赴任してきた刑事ですが、さては横浜のギャングが刑事・吉田に釘を刺すべく拉致したのかと思わせておいて、実は拉致した男二人も刑事でした。○○と思わせておいて実は××だった、という梅次が良く使う手ですが、わざわざ拉致させる必要などないのであり、単なる薄っぺらいハッタリに過ぎません。部下二人に命じて吉田を拉致させた安部徹扮する主任刑事は、裏で麻薬取引をしているらしい“ハバネラ”に、ピアノが弾けるという特技を持つ刑事・吉田をピアニストとして潜入させるという任務を与えます。
“ハバネラ”にピアニストとして潜入した吉田輝雄のことを、岡田茉莉子はすぐに気に入って愛玩する一方、店に出入りする花売り娘・榊ひろみも吉田輝雄に対して熱い視線を送ります。この榊ひろみは、冒頭で殺された松原浩二の妹で、兄が行方不明になった理由を探るために“ハバネラ”に花売り娘として接近し、兄の後釜として入った吉田輝雄にも接近し、兄のことを探る手助けを得ようとするのであり、刑事として潜入してきた吉田としては榊と利害が一致するわけですから、本来の物語の要請からすれば、吉田と榊が共闘関係を築くのが一般的なパターンのはずながら、このお話の基が「カルメン」であるがゆえに、そのパターンからお話はどんどん逸脱し、吉田輝雄はひたすら悪女・岡田茉莉子の毒牙に掛かってゆくことになります。
榊ひろみの役柄など、ろくに機能させないまま、いつの間にかお話から退場していますし、“ハバネラ”を牛耳って麻薬取引も仕切っていたと思われていた根上淳の上に、どこか外国に高飛びしたのちに戻ってきたという設定で大木実が登場して、彼こそが岡田茉莉子の本当のパトロンということになるものの、今や刑事という立場など捨て去って(警察上司の安部徹が“ハバネラ”の麻薬取引現場を押さえようとして、吉田輝雄の情報に従って捜査網を敷いたところ、吉田はあっさり警察情報を“ハバネラ”上司の根上淳に売って、警察の大掛かりな捜査網を無駄使いさせます)、岡田を想う道一筋を突っ走る吉田輝雄が、大木実に勝負を仕掛けるとあっさり吉田が勝利した上で、その勝利というのが、元は警察官とは信じられないくらいに、大木が乗っているボートを焼き払って大木を焼死させるという残酷な手口を吉田が使うのであり、白坂依志夫と梅次の二人がクレジットされた脚本の粗雑さが露呈しています。
今や“ハバネラ”の支配人の座に就いて岡田茉莉子への愛を貫く吉田輝雄に対して、岡田のほうは新しく店に出演し始めた歌手・藤木孝に夢中になり、嫉妬に狂った吉田が岡田のことを刺し殺す一方、吉田も大木実の残党によって殺されるという、和製「カルメン」物語。
60年代の梅次は、呆れ返るほどに粗雑な映画ばかりです。