神保町シアターの藤原審爾特集の1本。案内チラシの「鴈治郎や蝶々、中村是好ら脇を固めるベテラン陣も好助演」に惹かれて観たが、超傑作。増村監督の“隠れた名作”だと思う。旅芸人一座の二代目中村銀之助(本郷功次郎)は、愚連隊になっていたが、親の死を契機に兄貴分の藤巻潤に薦められて一座を引き継ぐことに。しかし、一座の役者が銀之助の二代目を嫌っていなくなり、藤巻やその子分千波丈太郎が、愚連隊を辞めて役者になることを決意。藤巻は自分の彼女や、周囲にいるパンパンやはみ出し者をスカウトして頭数を揃える。この辺りは「七人の侍」風。素人を役者にするために、今は落ちぶれた歌舞伎役者中村鴈治郎(さすがの好演で唸ってしまった)を指導役に迎え、素人が一応役者に。興行師からマネジャー中村是好が劇場出演を断られるが、元パンパン女性が「故郷の潮来なら、処女を捧げた幼馴染が劇場主をしているから、その小屋に行こう」と言って、劇団は無事に旗揚げし、芝居は大評判となる。この旗揚げ芝居を次から次と見せるテンポの良さは、さすが増村監督、実に見事。その後、興行師との喧嘩から公演が妨害されるが、群馬の小屋主ミヤコ蝶々の登場で、劇団は公演可能に。しかし、人気カップルの引き抜き、千波丈太郎の傷害事件、中村是好の入院などピンチが続き、そこに本郷が地元の旧家の病院長の娘と恋仲になり、事態は村全体を巻き込む大事件に発展していく。笑えるシーンも多く、93分ぎっしりと中味が詰まった痛快劇だった。【生誕100年記念-映画に愛された小説家 藤原審爾の世界】