黒の死球

くろのしきゅう|----|----

黒の死球

レビューの数

8

平均評点

57.4(18人)

観たひと

32

観たいひと

2

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル サスペンス・ミステリー
製作国 日本
製作年 1963
公開年月日 1963/6/8
上映時間 83分
製作会社 大映東京
配給 大映
レイティング 一般映画
カラー モノクロ/シネスコ
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督瑞穂春海 
脚色田口耕三 
原作高原弘吉 
企画原田光夫 
撮影中川芳久 
美術山口煕 
音楽池野成 
録音三枝康徐 
照明泉正蔵 
編集鈴木東陽 
スチル沓掛恒一 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演宇津井健 柏木茂久
河野秋武 浜田信一
藤由紀子 娘しず枝
倉石功 菊川浩
春本富士夫 父浩三
遠藤哲平 叔父浩助
神山繁 羽田野透
杉田康 芦沢
村田扶実子 お芳
近藤美恵子 竹村伸子
風間圭二郎 弟健太郎
浦辺粂子 祖母そで
北原義郎 末松
大山健二 西尾
菅井一郎 犬塚
花布辰男 滝井
早川雄三 河上
丸山修 岸本
三島愛子 お増
酒井三郎 坂口
渡辺鉄弥 八郎
村上不二夫 捜査係長
杉森麟 刑事
藤野千佳子 ハル子
伊達正 旅館主人
花井弘子 京子
田中三津子 女給A
池上多加子 女給B
小原利之 時計屋の主人
槙俊夫 スカウトA
隅田一男 スカウトB
網中一郎 スカウトC
山中雄司 スカウトD
津田駿二 スカウトE
小笠原まり子 看護婦
原田玄 中年の巡査
此木透 教務主任
竹内哲郎 教員A
小杉光史 小使
中田勉 老いぼれ運転手
飛田喜佐夫 スポーツ記者A
丸井太郎 スポーツ記者B
吉葉千太郎 スポーツ記者C
飯塚昌二 スポーツ記者D
長田健二 スポーツ記者E
大西恭子 ウエイトレス
沢善郎 警官A
高山京子 女事務員
志保京助 タクシーの運転手
市田ひろみ 銀座バーのマダム

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

オール読物所載・高原弘吉原作“あるスカウトの死”を「やっちゃ場の女」の田口耕三が脚色、「殺陣師段平(1962)」の瑞穂春海が監督した推理もの、“黒”シリーズの七作目である。撮影は「黒の報告書」の中川芳久。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

ルビースのスカウト柏木は、高校随一の左腕投手菊川を獲得した。喜びも束の間、先輩スカウト、イーグルスの浜田の死を知った。警察は断崖下で発見された浜田を菊川獲得失敗からの自殺と断定した。柏木は自殺説を信じなかった。浜田の娘しず枝は、遺品中に女物の高級時計購入の領収書を発見したが、実物は見あたらなかった。そんなしず枝にレントゲン写真が届いた。浜田の頼んだもので、骨折した男の左腕だった。過日、菊川はケガをしていたので行ってみたが菊川は回復していた。偶然バアで柏木は浜田の時計ナルダンをしているユカリという女をみつけた。翌日、柏木はユカリを訪ねたが、彼女は失踪していた。柏木はかつて浜田が、108米の遠投記緑うんぬんといったのを思い出し、早速県の体育課で調べた。やっとその男が竹村健太郎と判明した。健太郎は骨折していた。柏木は、たくみに健太郎を診断したのは外科医の犬塚だと聞き出した。しかし犬塚はこれを否定した。柏木は菊川を彼に紹介した教師羽田野の叔父がこの犬塚であること、さらに健太郎の姉がユカリで本名は伸子だという事実を掴んだ。浜田は健太郎を狙ったのだ。伸子は浜田に惹かれていった。伸子を愛している波田野は浜田を憎んだ。菊川の件で欲の出た羽田野は、後輩健太郎でも一儲けを企んだ。そして羽田野は、健太郎骨折の芝居を書いて条件の悪い浜田に断念させようとした。浜田はあきらめなかった。このため羽田野はいつも静岡に泊る浜田をうまくだまして、自分の母の経営するへんぴな温泉地へ呼び出し殺害した。すべてを羽田野は自白した。同時に病魔に冒されていた彼は喀血して果てた。柏木はしず枝と結婚の約束をかわした。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1963年7月下旬号

日本映画批評:黒の死球

1963年7月上旬創刊45周年記念特別号

日本映画紹介:黒の死球

1963年5月下旬号

新作グラビア:黒の死球

2023/10/09

2023/10/09

60点

テレビ/有料放送/衛星劇場 


スカウトの死

ピッチャーからスカウトになったばかりの柏木(宇津井健)はお世話になった他球団のスカウト浜田(河野秋武)とあるピッチャーの争奪を懸けて戦っていた。結局金銭ずくで柏木が獲得したが、浜田はその日に自殺していた。いや自殺ではなく他殺だが、警察では自殺とされた。
ピッチャーの争奪を巡るスカウト同士の争いのようだが、実はその裏では金銭を巡る汚い思惑もうごめいていた。
事件の犯人は意外と早く見当が付いて、サスペンス映画としては物足りない。もう一つ女の影がつきまとうが、こちらも単純に解決し、面白みがない。
宇津井健の演技はまずまず。熱血スカウトをよく演じている。

2023/10/05

2023/10/08

60点

テレビ/有料放送/衛星劇場 

「黑の試走車」が業界の闇をリアルな内容とシャープな映像で描き出した。だから、「黒」シリーズのこの映画もスカウト業界を描いた「あなた買います」のサスペンス版になるのかとひそかに期待してしまった。
事件の発端はスカウト業者の河野秋武が急死したことで始まって、さぁこれから球界の闇がどんな風に炙(あぶ)り出されてくるかとワクワクして観ていた。ところが、被害者の職業がスカウト業というだけで、単なる痴情の絡(もつ)れに話は小さくなった。大山鳴動するかと思ったら、結局、鼠が一匹血を吐いただけだった。考えようによっては、作者は推理劇としてのミスリードを図ったのかもしれない。「黒の試走車」で見事に企業競争の内幕を見せられたので、その方向に期待を抱いてしまったこちらが良くなかったのかもしれない。

期待に沿ったエピソードが無いわけではない。
才能ある球児を見つける方法として、高校の野球部の情報を得るだけでなく、体力測定のデータから拾うことで、隠れた資質をいち早く見つけ出せるのではないかと思い付くのは面白い。でも、アイデアとして話題になるだけでこれが物語に生かされないで終わった。

キャスティングがまずいと思う。神山繁の真面目な高校教師はいかにもミスキャストと思いながら見ていたら、やっぱりただの脇役に終わらなかった。内容を推理で辿る以前にキャスティングそのものでミスリードに失敗している。

ところで、キネノートのデータに誤りあり。音楽は池野成ではありません。奥村一でした。出だしは池野成の音に近かったのですが、それよりもメロディアスになっていたように思います。

2020/03/10

2023/09/11

75点

選択しない 


宇津井は遠投108米

 黒シリーズ第四弾(kinenoteでは七作目とありますが、四作目が正しい)、「黒の死球」であります。「死球」を「デッドボール」と読ませる文献もありますが、ここはそのまま「しきゅう」で良いやうです。ポスタアにも「しきゅう」と振り仮名がふつてあります。

 監督は瑞穂春海。シリーズでは本作のみの参加。原作は高原弘吉「あるスカウトの死」、脚色は田口耕三、音楽はお馴染み池野成、印象的なメインテーマが繰り返し流れます。一寸五月蝿いけど。

 プロ球団「ルビース」のスカウト柏木(宇津井健)は、長野まで出向き、高校左腕ナムバアワンの菊川投手(倉石功)と契約に漕ぎつけます。ところがそのタイミングで、「イーグルス」の先輩スカウト・浜田(河野秋武)の自殺の報が届きます。菊川獲得に失敗した事が原因と警察は判断しましたが、柏木には信じられません。

 浜田はかつて選手としての柏木をスカウトした事があり、浜田の娘しず枝(藤由紀子)は柏木と付き合つてゐます。そのしず枝の元へ、骨折した左腕を撮影したレントゲン写真が送られます。菊川のものかと思はれましたが、彼の左腕は異常なし。

 浜田の死の真相を探るべく行動を開始した柏木。浜田が高級時計を贈つたユカリ(近藤美恵子)なる女性の存在を知り、彼女にコンタクトを取らんとしますが彼女は失踪してしまふ。柏木は独自の捜査により、実はユカリの本名は竹村伸子で、彼女の弟・健太郎(風間圭二郎)が骨折の人物と判明します。そして伸子が惹かれてゆく浜田に、嫉妬する男がゐたのです......

 プロ球界のスカウトが主人公なので、今回はこの世界の裏側を暴き魑魅魍魎が蠢く物語か、と早合点しました。実際はさういふ大きな社会的な問題を抉る話ではなく、愛する女性が別の中年男に心を持つて行かれたので、嫉妬に狂つた男の犯行物語でした。黒シリーズも随分矮小化されたものです。

 なので本作は純粋に「犯人は誰か?」式のミステリイとして愉しめば良いと存じます。それにしても主役の宇津井健、いつもながらの熱血ぶりなんですが、スカウトマンのくせに完全に探偵やブンヤ並みの捜査力を見せつけます。特にレントゲン写真の主を探すにあたり、県の体育課で書類の山と格闘するさまはまるで「警視庁物語」シリーズですな。

 そして河野秋武と近藤美恵子との関係を辿る過程で、倉石功→菅井一郎→神山繁→近藤美恵子と芋蔓式に人間関係が解けてゆくさまは、一寸都合は良すぎるが見せ方は上手いと存じます。
 ネタバレですが、結局黒いのは神山繁個人であつたと云ふ訳でした。善人面で肺を病んでゐる神山が犯人でしたが、警察に捕まるシーンも無く、病魔に侵されそのまゝ終つてしまふ哀しい役。

 ヒロイン藤由紀子は安定の美しさ。宇津井とは恋仲に見えましたが、スカウトといふ職業がネックになつて、当初は結婚は諦めたやうです。その意思を態々封書にして宇津井に伝へますが、宇津井は「中身は見なくても分かつてゐる」と、開封しません。そんな二人が一件落着すると、一転結婚への話が成立し、宇津井は「もう必要ないな」と封書を破り捨てるのでした。一体藤の葛藤は何だつたのだ?と思ひますが、最後は爽やかな雰囲気で、末良ければ総て良し、と申せませう。

2023/02/07

2023/02/07

60点

レンタル/東京都/TSUTAYA/SHIBUYA TSUTAYA/VHS 


野球スカウトと殺人事件…

大映の“黒”シリーズ第4作。
野球スカウトマンのスカウト合戦のさなか、1人のスカウトマンが死亡して、自殺か殺人か?という物語になっていく映画。

宇津井健がスカウト役、死んだ先輩スカウトマンの娘=藤由紀子、…という配役なので、「おっ、二人がイイ仲になるかな?」と思うと、初っ端で宇津井健が藤由紀子にフラれる(笑)
しかし、本作でも藤由紀子は超絶美人。

ある野球球団で投手が事故で使えなくなったため、スカウトマン柏木(宇津井健)が高校随一の投手獲得のため(投手の住む)長野に行く。
この映画が撮られた頃の「長野の街並み」は、善行寺を中心にして、高い建物の無い[昔懐かしの風景]である。
そして、柏木は高校生投手の獲得に奔走するが、大先輩スカウトマンの浜田(河野秋武)が崖の下で死亡しているのが見つかる。
すると、この後は野球スカウトマンの物語ではなくなって、殺人事件の真相を宇津井健が追いかける物語になっていく。スカウトマンが刑事みたいになっていく、凄い展開である(笑)

スカウト合戦、女をめぐる男たちの思惑、金にまつわる人間模様、そして男女の恋愛……など様々なエピソードを詰め込んだ映画になっており、それなりに楽しめる。

このシリーズ(全11作)は、田宮二郎か宇津井健が大半(1本だけ川崎敬三)だが、本作は宇津井健なので、田宮二郎のようなクールな感じではなく、思いやりを感じるような雰囲気。

それなりに楽しめる映画である。

2018/05/19

2018/08/15

60点

映画館/東京都/ラピュタ阿佐ヶ谷 


画面作りが丁寧で全体も悪くない

ラピュタ阿佐ヶ谷のモーニングショー、“大映の「黒」シリーズ”特集で初めて観た「黒の死球」は、プロ野球チームのスカウトマンである宇津井健が、先輩スカウトで恋人・藤由紀子の父親でもある河野秋武が何者かに殺される事件が起きたため、ちょうど宇津井が狙いを付けた高校生投手・倉石功のことを、河野秋武も狙っていたことから、そのことが殺しに関係するかも知れないと思って周辺を探っていたところ、河野秋武は別の高校生投手・風間圭二郎をスカウトしようとしていた上、その風間の姉である近藤美恵子との再婚を望んでいたことがわかるというふうに、徐々に事件の概要が浮かんでくるドラマです。
それが殺人を犯すほどのことなのか、犯人の動機が疑わしいし、そもそも野球のスカウトマンがそんなに捜査に費やす時間があるはずがないなど、設定も展開も噴飯ものではありますが、瑞穂春海の画面作りは丁寧で、時々ハッとするようなアングルを見せるなど、決して悪くないと思わせる映画です。
1950年代は悪くなかった瑞穂春海は、60年代になって底が割れたと思っていましたが、この1963年製作「黒の死球」は、思ったほど悪くなかったですから、60年代の瑞穂作品も、今後どこかの小屋で掛かることがあれば観逃さないようにしようと思います。

2018/05/19

2018/05/21

-点

映画館/東京都/ラピュタ阿佐ヶ谷 

『黒の死球』。プロ野球のスカウトに絡む事件の真相を探る宇津井健。1960年頃の長野駅の駅舎は味がある。街中にはビルはほとんどなく、善光寺が近く見える。長野行列車には食堂車が連結されている。ガラス板にハンカチを貼り付けて干す。乾物屋の店先に「えびたま」の箱が沢山あるが、これは何だろう。