マイトガイには珍しい戦争アクション「俺は地獄の部隊長」であります。古川卓巳監督作品。紙屋五平の原作を、山崎巌&佐藤道雄が脚本化。音楽は小杉太一郎で、主題歌「俺は地獄の部隊長」、挿入歌「男なら」、「皇国の母」ともにアキラ自身の歌唱となつとります。
物語の舞台は終戦間近い昭和20年の北支。日本軍は安平城で守りを固めてゐましたが、八路軍の勢ひは止められず、三つの砦のうち二つは既に陥落、残る第三砦も食糧が三日と持たない有様です。桂木少尉(小林旭)以下、七名のみが残る第三砦。そのうち佐々木少尉(内田良平)は、桂木を弟の仇として狙ひ紛れ込んでゐました。佐々木の弟はゲリラ隊に武器の横流しをしてをり、それを咎めた桂木を殺さうとしたので、已む無く桂木は彼を射殺した事情があります。しかしその話を信用しない佐々木。目撃者がゐると主張するのでした。
そんな時に八路軍の攻撃が始まりますが、桂木は逆に敵陣で火薬庫を爆発させます。その攻防の中で、桂木はリカ(朝風みどり)と云ふ娘を救ひ出します。彼女こそ佐々木が云ふ弟殺しの「目撃者」で、桂木が本当のことを話してくれと頼むも、改めて彼女は偽証をするのでした。
翌朝、リカは八路軍に日本軍の情報を送り、皆がまだ寝静つてゐる間にダイナマイトに点火する! 実は彼女は肉親を日本兵に殺された中国人で、ゲリラ隊に参加してゐたのです......
本隊から見放された「第三砦」を預かるマイトガイ。「ロビンフッド」の異名があります。配下たちも夫々ニックネームがあり、「六区のケン」(和田浩治)、「赤鬼」(内田良平)、「忍びの源」(井上昭文)、「河内山」(藤村有弘)、「一本刀」(武藤章生)、「ドモ政」(土方弘)、「椿姫」(天坊準)と、なつてゐます。「ロビンフッドと愉快な仲間たち」を意識してゐるのでせう。但しこの設定は余り活かされませんでした。
戦争映画の体裁を採つてゐるものの、その中身は従来通りの日活無国籍アクション。ヒーローにアキラ、ライヷルに内田良平、味方を見殺しにする悪役ポジションに二本柳寛、ヒロインには朝風みどりと、相関図としては何ら目新しいものではございません。リアルな戦場を再現するよりも、ヒーロー・アキラをカッコよく見せる事に腐心してゐるやうに見えます。
だから敗戦間近で物資も不足、食糧も足りない筈なのに、兵隊さんは皆丸々して血色が良いのです。都合よくマイトガイが歌ふためのギターもあるし、武器弾薬も足りないと言ひつつ尽きる事がないのでした。
朝風みどりの正体が判明すると同時に、八路軍の総攻撃が開始され大戦闘シーンが披露されます。兎に角爆発また爆発の連続で、火薬使ひまくり。クレジットに無いけれど、特殊技術はやはり金田啓治でせうか。まるで中野昭慶の仕事みたいなスペクタークルのつるべ撃ちであります。
次々と部下が斃れ、最後に残つたのがアキラと内田。八路軍の圧倒的な兵力の前に、最早最期を待つだけの状況になり、ここへ来て漸く内田の誤解も解けて、友情すら生れる二人です。眞に皮肉な展開。一本の煙草を分け合ひ、「さあ、行くか」とばかりに絶望の戦ひに挑むラストシーンまで、アキラをカッコよく描く為の映画で、反戦思想とかは皆無なのでした。