川っ風野郎たち

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川っ風野郎たち

レビューの数

5

平均評点

66.0(13人)

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17

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0

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ジャンル 青春 / ドラマ
製作国 日本
製作年 1963
公開年月日 1963/4/14
上映時間 88分
製作会社 日活
配給 日活
レイティング 一般映画
カラー シネスコ
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督若杉光夫 
脚色中島文博 
原作香山美子 
企画大塚和 
撮影井上莞 
美術内田喜三男 
音楽渡辺宙明 
録音神保小四郎 
照明松下文夫 
編集丹治睦夫 
スチール浅石靖 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演三崎千恵子 北野サカエ
山内賢 北野順
和泉雅子 北野あり子
斎藤洋子 北野みち子
松原智恵子 馬場里子
山田幸男 松本典
桝谷一政 金子満年
北島則男 宇田川卓
山内明 池晋三郎
大町文夫 主事
高田敏江 秋元チカ子
勝間典子 愛子ちゃん
田中ひとみ シン子ちゃん
松下達夫 醍醐虎猪
信欣三 米倉鉄造
大森義夫 北野勝利
武智豊子 奥山まり代
岡倉俊彦 香取
南風洋子 松本タケ子
鶴丸睦彦 松本二作
斎藤美和 松本しなえ
荒井岩衛 松本米太郎
庄司永建 古垣製作所係員

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

香山美子の原作を「目をつぶって突走れ」の中島文博が脚色、「サムライの子」の若杉光夫が監督した青春ドラマ。撮影はコンビの井上莞。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

あり子の家庭に不幸が訪れたのは父が交通事故の奇禍にあってからだ。定時制に行っている兄の順は学校を断念し、中学生のあり子も働かなければならなくなる有様。高校進学を強情に言いはっていたあり子もあきらめなくてはならなかった。町の有力者の醍醐はそんな一家の面倒を見ていた。順が定時制を続けることが出来たのも彼の口添えがあったからだった。醍醐の家には順の学友である里子が働いていたが、不当な扱いをうけている様子に順は義憤を感じていた。就職試験が片親だからという理由だけで落とされたと知って、その夜あり子は不良の香取たちと酒を飲んで騒いだ。翌日からあり子の生活は反抗につぐ反抗で次第に荒れていき、順や母親の諌めにも耳を貸そうとしなかった。順は友人の進言もあって始めた行商がなんとか軌道に乗り出していたが、里子が勤務先を変え、それを心よく思わぬ醍醐の圧力で登校出来ないことや、学校に寄りつかなくなった典、仕事で指を切断した金子など、学友たちの生活も変っていった。旧正月のある日、口論のあげく順に殴られたあり子は家を飛び出した。父の形見の英語辞典一冊を持って、あり子はアメリカへ密航を企てたが失敗し、神戸の警察に引渡された。迎えに来た心配顔の順とあり子は、お互に非を詫び、固く抱きあった。東京に着いた二人に朗報が待っていた。里子も皆の団結で学校へ戻ることが叶い、典も真面目になって一緒に勉強することになったのだ。「定時制の試験を受けるんだ」と励まされるあり子の顔にも明るい表情が戻っていた。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1963年6月上旬号

日本映画批評:川っ風野郎たち

1963年5月上旬号

日本映画紹介:川っ風野郎たち

2020/07/30

2023/12/11

70点

選択しない 


生真面目な青春映画

ネタバレ

 1963年の「川っ風野郎たち」。何だかハラキリ小説家が主演した「からっ風野郎」を連想しますが、此方はヤクザではなく青春ものです。監督は若杉光夫、原作の香山美子は多分女優ではなく、絵本作家の方だと思ひます。脚本は中島丈博、音楽は渡辺宙明であります。

 北野家では父が交通事故で亡くなつてから、長男の順(山内賢)は定時制高校を中退し働きに出なくてはならなくなり、長女のあり子(和泉雅子)は高校進学を諦めます。彼女は英語が得意で、大学進学まで希望してゐたのです。あり子は百貨店の入社試験を受けますが、片親である事を理由に落されてしまふ。ヤケになつたあり子は、不良たちとつるみ、酒や煙草を覚えるやうになります。

 反抗的になつたあり子を諫める順でしたが、旧正月のお年玉に500円を渡すと、あり子は500円ぽつちで何が買へる、と毒づくので遂に殴つてしまひます。カッとしたあり子は父の形見の英語辞典を持つて家出します。そして憧れのアメリカへ行きたいと、密航を試みますが、乗り込んだ船は国内船で、神戸で保護されるあり子でした。

 迎へに来た順に、今は素直に詫びるあり子。そしてその日は、定時制高校の試験日で、順は「まだ間に合ふ!」と、自転車の後ろにあり子を乗せて、試験場へ急ぐのでした......

 若杉光夫監督らしい生真面目な一作です。クレジットには無いけれど、多分民藝製作ではないでせうか。日活は民藝や俳協と繋がりがあるので、青春路線の中でも、貧しくても直向に明日を信じて生きる若者を描く映画に事欠きません。

 本作は山内賢と和泉雅子の兄妹の物語を軸としながら、松原智恵子が被るパワハラや差別の問題、山田幸男の不良と桝谷一政の優等生の対立と和解、仲間の大切さを説く山内明の教師らが絡む「教育映画」となつてゐます。舞台となつた千葉・浦安の風景も良い。まさに魚のニホヒが漂つてくるやうな映像でした。

 若杉演出はかなり抑制的で、あへてドラマチックにならないやうに腐心してゐる感じ。ラストの音楽も、いくらでも盛り上げる事は出来さうなのに、地味~なメロディラインで呆気なく「終」。もう少し媚びても良いのに、とさへ思ふくらゐでした。照れもあつたのでせうかね。 

2023/04/26

2023/04/26

60点

VOD/Amazonプライム・ビデオ 

この題名からは想像もつかないが父親が事故死して生活苦にあえぐ一家の兄山内賢と妹和泉雅子の物語。舞台は浦安。東西線開通前の陸の孤島と呼ばれていた60年代初めの浦安の風景が見どころ。

2021/06/09

2021/06/10

70点

VOD/Amazonプライム・ビデオ 


家族や仲間との絆。

ネタバレ

父親が交通事故で亡くなり補償金もスズメの涙。スチュワーデスになるのが夢だった中学生のあり子(和泉雅子)は高校進学を諦め、定時制高校に通う兄の順(山内賢)は家族を養うために昼は行商をして働くことに。先行きに望みのなくなったあり子は悪い仲間と付き合って華やかで苦労のない仕事に就こうとするが失敗する。順が同級生の里子のことを気にかけるのも面白くないあり子は、とうとう見知らぬ土地を目指して停泊中の船に乗り込むが…

三ノ宮で警察に勾留されたあり子に純が渡した鞄に入っている真っ白な靴。これまでは何にもいらないと拗ねていたあり子だったが、兄の優しさが彼女の心をほぐしていく。昭和30年代、貧しく学業すら思うように続けられない若者たちだが、心折れそうになっても、家族や仲間との絆によって持ち直す様を、堅実なタッチで伝える日活青春映画。

2013/10/06

2014/07/04

85点

映画館/東京都/ラピュタ阿佐ヶ谷 


日活多摩川の伝統

ネタバレ

日活レア物特集「川っ風野郎たち」は、タイトルだけを見るとチンピラのアクション物を連想しますが、実際の映画は、漁村としては次第に寂れる一方、工場が立ち並ぶようになった、千葉県浦安を舞台に、父に死なれて魚の行商によって家計を支えるようになった定時高校生・山内賢と、本当は高校に進学したい思いを抱きながら家庭の事情でそれもままならず、歌手を目指そうと考えたり、不良の道に傾きそうになったりと、不安を抱えた妹の中学生・和泉雅子の兄妹を軸に、山内の同級生・松原智恵子(働き先を辞めた際、定時制の支援者だった雇い主・松下達夫がへそを曲げ、松原が復学を希望した時に障害になりそうになります)、不良掛かった同級生・山田幸男(ガリ勉の同級生・桝谷一政と一時対立するものの、その後和解)、彼らを善導しようと苦労する定時制教師の山内明らを絡めて描く、浦安版「キューポラ」です。
これぞ、内田吐夢や田坂具隆を育んだ日活多摩川以来のリアリズムの伝統が活きた佳作と呼びたい映画で、ヨヨギ臭さがあることは事実ながら、そんなことなどどうでもよくなる次元で、今を懸命に生き、前を向き続ける登場人物たちが愛おしく思えました。

2013/10/12

2013/10/14

60点

映画館/東京都 


貧しいながらも悩みつつ前向きに生きようとする青春群像が清々しく描かれている

 あり子(和泉雅子)は中学三年生。割と勉強はよくできる方だ。特に英語が得意で,アメリカ人の男の子と文通をしているし,将来はスチュワーデスになろうと思っている。ところが,大黒柱である父親が酔っ払って車に引かれて死んでしまった。定時制に通いながら工場で働いている兄の順(山内賢)は,父親がやっていた東京への行商で稼がなければならなくなったし,あり子も高校へ行けるような状況ではなくなった。致し方なく,あり子はデパートの就職試験を受けるが,片親だという理由で落とされてしまう。英語ができるから,ジャズでも歌って芸能界入りも考えてはみたが,当然ながら全く相手にしてもらえない。高校にも行けず,就職もできないことから,彼女の生活は荒れてくる。そして,とうとう兄の順と喧嘩をして,家を飛び出してしまった。日本を出ようと船にこっそりと乗り込む彼女だったが,その船は国内航路で,神戸で船員に見つかってしまう。順が彼女の身柄を神戸へ貰い受けに来てくれて,彼女は素直にあやまるのだった。戻って来た日はちょうど定時制高校の入試の日。あり子を順が入試へと送って行く後ろ姿で映画は終わる。
 あり子の物語と並行して描かれるのが順が通っている定時制高校であり,いくつかのエピソードが描かれる。その一つが同級生の馬場里子(松原智恵子)のエピソードである。彼女は有力者の家で住み込みで働いていたが,そこを出て独立したいと考え,とうとうそこを飛び出してしまう。そのため,定時制高校は辞めざるを得なくなるが,同級生たちが結束して,最後には復学にこぎつける。
 定時制高校を中心に,貧しいながらも悩みつつ前向きに生きようとする青春群像が清々しく描かれている。日活映画の一つの十八番と言っていいだろう。舞台となっているのは千葉の浦安近辺。当時は漁業が盛んで,海苔で生計を立てている人も多いようであるし,順たちが行商で東京へ持っていくのが浦安の魚市場で買ってきた魚である。東西線はまだなく,京成バスが走っていて,「猫実」の文字が見える。本八幡駅〜猫実のバスであるらしい。
 ちなみに,映画データのキャストに武智豊子の名前があるが,彼女は出ておらず,この役は千石規子が演じているようである。牛乳瓶の底のような厚いメガネをかけて,南無妙法蓮華経を唱え続ける姿で笑わせてくれる。