白と黒(1963)

しろとくろ|Pressure of Guilt|Pressure of Guilt

白と黒(1963)

レビューの数

22

平均評点

76.0(84人)

観たひと

125

観たいひと

9

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル サスペンス・ミステリー
製作国 日本
製作年 1963
公開年月日 1963/4/10
上映時間 113分
製作会社 東京映画
配給 東宝
レイティング 一般映画
カラー モノクロ/シネスコ
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声 モノラル

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督堀川弘通 
脚本橋本忍 
製作佐藤一郎 
椎野英之 
撮影村井博 
美術水谷浩 
音楽武満徹 
録音原島俊男 
整音西尾昇 
照明比留川大助 
製作担当者西村達 
助監督松本あきら 
スチール中山章 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演小林桂樹 落合克巳
仲代達矢 浜野一郎
井川比佐志 脇田正吉
千田是也 宗方治正
三島雅夫 村松
東野英治郎 宮本
山茶花究 岩崎
大空真弓 村松由紀
淡島千景 宗方靖江
乙羽信子 落合知子
小林哲子 高倉美代
木村俊恵 明美
野村昭子 ちよみ
菅井きん キヨ
岩崎加根子 大井房子
近藤洋介 大沢
中原成男 深田
守田比呂也 久保
榊原秀春 落合強
渡辺喜世子 落合規子
松本清張 推理小説家
稲葉義男 法医学教授
山田清 東京地裁の裁判長
東野英心 ラジオ屋の店員
神山寛 宗方邸前の警官
内田透 検察庁・事務員
佐伯赫哉 都電の車掌
中野伸逸 裁判所の廷吏
谷育子 煙草屋の女店員
秋好光果 烏森旅館の女中
伊藤弘子 銀座のバーの女A
中村たつ 銀座のバーの女B
賀来敦子 銀座のバーの女C
横森久 筆跡鑑定人
西村晃 平尾
浜村純 矢野
小沢栄太郎 吉岡
永井智雄 高原

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

橋本忍のオリジナルシナリオより「娘と私」の堀川弘通が監督した推理ドラマ。撮影は「ぶらりぶらぶら物語」の村井博。第37回キネマ旬報ベスト・テン第9位。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

目黒の高級住宅街で殺人事件が起った。被害者は城南弁護士会会長宗方治正の妻靖江で、発見者は夜間学校から帰宅した女中のきよだ。捜査一課の厳重な警戒網が布かれた結果、前科四犯脇田が現場附近の不審尋問に引っかかり、宗方邸へ強盗に押し入ったことを自供した。事件担当検事落合の尋問に脇田は殺人を自白した。死刑廃止論者の宗方は、助手の浜野とともに脇田の弁護をかってでた。浜野は新進気鋭の弁護士で学生時代から宗方夫妻の世話をうけていた。この浜野と靖江の間には、彼が書生として住みこんでいた頃から関係があった。しかし、その浜野には、製鋼会社会長村松の娘由紀との縁談が起った。嫉妬に狂った靖江は由紀に二人の関係を告げると言い出したため、浜野は夢中で靖江の首をしめたのだった。浜野は脇田が捕まってはじめはよろこんだが、日がたつにつれて良心の呵責に苦しんだ。果ては、落合に必要以上に脇田の無罪を主張した。落合は浜野の妙にからんだ言葉に疑問を持ち、極秘裡に補充捜査をすることになった。その間、脇田は法廷で死刑の論告を言い渡されていた。そんな頃、浜野が真犯人であるという証拠物件の数々が捜査一課に集った。その証拠の前に浜野は、殺人事件を自白した。落合のメンツを捨てた再調査の、勇気と信念に対して、マスコミは一斉に拍手を送った。ところが石川公一という一人の見知らぬ男からの手紙によって、事件はまたもや意外なところに波及した。九時二十八分に電話したとき話中であったため、電話局で調べてもらったところ、女の声で応答があったというのである。浜野は絞殺して九時には宗方邸を出ているのである。失神状態を死んだと断定して逃げたのであった。脇田はその後に押し入り、さわがれて殺したのであった。検察庁はマスコミに徹底的に叩かれた。落合は宮崎に左遷されることになった。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1963年5月上旬号

日本映画批評:白と黒

日本映画紹介:白と黒

1963年4月下旬号

「白と黒」への二つの疑問:

1963年3月上旬増大号

新作グラビア:白と黒

1962年7月上旬夏の特別号

2大シナリオ特集:白と黒  東京映画

2024/04/26

2024/04/26

80点

購入 


橋本忍最高!!!

展開の読めない上質な推理ドラマ。橋本忍の構成の見事さ。俳優人の巧さ。堀川弘通監督の手堅い演出。人間の良心と絶望を描いた映画。傑作だ。

2024/03/17

2024/03/17

80点

VOD/U-NEXT/レンタル/テレビ 


橋本忍の脚本が一にもニにも冴える!

弁護士会会長の自宅で妻が殺される。すぐさま犯人が捕まるが、冒頭で別の人間が殺すのを映す。仲代達也演じる弁護士浜野、小林桂樹演じる検事落合が相対するシーンの緊張感。やがて訪れるであろうと想定した結末のどんでん返し。お見事。大宅壮一、松本清張のまさかの特別出演には驚き!

2012/12/10

2023/02/28

85点

選択しない 


堀川弘通×橋本忍の本格サスペンス

 1963年の堀川弘通監督「白と黒」であります。製作は東宝傍系の東京映画。タイトルが「白と黒」だけに白黒映画です。脚本は橋本忍、音楽は武満徹。骨太のサスペンス映画。

 冒頭で、弁護士・浜野(仲代達矢)が不倫関係にある靖江(淡島千景)と口論の末、絞殺してしまひます。アッ何と云ふ事でせうか。靖江も浜野の事を「男めかけ」などと罵倒するから不可ません。青島幸男ぢやないんだから。実はこの靖江、浜野の恩師でもある宗方弁護士(千田是也)の妻でした。

 浜野が現場逃走後、前科四犯男の脇田(井川比佐志)が偶々宗方家に侵入、宝石類を盗んだ廉により逮捕されます。捜査一課の敏腕刑事・平尾(西村晃)は強硬です。夫人殺害の罪も着せられ、落合検事(小林桂樹)の執拗な追及に殺害を認めてしまひ、一旦それで事件は解決したかに見えました。

 脇田の弁護を担当するのが、何と宗方と浜野のコムビ。浜野は良心の呵責もあり脇田を庇ふ言動が目立ち、その態度を不審に思つた落合は補充捜査を提案、開始します。脇田の死刑は決定的と思はれてゐましたが、落合の調査は浜野の不利を証明するばかり。遂に落合は浜野と対峙し、浜野は犯行を自供しました。本来なら検察側の黒星となるところですが、面子に拘らない再調査に世間は喝采を送り、落合は時の人となるのでした。
 ところが、事件はこれで終らず、二転三転する事に......

 堀川弘通×橋本忍×小林桂樹と云へば、傑作「黒い画集 あるサラリーマンの証言」がありますが、此方も中中の力作です。ただしこちらは松本清張原作ではなく、橋本忍のオリジナル脚本。松本清張と大宅壮一が本人役で出るので、つひ勘違ひしさうですが。

 主演の小林桂樹が検事役。基本的に真面目な人格として描かれてゐます。しかし女房の乙羽信子には感情を露にしたり、事務所で働く小林哲子(「海底軍艦」のムウ皇帝)に軽口を叩いたり、聖人でもなく、人間臭いところもあります。仲代と一対一で安宿で対決するシーンは、本作の白眉と申せまう。

 その仲代達矢は弁護士で劇中では只管追ひ詰められる立場。一貫して暗い表情をしてゐます。三島雅夫の娘・大空真弓と交際してゐますが、その前には岩崎加根子と付き合つてをり、匿名で仲代を中傷する手紙を受取り破談となりました。同じく大空真弓にも送られてゐる筈ですが、何故か彼女は否定します。

 その手紙を送つたのが、想像通り淡島千景。殺されるだけの出演だし、嫉妬に狂ふ中年女の役で、よく引き受けたなと思ひます。勿体ない起用法ですが、流石の存在感です。儲け役は井川比佐志さんですな。窃盗はしたが殺人は冤罪であると思はせ実は......! 検察庁を翻弄する名演技であります。

 一方で物足りぬのは、妻を殺された(しかも弟子と不倫してゐた)千田是也の葛藤と云ふものがあまり表現されてゐません。熱心な死刑廃止論者と云ふ設定も生かされませんでした。さういへば大空真弓の心の動きもいまいち分からない。これらをも少し深堀して、小林桂樹は狂言回し的な存在に徹した方が良かつたのでは。ま、素人の戯言ですがね。

2022/07/03

2022/07/03

-点

映画館/東京都/ラピュタ阿佐ヶ谷 

『白と黒』(1963年、東京映画)。男妾の弁護士(仲代達矢)が主人公。先輩弁護士の妻(淡島千景)に翻弄される。壁には棟方志功の版画。黒電話の受話器が外れていたのには意味がある。タイアップはサントリー。大衆酒場での瓶ビール、バーではサントリー・オールド。花を活けてる事務員は小林哲子。

2022/07/03

2022/07/03

86点

映画館/東京都/ラピュタ阿佐ヶ谷 


これでもう4回

 劇場でもう、4回は鑑賞しているであろう。淡島千景がいきなり絞殺されるという、ショッキングな冒頭で始まり、二転三転するストーリー、事件の真相に辿り着くまでの複雑な経緯を抑制の効いた演出で見事に描く。最後まで目が離せない。これは紛れもなく堀川監督の傑作であろう。ただ相変わらずプリントの状態が芳しくないのが惜しい。
 特に検事・小林桂樹が弁護士・仲代達矢に真相を追求する旅館のシーンは本当にすごい。窓外、直ぐ近くで何度も何度も通過して行く電車の描写が実に効果的で、ただでさえ張りつめた空気が漂っている空間に、一際緊張感を強調させ、二人の演技にもよりパワーを加えている。それとやはりその後の、北海道から届いた手紙をきっかけに小林が意外な事実を知る場面の逆光の使い方が巧みだ。小林が受けた衝撃の大きさが良く伝わってくる―以前のレビューにも同じようなことを書いたと思うが、とても素晴らしかったのでまた書かせてもらった。
 それにしても井川比佐志って、取り調べとか、事情聴取の場面がよく似合うよな(笑)。乙羽信子の、夫・小林を支えるカラッとした奥さん役も良い。重くシリアスな物語の空気を和ませてくれる(あと、本人役の大宅壮一と松本清張もね)。

2020/06/20

2020/06/20

80点

テレビ/有料放送/日本映画専門チャンネル 


弁護士の殺人

弁護士浜野一郎(仲代達矢)が不倫相手(淡島千景)に「男めかけ」と言われ、衝動的に首を絞める。その不倫相手とは恩義のある先輩弁護士(千田是也)の妻だったのだ。
一旦は立ち去るものの、お手伝いさんからの電話で呼び戻されるとそこには刑事が事情聴取をしている。彼の事情聴取の最中に犯人が捕まったという通報が入り、うやむやになる。
捜査検事落合(小林桂樹)は犯人脇田(井川比佐志)を取り調べるが、彼は殺人は否認した。脇田は執拗な取り調べに対し、私がやったと自白する。そこから裁判になるが、落合と浜野の議論の中で、もう一度調べ直してみようと思う。そして捜査は進み、浜野の犯行にたどり着く。
全体がよく組み立てられており、それぞれの関係者の心理をよく描いている。特に落合が浜野に考えを述べるシーンでは、考えを述べる落合が映っているときは普通の音声で、それを聞く浜野が映っているときは音声を絞り、音の大きさで浜野の心理を表すところは素晴らしい。
殺人事件のえん罪は晴れたかに思えたが、ある手紙から再逆転が起きる。
落合検事の出世をふいにしてもえん罪を晴らそうとする執念は見上げたものである。ここでもメンツとか出世とか司法の世界のどろどろした部分が描かれている。