秋刀魚の味(1962)

さんまのあじ|An Autumn Afternoon|An Autumn Afternoon

秋刀魚の味(1962)

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レビューの数

64

平均評点

79.9(341人)

観たひと

570

観たいひと

35

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 日本
製作年 1962
公開年月日 1962/11/18
上映時間 113分
製作会社 松竹大船
配給 松竹
レイティング 一般映画
カラー カラー/スタンダード
アスペクト比 スタンダード(1:1.37)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声 モノラル

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督小津安二郎 
脚本野田高梧 
小津安二郎 
製作山内静夫 
撮影厚田雄春 
美術浜田辰雄 
音楽斎藤高順 
録音妹尾芳三郎 
照明石渡健蔵 
編集浜村義康 
スチール小尾健彦 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演笠智衆 平山周平
岩下志麻 平山路子
三上真一郎 平山和夫
佐田啓二 平山幸一
岡田茉莉子 平山秋子
中村伸郎 河合秀三
三宅邦子 河合のぶ子
北龍二 堀江晋
環三千世 堀江タマ子
東野英治郎 佐久間清太郎
杉村春子 佐久間伴子
吉田輝雄 三浦豊
加東大介 坂本芳太郎
岸田今日子 「かおる」のマダム
高橋とよ 「若松」の女将
菅原通済 菅井
織田政雄 渡辺
浅茅しのぶ 佐々木洋子
牧紀子 田口房子
須賀不二男 酔客A

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

「小早川家の秋」のコンビ、野田高梧と小津安二郎が共同で脚本を執筆。小津安二郎が監督した人生ドラマ。撮影は「愛染かつら(1962)」の厚田雄春。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

長男の幸一夫婦は共稼ぎながら団地に住んで無事に暮しているし、家には娘の路子と次男の和夫がいて、今のところ平山にはこれという不平も不満もない。細君と死別して以来、今が一番幸せな時だといえるかもしれない。わけても中学時代から仲のよかった河合や堀江と時折呑む酒の味は文字どおりに天の美禄だった。その席でも二十四になる路子を嫁にやれと急がされるが、平山としてはまだ手放す気になれなかった。中学時代のヒョータンこと佐久間老先生を迎えてのクラス会の席上、話は老先生の娘伴子のことに移っていったが、昔は可愛かったその人が早く母親を亡くしたために今以って独身で、先生の面倒を見ながら場末の中華ソバ屋をやっているという。平山はその店に行ってみたがまさか路子が伴子のようになろうとは思えなかったし、それよりも偶然連れていかれた酒場“かおる”のマダムが亡妻に似ていたことの方が心をひかれるのだった。馴染の小料理屋へ老先生を誘って呑んだ夜、先生の述懐を聞かされて帰った平山は路子に結婚の話を切り出した。路子は父が真剣だとわかると、妙に腹が立ってきた。今日まで放っといて急に言いだすなんて勝手すぎる--。しかし和夫の話だと路子は幸一の後輩の三浦を好きらしい。平山の相談を受けた幸一がそれとなく探ってみると、三浦はつい先頃婚約したばかりだという。口では強がりを言っていても、路子の心がどんなにみじめなものかは平山にも幸一にもよくわかった。秋も深まった日、路子は河合の細君がすすめる相手のところへ静かに嫁いでいった。やっとの思いで重荷をおろしはしたものの平山の心は何か寂しかった。酒も口に苦く路子のいない家はどこかにポッカリ穴があいたように虚しかった。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2014年3月下旬号

日本映画時評:第301回 展覧会「小津安二郎の図象学」に刺激されて

2024/05/13

2024/05/13

78点

レンタル/千葉県/TSUTAYA 


小津安二郎監督の遺作となった作品

初めて観た小野作品「晩春」から13年の時を経て、変わった所と言えば色が付いた事位だろうか。 オウム返しと反復させるセリフ。 滅茶苦茶な年齢設定。 例えば笠 智衆さんが1904年生まれ、恩師役の東野英治郎さんが1907年、その娘役の杉村春子さんが1906年生まれと言った塩梅です。 観て来た作品はみんなこんな感じです。 そこが気に成らなければ、楽しめるんじゃ無いかと思います。

物語は「晩春」同様、娘を嫁に出すまでの物語です。 父・周平(笠 智衆)と弟・和夫(三上真一郎)を残して家を出る(結婚する)事をためらっていた長女の路子(岩下志麻)でしたが、周平にとっても居れば便利なので甘んじていた所でした。 路子も24歳と成り、周平の旧友・河合(中村伸郎)からも縁談を持ち掛けられます。 また偶然開かれる事となったクラス会に恩師の佐久間(東野英治郎)を招く事と成り、その席で娘を伴子(杉村春子)を便利に使ってしまった為、婚期を逃させてしまい後悔している事を聞かされます。 この事は周平にとっても耳の痛い話であると気付き、河合の縁談話を路子に勧めてみる事となります。 話のすれ違いで意中の三浦(吉田輝雄)とは結ばれませんでしたが、周平の気持ちを汲み取ってか文金高島田で家を後にする路子でした。

と、まぁ解らなくもない物語でしたが、ウチの娘はアパート住まいだったせいか、ケロッとあっさり結婚してしまったので、哀愁を感じる別れなんて無かったんですが、娘を嫁に出す父親って寂しいものなんでしょうね。 でも作品としては天涯孤独になった訳でも無いですし、やや共感度に欠けるかと思います。 それにしても笠 智衆さんが巧かったですね。 紀子三部作の頃とは大違いです。 非常に引き込まれました。 岡田茉莉子さんや岩下志麻さんも綺麗で得をした気分です。 岸田今日子さんも魅了的でしたし、古い映画も良いもんですね。 でも「秋刀魚の味」と言うのが良く解りませんでした。 多くの人が知っている味と言う事でしょうか。 自分はハラワタがダメなんですが、ハラワタごと食べた時のほろ苦さみたいな感じでしょうか。

2024/01/22

2024/01/22

70点

選択しない 


秋刀魚はどこに出てきたのか?

特に大きな事件が起きるわけでもない。同窓会に先生を呼んだり、月賦でゴルフクラブ買ったり、娘が嫁に行ったり、人生の中で普通にありそうな事柄ばかり。

しかし面白くて気づいたら終わっていたという不思議な体験でした。友人同士が店の女将を騙したり、ゴルフクラブを買う代わりに自分も革のバッグを買うと宣言したり、ひとりぼっちは寂しいなぁ、とバーでクダを巻いたり、日常のリアルな喜怒哀楽が気になるんでしょう。

それにしても昔はこんな風に酔い潰れるまでみんな飲んでたのか(^^;;

2023/12/28

2023/12/28

80点

テレビ/無料放送/NHK BSプレミアム 


普通の家の娘の結婚に関するあれこれ。あの頃はこんな風にすんなり結婚したものなんだろう。父親役・笠智衆は当時58才。娘役・岩下志麻(当時21才)はとても淡々とした役作りで、好きな人に婚約者がいることを知ったときの演技もわざとらしいくらいクールだった(実は意外とショックだったらしい)。岩下志麻の兄役は佐田啓二(36才)、動いている所を見たのは初めてだったが、この映画の2年後に交通事故で急逝したのかとしみじみ。行きつけのバーのママ役の岸田今日子(32才)も印象的。

2023/12/07

2023/12/08

90点

VOD/U-NEXT 


「楚々とした美しさの中に華やいだ若さが息づく人生の春… 嫁ぎゆく娘の倖せをあたたかくつつむ父の慈愛!」

二十年ぶりくらい二回目。
確か初めて観た小津作品だったはず。
あの時は動かないカメラ、淡々としたセリフ回し、可愛らしい岩下志麻に衝撃を受けた。
二十年経って改めて観ると小津安二郎の遺作として充分なクオリティだったことに気づく。
喜劇味はあるが随所に喜怒哀楽がある絶妙なバランス。
軽そうにみえて実は深すぎる作品。

本作鑑賞後にTMレボリューションの「魔弾」のPVを観るのをオススメします。

2023/04/13

2023/04/14

70点

テレビ/無料放送 


臭突と涙

「ヒョータン」とよばれる男(東野英治郎)は,鱧を知っているようでいて知らない.40年前の中学教師であったこの男は,チャンソバ屋の亭主になっており,娘(杉村春子)とともに,ドラム缶が道端に積んであるような場末に暮らしている.
煙が立ち上る.巨大な煙突が並んでおり,その一角にある会社に男,平山(笠智衆)は陣取っているらしく,朱肉で印鑑をついている.その男の手は時に紙タバコを摘んでいる.男たちはタバコを吸って煙を燻らさせていることがある.かと思えば,奥の部屋や窓の外には湯気らしきものが揺蕩っている時がある.何かが起ころうとしているのか,酒ならなんでもござれのヒョータンは泥酔して揺れている.また,平山も娘が嫁いだその夜には友人ら,河合(中村伸郎),堀江(北竜二)の面々とやはり酌み交わし,揺らいでいる.こうした揺らぎは,涙の前兆としてあるように見える.例えば,水蒸気が水滴の前兆として揺れながら大気中に拡散していくように.
海兵は揺れる戦艦の上で敬礼を交わしていたらしい.「エース」というバーでは,「軍艦マーチ」のリズムに乗りながら,艦長こと平山がご機嫌な顔で顔の前に右手を掲げ,敬礼のポーズをしている.そのポーズを誘発したのは,海兵時代に平山と同じ艦に載っていた坂本芳太郎(加東大介)である.バーのマダム(岸田今日子)までもがこのポーズで揺らめいている.坂本は「本当のニューヨーク」について語っている.
サッポロビールのラベルがテーブルやカウンターの上などところどころに見えていて,時にそのビンは傾けられる.ヒョータンは帽子を見失い,平山も帽子を椅子の上に置き,失いかけているかに見える.平山は妻を失っているが,その影は表立って見えることはない.平山の自宅にも遺影らしきものもないが,今には仏像の写真が鴨居に掲げられており,いつもその写真は居間を照らす照明のランプシェードに隠されようとしている.堀江は性の対象を失い,若い妻(環三千世)を後妻に迎えている.男たちは,精力剤と思われる薬を話題にして,堀江をからかい,その風評被害は,「若松」という彼らが行きつけの料亭の女将(高橋とよ)にまで及んでいる.また,彼らは,囲碁や野球のゲームかのように,嘘をついて周囲を煙に巻く.堀江の通夜だと女将を騙し,平山の婿となるべき男は既に別の女性にあてがわれたなどと平山を騙す.そのとき当の人物は現れては消え,消えているかと思えば現れてくるように見える.また平山の息子(佐田啓二)が振るうゴルフクラブは,彼の性を象徴しているかにみえ,ビール瓶や煙突はこの界隈が揺らぎを噴き出すその立つものとして現れているかに見える.一方の平山の娘(岩下志麻)は平山家の二階で嫁入りの支度を整えている.彼女が父に感謝を伝えようとするとき,平山は思わず座り込んでしまう.彼の性がいっそう奪われていくかに見える.ただ,こうした家族とその従者たちが去ったその部屋の窓の向こうには,便所の臭突が換気しながら回っている.彼女の婿は画面に現れることはないが,彼がこの臭突に象徴されているかのようにも映っている.
堀江と河合は囲碁が囲碁を打っている最中,堀江は順番を忘れ,河合は「お前の番」だという.結婚と葬式が取り違えられるように礼服は着られているが,結婚も葬式も催す側として,あるいは催される側として順番にやってくるかに見える.臭突の回転は,世界の回転と交代にも見える.団地生活においてトマトは近所から借りられる.5万円は息子によって父から借りられる.平山は嫁いでいく会社の部下へ札を渡そうと準備をしている.落ちぶれてしまったかつての恩師ヒョータンに教え子たちは金を工面しようと試み,ヒョータンは教え子たちの元へとお礼を述べに回っている.そうしたなか,照明は消え,スクリーンからは人々が少しずつ退場していく.遂には平山の末の息子(三上真一郎)が平山家に父と二人で残されるが,彼も遂には布団に寝転んで退場していく.
ヒョータンの娘(杉村春子)はチャンソバ屋で横を向き泣いている.彼女は性を失いつつあり,その時季を逸したことを嘆くとともに,こうした世界の転変に対しどうすることもできずに佇んでいるのであろう.

2023/03/12

2023/03/15

100点

その他/市民図書館 


東野英治郎がすばらしい

「秋刀魚の味」をはじめて見たのは、高校生の頃、テレビで放送された時でした。高校生にもかかわらず、私はこの映画に感動し共感することができました。

高校生なのにこの映画に感動できたことは、当時はそれほど意識しなかったが、そういう人は少数派らしいということが分かって「かつての自分は、ひょっとしてすごかったのかも」、なんて今になって思います。

この映画での東野英治郎さんは、実に重要な役を演じるのです。役どころは旧制中学の元漢文教師で「ひょうたん」というあだ名を学生からもらっている、という設定だった。

今では教師を退職しているが、かつての教え子たちの同窓会に呼ばれる。もう現役を引退した人らしく、サイズの合わないワイシャツに、古いデザインの背広を着て同窓会に出席している。この現役を引退した社会人の衣装の着け方、白髪や白い眉毛のメーキャップ、立ち振る舞い、その演技の付け方が、もう素晴らしくて、小津監督という人は、やはり名匠といわれるだけのことはある、と高校生の私はしきりに感心していたのです。

魚へんに豊と書いて「はも(鱧)」という。この漢字を憶えたのも、この映画を見たときです。私は鱧を食べる時、この映画の事を思い出しながら食べています。

この東野英治郎さんが演じる「ひょうたん先生」は、この映画での最重要人物の一人です。

この「ひょうたん先生」は佐久間先生といい、今は中華ソバ屋をやっていて、一人娘と今もいっしょに暮している。この娘(佐久間伴子 演:杉村春子)は、この佐久間先生が早くに妻を亡くしたために、佐久間先生の世話をしているうちに、婚期を逃して年を取ってしまったという設定。この佐久間先生と娘の伴子の描き方が残酷なのだ。時の流れの残酷さを感じさせる秀逸な描き方。

同窓会で なかば酔いつぶれた佐久間先生は、平山(演:笠智衆)と河合(演:中村伸郎)に自宅(燕来軒という中華ソバ屋)まで送ってもらう。そして酔った佐久間先生はかつての教師時代を思い出したように説教をはじめる。

さまざまなクダをまいたあげく「コラ、河合、平山、立ってろ」といって寝てしまう。平山と河合は、燕来軒を去る。伴子は父の佐久間先生と二人きりになり、伴子はこらえきれず、そっと顔を両手で覆い泣く・・・

こんな演出のできる映画監督ってほかにいるのだろうか?と思うほど胸に迫ってくるシーン。私は東野英治郎と杉村春子の演技と小津安二郎の演出力に感嘆した。

平凡な日常を描いているように見えるのに、時間の残酷さとか「無常観」を感じさせる深い映画。時間は残酷だけれども、人は立ち止まっていることは出来ないし、そうしては駄目なのだ、ということを考えさせられる。

平山(笠智衆)は、ひょうたん先生のようになってはいけないのだと思い、娘(演:岩下志麻)を嫁がせる。娘のいなくなった家は、なんとも寂しいけれど「これでいい。これでいいのだ」と思わせるラスト。実に素晴らしい。傑作だと思います。