あまりに自由奔放過ぎる嵯峨三智子の振る舞いに若干イラッとしながらも、終盤では変わり果てた彼女の悲哀がなかなか上手く演出出来ているかな、と思った。嵯峨が風呂屋の娘であるという設定が物語を楽しむひとつのポイントとなっている。
嵯峨の演技力には称賛の声あって然りなんだろうが、それ以上に千秋実、浪花千栄子、進藤英太郎、そしてお母さんの山田五十鈴等々…脇を固めるベテランたちが作品の世界観に独特の深みや味を加えている。おっぱいについて熱く語る進藤の演技力がとりわけ見事である。
長門裕之との出会い、銭湯で会話する中年の女たち、ふと浮かんだ家族への想い―その後のストーリーの展開を期待させるような要素はあるものの、全体的に至って淡々とした作風。ただただ夜の街の灯が幻想的な美を湛えている。