青葉城の鬼

あおばじょうのおに|----|----

青葉城の鬼

レビューの数

9

平均評点

67.2(23人)

観たひと

35

観たいひと

2

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 日本
製作年 1962
公開年月日 1962/9/1
上映時間 100分
製作会社 大映京都
配給 大映
レイティング 一般映画
カラー モノクロ/シネスコ
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
上映フォーマット
メディアタイプ フィルム
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督三隅研次 
脚色八尋不二 
原作山本周五郎 
企画辻久一 
撮影本多省三 
美術内藤昭 
音楽斎藤一郎 
録音海原幸夫 
照明加藤博也 
編集菅沼完二 
スチル小牧照 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演長谷川一夫 原田甲斐
高田美和 宇乃
藤村志保 三沢はつ
宇津井健 久世大和守
成田純一郎 中黒達弥
天知茂 柿崎六郎兵衛
林与一 伊達綱宗
加藤嘉 伊達安芸
柳永二郎 酒井雅楽頭
藤原礼子 みや
近藤美恵子 おくみ
阿井美千子 
矢島陽太郎 塩沢丹三郎
細谷新吾 宮本新八
舟木洋一 村瀬久馬
浅野進治郎 伊達兵部
花布辰男 茂庭周防
荒木忍 阿部豊後守
嵐三右衛門 奥山勘解由
近江輝子 藤井
小町るみ子 おうら
橘公子 たね
町田博子 たつ女
小林加奈枝 茶屋の内儀
杉山昌三九 松平信綱
南部彰三 立花飛騨守
尾上栄五郎 大槻内膳
水原浩一 畑与右衛門
南条新太郎 亘理蔵人
浅尾奥山 柴田外記
原聖四郎 稲葉美濃守
横山文彦 大町備前
堀北幸夫 渡辺九郎右衛門
藤川準 酒井家家老内膳
桜井勇 蜂谷六左衛門

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

山本周五郎原作『樅の木は残った』より「鉄砲安の生涯」の八尋不二が脚色、「斬る(1962)」の三隅研次が監督した伊達騒動もの。撮影もコンビの本多省三。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

徳川四代家綱のころ、幕府の外様大藩取潰しは伊達六十二万石に及ぼうとしていた。大老酒井雅楽頭は当主綱宗の叔父伊達兵部を甘言で篭絡し、兵部の陰謀のために綱宗は隠居を命じられ、近臣らは暗殺団に襲われた。このために父を失った幼ない宇乃姉弟は、伊達家重臣原田甲斐に引取られた。彼の宿所良源院には国許から移植した一本の樅の木があった。伊達家世継は二歳の亀千代が選ばれ、兵部は雅楽頭の推薦で後見役に立てられた。甲斐は失意の綱宗を訪ね、伊達安芸、茂庭らの同志と密会した。御番あきで仙台の青葉城下へ帰った甲斐は、茂庭家との不和をはかり兵部の信任を得たが、安芸一派から裏切者と憎まれる結果になった。ある日、宇乃が塩沢丹三郎と共にはるばる訪ねて来た。甲斐は宇乃を恋する丹三郎の告白に、宇乃が自分を想っていることを知り愕然とした。数日後、甲斐が江戸を訪れた折しも亀千代の毒味役丹三郎は血を吐いて倒れた。甲斐の苦心も空しく、安芸はこの事件を兵部の陰謀として訴え出たので、雅楽頭は取潰しの口実を掴んだと狂喜した。幕府の裁判が近づいた時、雅楽頭が書いた「伊達家改易の場合兵部に三十万石を与える」という証書を手に入れた甲斐は、深夜将軍お側衆久世大和守を訪れた。そして酒井邸で行われた裁きの日、内紛を理由に改易を申し渡される寸前、甲斐は証書を示し、その責任を問うて雅楽頭の顔色を失わせた。秘密を知られたからはと雅楽頭は刺客を放って伊達家の者を斬らせた。数人の刺客たちを切り伏せたものの、瀕死の重傷を負った甲斐は喧嘩両成敗になることを恐れ苦しい息の中から一切を自分の乱心の結果と訴えた。彼の苦衷を知る大和守は六十二万石は安泰だと告げてやったが、甲斐はかすかに微笑を浮かべ、「宇乃……」とつぶやいた。間もなく、雪の良源院、孤独な樅の木を見つめる宇乃の目には一杯の涙があふれていた。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1962年10月上旬秋の特別号

日本映画批評:青葉城の鬼

日本映画紹介:青葉城の鬼

2023/07/27

2023/07/29

80点

テレビ/有料放送/時代劇専門チャンネル 


江戸幕府による外様大名お取潰しの謀略に狙われた伊達家の家臣のその身を捧げる奮闘を描いたサラリーマン時代劇の秀作。監督の三隅研次はこの同年に時代劇だと「座頭市物語」に「斬る」、非時代劇だと「婦系図」も撮ってるのが凄い。
高田美和と藤村志保は役が逆のほうが良かったように思えた。

2023/06/12

2023/06/12

30点

テレビ/有料放送/時代劇専門チャンネル 


「樅の木は残った」が原作だというので見たのだが

後味が不快で嫌な気持ちになる。
《切腹》《上意討ち》といった大嫌いな時代劇よりは軽い語り口なのだが楽しくない。
原田甲斐の長谷川一夫がいかにも過ぎて見ていてウンザリする。長谷川一夫感を出し過ぎ。冒頭の重臣たちの評定シークエンスで原田甲斐は一番後ろに座っているのだが、顔を上げると圧がすごいのだ。アイメイクもやり過ぎだし、当時54歳にして貫禄充分で他の人々を圧倒しているし、そういう撮り方はドラマトゥルギー上おかしいでしょ?伊達安芸を演じた加藤嘉の方がずっと納得がいく。
中盤、妻を不義密通のかどで離縁した後、ザンバラ髪で馬に乗り山中を疾駆する。山の中の泉で山娘が水浴し、そこに武士の家に生まれて自由のない生活を嘆く長谷川のナレーションが被さる。このシークエンスの訳のわからなさも相当なものだ。
まあ当時の映画興行世界では長谷川一夫をキャスティングした時点でこういう作り方にならざるを得なかったんでしょうね。長谷川一夫の見せ場だから。
高田美和のデビュー作だがオープニングのクレジットで名前のわきに(新スタア)とついてるが、会社が「スタア」と決めてたんですね。デビュー作なのに。
結局、徳川封建体制下の武家社会は何十万石の大名であっても、ヒエラルキー頂点の将軍には逆らえず、武士は徳川を、それぞれの藩を、自らの家を守らねばならない=自由に自分の好きなようには生きられない。終盤、武士でありながら江戸から仙台に流れてきた宮本信八が三味線弾きになって自由の喜びを語る。ぬるい武家社会批判だし、あまりひびかない。
林与一演ずる伊達綱宗がアホ殿そのもので共感をよばないのもつまらなさの一因。
◎クライマックスは原田甲斐、伊達安芸と黒幕、酒井雅楽頭
(柳永二郎、この人こういう役はすごくハマる!)との評定シークエンス。ここでの長谷川一夫は、ここだけは素晴らしい。さすがの芝居。久世大和守(宇津井健もうけ役!)もいい。
この後の数十人による大殺陣シーンはあり得ない設定でシラける。

「忠臣蔵」はこれに比べるとやっぱりよく出来てる。「伽羅先代萩」見たことないけどやっぱりこんな感じなのかな?

2023/06/04

2023/06/04

65点

テレビ/有料放送/時代劇専門チャンネル 


これはまたすごい題名なので何事かと思って見た。正体は山本周五郎の”樅ノ木は残った”の映画化。東映や東宝の時代劇ばかり見ていたので大映時代劇はいささか外様?伊達62万石の煙たがった幕府の幕閣がお家取り潰しを画策。伊豆からの命に代えて伊達家を守ろうと奮闘する原田に長谷川一夫。この後テレビの”ザ・ガードマン”で一世を風靡する宇津井健がピッカピカでおいしい役をこなす。モノクロながら凛とした絵作りが美しい。

2022/04/25

2022/05/09

64点

映画館/東京都/神保町シアター 


巧くまとめた長編小説の映画化

山本周五郎「樅の木は残った」の映画化作品である。原作を読んでいたので前々からこの映画を一度観てみたいと思っていた。

大河ドラマで映像化されているが、それをこの映画は100分程度に纏めている。大河ドラマ放映よりも8年前に制作されている。
結論から言うと、原作の複雑に絡み合った話をよくまとめていた。八尋不二が脚本を書いている。要所々々を抜かりなく押さえていて、さすが時代劇のベテランライターである。

深夜に4人の武士が、突然訪ねてきた何者かに「上意」の名の下に斬殺される。小説はここから始まって意表を突かれたのを覚えている。久々に映画館に出かける気になったのは、この小説への思い入れがあったことが大きい。
被害者4人の遺族たちのその後がサイドストーリーを紡いでいく。ちょっと駆け足の部分があってストーリーを追うのが目一杯のダイジェスト感があった。それでもこれらのエピソードを省略しなかったことが、クライマックスに至って酒井邸での刃傷事件に盛り上がる効果を上げた。
大河ドラマのほかににも何本か映像化されているが、その中にあって、この映画は上々の出来と言えよう。

主役の長谷川一夫以外のキャスティングは大河ドラマに比べて弱い。前々から思っていたことだが、大映の時代劇はこの頃から倒産に至るまで脇役の顔ぶれが弱い。
長谷川一夫晩年の作品で、いつもの艶やかさはないが、重厚な役どころを予想以上に好演している。その他には伊達兵部の浅野進治郎と暗殺された武士の愛人みやを演じた藤原礼子が良い味わいを出していたと思う。

この映画と大河ドラマの配役を参考までに並記してみる。

     この映画  大河ドラマ 
原田甲斐:長谷川一夫 平幹二朗   
宇乃(被害者の遺族)  
:高田美和  吉永小百合
律(甲斐の妻)
    :阿井三千子 三田和代
くみ(甲斐の愛人)   
:近藤美恵子 香川京子
伊達忠宗:林与一   尾上菊之助
          (現・菊五郎)
伊達安芸:加藤嘉   森雅之
伊達兵部:浅野進治郎 佐藤慶
柿崎みや:藤原礼子  佐藤友美
柿崎六郎兵:天知茂  日下武史
酒井雅楽頭:柳永二郎 北大路欣也

2022/04/25

2022/05/03

65点

映画館/東京都/神保町シアター 


長谷川一夫の原田甲斐

山本周五郎の「樅の木は残った」は未読。大老・酒井雅楽頭(柳永二郎)の策略による伊達藩とり潰しを、原田甲斐(長谷川一夫)が、身体を張って防ぐという話。最後まで、「藩内の揉め事」を幕府に知られないように奮闘する様がいじらしい。長谷川一夫の見得や流し目など、魅力全開。何度か、「忠臣蔵」('58)の大石蔵之介の演技と重なって見えた。林与一の伊達綱宗が、初々しかった。「樅の木は残った」がNHK大河ドラマになるのは、8年後の1970年。原作の知名度がなかったので、このタイトルにしたのだろうか。

2022/04/24

2022/04/24

73点

映画館/東京都/神保町シアター 


大映による「伊達騒動」

 同じ伊達六十二万石を揺るがすお家騒動を扱った作品として、東映も「伊達騒動 風雲六十二万石」(1959年、佐伯清監督)を作っており、こちらの方がかなりドラマチックだったのに対し、本作は静的で淡々とした印象である。説明的な台詞が多く、その割に幕府の思惑や仙台藩のお家事情がいまいち掴みにくい等の弱さがあるが、終盤の展開は上手く緊張感を出せていた。
 命をかけて藩を救おうと奮闘する原田甲斐扮する長谷川一夫の圧倒的な存在感、迫真の演技に惚れ惚れしてしまう。一方で狩りを楽しみ、山娘と戯れる様子も描かれ、武士である以前に純粋に人間として生きたいという思いを吐露する辺りも印象に残る。武士として生きる者のある種の弱さも滲み出ているかのようだ。