<第19回宝塚映画祭>の上映作品。
「狐と狸」の続編で、加東大介、三井弘次、山茶花究らがインチキ商品を巧みに売りつける行商人役を続投。前作で売り上げを持ち逃げした森繁久彌も途中から顔を出す。監督は、松林宗恵にバトンタッチして、オープニングタイトルでの道中マップの通り、四国各地を広範に舞台としている。漁村や山林へと足を延ばすが、この商売も先細りであると実感させられるシビアな現実を描いている。
なお上映後にシネトークと題して本作チーフ助監督の高野昭二氏が登場。共に助監督を担当するはずだった岩内克己が、デビュー監督作「六本木の夜」のために途中で抜けたためかなり苦労させられた作品であるとか。当時年2、3本のペースで助監督をしていたが、本作は普通の作品より一週間ほど長い41日間の撮影で四国全土を実際にロケして回ったということからも苦労のほどがしのばれる。
その時の助監督としての苦労談といえば、ロケが多く宿の手配などにきりきり舞いさせられた他、松林監督に毎日怒られた記憶しかないとのこと。高野氏言うことには、陸軍養成学科で終戦を迎えた高野氏と、海軍出身の松林監督で何かとソリが合わなかったらしい。
その他に、クライマックスの阿波踊りを実際の日とは別の日にエキストラを集めて撮影した話や、レンコン畑に雨が降るシーンで、スタッフがホースで雨降らしをするも 上手くいかずこれまた怒られたこと、監督一人だけスタッフとは別の宿を予約しておくが機転を利かせ、宿の玄関に「松林宗恵監督御宿 」の上りを掛けておくことで監督ご満悦だった話、監督は脚本を全く変えなかったことなど語ってくれました。
高野氏は入社が昭和29年、映画の全盛期が昭和33年なので、映画ではなくテレビドラマを多く監督をすることになった。最後に宝塚撮影所スタッフの技量の高さについて語り、話を結ばれました