純愛物語 草の実

じゅんあいものがたりくさのみ|----|----

純愛物語 草の実

レビューの数

4

平均評点

70.9(10人)

観たひと

17

観たいひと

2

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ラブロマンス
製作国 日本
製作年 1962
公開年月日 1962/5/9
上映時間 87分
製作会社 東映東京
配給 東映
レイティング
カラー シネスコ
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督村山新治 
脚色楠田芳子 
原作壷井栄 
企画原伸光 
撮影林七郎 
美術中島敏夫 
音楽木下忠司 
録音大谷政信 
照明城田昌貞 
編集田中修 
スチール加藤光男 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演佐久間良子 大西景子
神田隆 大西清三郎
丹阿弥谷津子 大西重子
浪花千栄子 大西小松
水木襄 大西光夫
宮口精二 大西源一
杉村春子 大西英子
磯田政雄 仁左衛門
岡本四郎 定次

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

壷井栄原作を「故郷は緑なりき」の楠田芳子が脚色、「霧の港の赤い花」の村山新治が監督した純愛メロドラマ。撮影は「湖畔の人」の林七郎。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

小豆島の港町、光夫と景子の家が石垣をはさんで隣り合っている。光夫は母屋の一人息子、景子は新家の一人娘で、幼い時から兄妹のように仲良しだったが親達は仇同士のように憎み合っていた。両家の争いは祖母の代からで争いの種は日常茶飯事にまで及んだ。そんなある日、大学生の光夫は冬休みで帰省した。幼い時からの親しみがいつしか恋にかわった光夫と景子だったが、そんな親達の間にあって話すことさえ許されなかった。その頃景子の父は転勤になり母の重子と共に神戸へ移った。景子は祖母の小松と一緒に島へ残ることにした。苦労人で勝気な祖母が景子はとても好きだった。一方、景子と光夫の仲をそれとなく気づいた光夫の母英子は、光夫の意志を無視して他から嫁を貰おうと企てていた。英子の新家に対する憎しみは異常なものがあった。それは、英子が嫁入りの日、夫の源一と深い仲になっていた新家の次女立枝が思い余って母屋の井戸へ身を投げたためだった。そのことを聞いた景子と光夫は、自分達が同じ立場にあるのを知ってがく然とした。二人は、両家の溝を少しでも埋めようと約束したが、折も折、母屋の祖母が景子のついた餅を食べて窒息死してしまった。そんなことで島にいたたまれなくなった景子は、神戸の父母を訪れようと、また光夫も休暇をきり上げ東京へ帰ろうと連絡船に乗り込んだ。船で出会った二人は、光夫が卒業したら結婚しようと固く約束した。景子はこのことを父に打ち明けた。だが父の賛成を得た喜びもつかの間、光夫の嫁が決まったと言う知らせが来た。驚いた景子は島へ帰った。光夫も呼び戻されていた。その夜、こっそりと抜け出した二人はしっかりと抱き合ってがんばろうとはげまし合うのだった。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2023/04/23

2023/04/27

85点

映画館/東京都/神保町シアター 


劇場鑑賞2回目―固く真っ直ぐな愛

 今回が2度目の鑑賞。佐久間良子と水木譲という若い男女の互いを想う固く真っ直ぐな愛を端正な作劇で描いた純愛篇。佐久間が石垣を上るラストは、自ら命を絶った叔母の二の舞になるのではないかという不吉な予兆を感じさせる。が、二人を意地でも引き離そうとする水木の母・杉村春子とそれに意見する父・宮口精二が口論している内容が劇中聞き取れること、水木が石垣を上ってきた佐久間の手を取り、彼女を強く抱きしめる辺りから、必ずしもそうはならない、まだ希望が持てることを暗示しているようにも見える。口が重たく、何処か暗い影のある宮口がとても印象的であり、物語の重要な役割を担っているように思うのだが、その曖昧な性格が玉に瑕か。

2022/11/12

2022/11/12

85点

映画館/東京都/ラピュタ阿佐ヶ谷 


親戚同士の溝は井戸の底よりも深い

 原作は壺井栄、壺井とくれば舞台は小豆島。まず冒頭は島全景を大胆な空撮で捉え、次第に町の風景を映し出して行く。木下忠司の音楽に乗せ、ローカル色を色濃く打ち出した詩情溢れるオープニング、出だしから好調なスタート。だが、穏やかで心地良い空気に浸っていられたのも束の間、それを遮ってしまうのが珍しく洋服を着た杉村春子の威厳ある存在感。以降、母家の息子・水木襄、新家の娘・佐久間良子という若い男女の苦難の道が淡々と描かれて行く。ポンプで水をくみ上げる新家、未だに井戸にこだわる母家の描写も、二組の家族の間にある溝の深さを上手く説明している。
 佐久間良子にとっては「清純派」としての仕事はこの頃が最後期になるのではないかと思われる。実際、翌年には「人生劇場 飛車角」(沢島忠監督)、「五番町夕霧楼」(田坂具隆監督)といった自身のターニング・ポイントとなる作品にも恵まれ、「清純派」から大きく脱皮している。村山新治監督の代名詞とも言えるドキュメント・タッチな演出はほとんど影をひそめ、純劇映画風の作劇に仕上がった。親戚同士の関係悪化を招いた因縁が明かされていくところは何処かミステリーな雰囲気を漂わせている。前年の「故郷は緑なりき」に続く脚本・楠田芳子との相性も抜群で、兄・木下恵介がノー・タッチで良かったな、と思った。

2021/06/17

2021/06/18

65点

映画館/大阪府/日劇会館 


石垣を登るジュリエット。

ネタバレ

新世界東映(日劇会館)にて鑑賞。

上映タイトルは、「草の実」。

小豆島で隣り合う二つの家。昔からいがみ合う母家と新屋。しかし母家の息子(水木襄)と新屋の娘(佐久間良子)は恋仲。なんでも新屋が作った組み上げ式の井戸のせいで母屋の井戸が干上がったのが、いがみ合いの原因と言われているが実はもっと根深い。母屋の母親(杉村春子)と新屋の祖母(浪花千栄子)がことあるごとに諍いを起こすが、母屋の父親(宮口精二)と恋仲だった新屋の叔母が仲を裂かれたことに絶望して井戸に身を投げたことが、分かってくる…

いわば島のロミオとジュリエット。ジュリエットがバルコニーにいてロミオが下にいるのが本家だが、こちらのジュリエットは叔母がそうしたように石垣を登ってロミオの部屋にたどり着く。

壷井栄の原作の若い二人の苦難の恋物語だが、なかなか目が離せない。石垣を登って二人が見つめ合うラストのその先も見たい。

2018/09/23

2018/12/12

75点

映画館/東京都/ラピュタ阿佐ヶ谷 


村山新治は巧い

ラピュタ阿佐ヶ谷の東映文芸映画特集で初めて観た「草の実」は、冒頭の空撮で小豆島を捉えてタイトルクレジットが出たあと、隣り合った2軒の家をスコープ画面の右端から左端まで捉えたロングショットが映り、上手端の扉から出てきた佐久間良子が、画面中央近くの井戸の脇にある水道のところまで来る様子を描き、そこでカットが変わって、佐久間が画面下手の家から出てきた杉村春子と会話を交わす展開となるのですが、なぜ冒頭で画面左右いっぱいを使って二つの家を同一ショットに収めたのかということが、ラスト、画面下手の端にある家の下が急な角度の石垣であることを示す場面によって、観客に諒解されることになります。
瀬戸内海の小豆島。同じ“大西”という苗字を持ち、隣り合って住む“母屋=おもや”と“新家=しんや”という直接は血が繋がらない二つの家で、“新家”の娘である佐久間良子は“母屋”の息子・水木襄と将来を誓い合う仲でありながら、水木の母・杉村春子は若い二人が付き合うことすら徹底的に嫌い、水木の父・宮口精二は多くを語らずに口をつぐむばかりで、佐久間の両親(醤油会社の社員として本土の本社に転勤してゆく父・神田隆と一緒についてゆく母・丹阿弥谷津子)は特に反対しないものの、祖母の浪花千栄子は“母屋” への反発を露わにし、佐久間も水木もお互いの恋心を素直に出すことができない中、二つの家に横たわる過去の事件が次第に浮かび上がってくるというドラマ。
木下惠介の妹である楠田芳子の脚本が、壺井栄原作から地方色豊かなドラマを組み立て、村山新治の作劇は、今回もまたロケ撮影による地元の土地の匂いを映画の随所で立ち昇らせつつ、セット撮影部分を巧みに組み合わせながら、役者陣たちから見事なアンサンブルを引き出しています。巧いです。