瞼の母(1962)

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瞼の母(1962)

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レビューの数

28

平均評点

74.0(123人)

観たひと

182

観たいひと

4

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル 時代劇
製作国 日本
製作年 1962
公開年月日 1962/1/14
上映時間 83分
製作会社 東映京都
配給 東映
レイティング 一般映画
カラー カラー/シネスコ
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声 モノラル

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督加藤泰 
脚色加藤泰 
原作長谷川伸 
企画橋本慶一 
三村敬三 
撮影坪井誠 
美術稲野実 
音楽木下忠司 
録音佐々木稔郎 
照明中山治雄 
編集河合勝巳 
スチル鈴木一成 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演中村錦之助 番場の忠太郎
松方弘樹 金町の半次郎
木暮実千代 おはま
大川恵子 お登世
中原ひとみ おぬい
夏川静江 おむら
瀬川路三郎 飯岡の助五郎
徳大寺伸 突き膝の喜八
阿部九洲男 宮の七五郎
原健策 素盲の金五郎
山形勲 息羽田要助
明石潮 仙台屋与五郎
河原崎長一郎 伊勢屋長二郎
松浦築枝 おもと
赤木春恵 おふみ
菊村光恵 おせう
中村時之介 善三郎
片岡半蔵 藤八
中村錦司 子の吉
大東良 孫助
沢村貞子 おとら
星十郎 酔漢
浪花千栄子 老婆
藤川弘 船頭
尾形伸之介 縛られた奴
遠山金次郎 飯岡の身内A
南方英二 飯岡の身内B
五里兵太郎 飯岡の身内C
鈴木金哉 飯岡の身内D
三沢あけみ 村娘A
山本操子 村娘B
木内三枝子 村娘C

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

長谷川伸の原作を「怪談お岩の亡霊」の加藤泰が脚色・監督した人情時代劇。撮影は「若き日の次郎長 東海道のつむじ風」の坪井誠。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

番場の忠太郎は五歳の時に母親と生き別れになった。それから二十年、母恋いしさに旅から旅への渡り鳥。風の便りに母が江戸にいるらしいと知ったが、親しい半次郎の身が気がかりで、武州金町へ向った。親分笹川繁蔵の仇飯岡助五郎に手傷を負わせた半次郎は、飯岡一家の喜八らに追われる身である。金町には半次郎の母おむらと妹おぬいがいる。わが子を想う母の愛に心うたれた忠太郎は、喜八らを叩き斬って半次郎を常陸へ逃がした。その年の暮れ、母を尋ねる忠太郎は母への百両を懐中に、江戸を歩きまわった。一方、飯岡一家の七五郎らは忠太郎を追って、これも江戸へ出た。仙台屋という神田の貸元に助勢を断られた七五郎らに遊び人の素盲の金五郎が加勢を申し出た。鳥羽田要助という浪人もその一味だ。金五郎は軍資金捻出のため、チンピラ時代からの知り合いで、今は料亭「水熊」の女主人におさまっているおはまを訪ねた。おはまの娘お登世は木綿問屋の若旦那長二郎と近く祝言をあげることになっている。だから、おはまは昔の古傷にふれるような金五郎にいい顔をしない。おはまの昔馴染で夜鷹姿のおとらも来た。金五郎がおとらを表に突き出したとき、忠太郎が通りかかった。おとらから、おはまが江州にいたことがあると聞いて、忠太郎は胸おどらせながら「水熊」に入った。忠太郎の身の上話を聞き、おはまは顔色をかえたが「私の忠太郎は九つのとき流行病で死んだ」、と冷たく突き放した。娘を頼りの今の倖せな暮らしに、水をさして貰いたくないからだ。忠太郎はカッとなって飛び出した。暗い気持の忠太郎を、金五郎一味が取り囲んだ。「てめえら親はあるか。ねえんだったら容赦しねえぜ」と、忠太郎は一人残らず斬り伏せた。一方、お登世と長二郎に諌められたおはまは、忠太郎の名を呼びながら探した。忠太郎はおはまたちから身を隠し耳をふさいだ。離れていくその後姿を拝んで、男泣きの忠太郎は風のように去っていった。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1962年2月下旬号

日本映画紹介:瞼の母

2025/12/21

2025/12/21

60点

VOD/YouTube 


存在の危機とめそめそ

忠太郎(中村錦之助)は強いは強いのだが,そこそこの頻度でめそめそしているのが気がかりにもなる.そして終盤,彼は,瞼の母に「忠太郎」と,霧に煙る月夜の晩に,叫ばれ声をかけられるのだが,木の影から出てこられず,いじらしさを見せる.しかし,そんな彼の女々しさと柔らかい精神にこそ,作品の魅力がかけられている.
かたぎになるつもりでいるらしい.それでもやくざな振る舞いから抜けきれずにいる.神社の境内で刀を振り回して暴れている.共闘しているのは,兄貴分の忠太郎と弟分の半次郎(松方弘樹)である.江戸へと出て,忠太郎は母を求めようとしている.金町では半次を訪ねてくる十人ほどの輩たちがいる.半次はやたらと汗をかいている 妹のおぬい(中原ひとみ)と母のおむら(夏川静江) がいて,半次を隠してしまう.喧嘩に行こうとしていると,祭囃子が聞こえ,さらには子どもたちのわらべうたも聞こえてくる.
林の中で飯岡の助五郎(瀬川路三郎)らとの戦闘が始まっている.その戦いの始末を終えると,忠太郎は弟の母でしかないおむらに抱かれるようにして,筆を手にとってもらっている.すると彼は母の面影と肉感に絆されてしまい,遂には泣き出す.
雪が積もっている江戸に舞台は映されている.路上で三味線を手にしてかき鳴らす盲目の老婆(浪花千栄子)がいる.忠太郎は,彼女をも母ではないかと嫌疑をかけている.湯島天神で富籤が催されて,人々が群れ,富籤が少年に引かれようとしている.雨が降っている.賭場に出入りをしている要助(山形勲)と金さん(原健策) が忠太郎に対して企んでいる.
船着場のあたりに営まれている「水熊」の女将のおはま(木暮実千代)が見えてくる.その店先に,コモを持った夜鷹のような怪しい女のおとら(沢村貞子)が入ってくる.が,金さんに追い出され引っ叩かれるなどいじめられている.そこへ忠太郎が助けに入り,やはり母ではないかと誰何する.
江州の番場の宿場,置長屋での母と子の別れが今こそ語られようとしている.おはまは忠太郎という子は死んだと言う.「じゃあ自分は何だ」と忠太は亡霊のようなことを言い,存在が怪しくなる.ウチの中に波風を立てていることをおはまは嫌っている.
吊り橋が見える.その川辺でまたも喧嘩や殺し合いが繰り広げられているかと思えば,忠太郎は,また息を潜め,霊的な存在にでもなろうと言うのか,内面に閉じこもろうとしている.

2025/08/07

2025/08/07

80点

テレビ/有料放送/東映チャンネル 


東映チャンネルの加藤泰監督特集で観る。タイトルは有名な戯曲で子供の頃から知っているがこんな話だったとは知らなかった。「親の心子知らず」は有名だが、これは「この心親知らず」といった感じ。情感溢れるシーンでの加藤泰監督ならではのローアングルのカメラワークが印象的。

2017/08/02

2025/07/22

90点

選択しない 


上、下の瞼を閉ぢりや、会はねえおッ母さんの面影が

ネタバレ

 加藤泰監督作品、1962年製作・公開の「瞼の母」であります。原作は勿論長谷川伸。脚本も加藤泰が担当、音楽は木下忠司となつとります。総天然色シネマスコープ、83分。

 五歳の時に母親と生き別れになつた番場の忠太郎(中村錦之助)は、母の手掛かりを頼りに旅を続け遂に二十年。江戸にゐるらしいとの話を聞き早速江戸へ向ひます。しかし弟分の半次郎(松方弘樹)が親分笹川繫蔵の宿敵飯岡助五郎(瀬川路三郎)に狙はれてゐると知り、半次郎の故郷金町へ。そこでは半次郎の母おむら(夏川静江)と妹おぬい(中原ひとみ)がゐて、忠太郎はおむらに母への慕情を感じ、一人で飯岡一家を叩きのめして半次郎を堅気にしました。

 江戸で母を探す忠太郎、料亭「水熊」から叩き出された老婆おとら(沢村貞子)から、「水熊」の女主人おはま(小暮実千代)が江州の出だと聞き、早速おはまに会ふ忠太郎。おはまは確かに忠太郎と云ふ息子がゐたが、九つの時に死んだと言つて忠太郎を突き放します。ゆすりたかりの類と思つたのです。
 娘お登世(大川恵子)の婚礼が近く、幸福な暮しに水を差して欲しくなかつたのであります。失意の忠太郎は「会ふんぢやなかつた」と泣き、「水熊」を飛び出します......

 お馴染みの「瞼の母」で、ストオリイも知悉してゐるのに飽きることなく見てしまひます。この加藤泰版の特長は、実の母小暮実千代に会ふ前に、慕情を盛上げる三人の老婆を配したところでせうか。一人目は半次郎の母おむら。演じた夏川静江は戦前のスタア女優ですが、老いても上品さを湛へてゐます。半次郎を想ふ母の愛を知り、一層実母への憧憬の念がこみ上げるのです。

 二人目は瞽女の浪花千栄子。酔漢の星十郎(絶品)が散々弄つた挙句、カネも払はず去らうとするので、忠太郎がお仕置きします。その縁で話を聞くと、或は彼女が母か?と思はせて実は違つて忠太郎をがつかりさせます。ここでの浪花千栄子は必ず後ろ斜めからのアングルで、意図的に顔を隠してゐます。

 三人目は前述の沢村貞子。嘗ては小暮と友達だつたが、小暮が料亭の女将に収まり、一方の沢村は老夜鷹として蔑まれてゐます。やはり実母と重ね合せた忠太郎は、カネを渡して商売でも始めろと語るのです。三人とのやり取りには夫々可也時間を費やし、見どころとなりました。

 その他共演陣も充実。松方弘樹は序盤だけの出演で残念ですが、ワルのコムビ原健策と山形勲が流石に上手い。ヒロイン格は本来大川恵子や中原ひとみになるところですが、本作に関しては前述の母親女優たちの前に霞むのは致し方ないか。特に母役の小暮実千代は素晴しく、去る忠太郎を追はうとして湯飲みを零し、その際に忠太郎が座つてゐた温もりを確かめるシーンは名場面と存じます。

 ラストで名を呼ばれて涙する錦之助も良いです。最初は彼の名を呼ぶのは大川恵子と婚約者の河原崎長一郎のみ。そして感極まり小暮実千代が遂に「忠太郎~!」と叫ぶその瞬間、錦之助の表情が変り観てゐるわたくしも泣いてしまつたのであります。上映時間83分のプログラムピクチュアながら、見所が濃密に詰つた加藤泰の佳作と申せませう。

2025/05/28

2025/05/29

80点

テレビ/有料放送/東映チャンネル 


情感溢れる。

ネタバレ

加藤泰監督・脚本、中村錦之助主演作。原作は長谷川伸。血の気の多い弟分の半次郎を庇って喧嘩をした主人公・忠太郎は、半次郎の母が息子を想う姿に心を動かされ、幼い頃に生き別れになった母を探しに手掛かりのある場所に赴くが…

1991年に京都文化博物館・映像ホールで、1995年に衛星放送で見て以来、3度目の鑑賞。オープニングでの木下忠司の音楽から既に心に沁みるので、木暮実千代扮する実の母にやっと巡り合った忠太郎が長年の思いを語り拒絶されるクライマックスにまたも泣けてしまう。

自分の生き別れの母ではないかと思って会った女性(浪花千栄子、沢村貞子、木暮実千代)と忠太郎のシーンはローアングルで撮られた情感溢れる名シーンとなっている。

(BD-R 録画 CATV 東映チャンネル)

2021/05/13

2021/05/13

55点

その他/録画DVD 


浪花千栄子特集

一瞬母を思わせる盲目の老婆役、とても重要。加藤泰監督、名作の筈だが私の心には響かない❗

2020/11/29

2021/05/05

70点

VOD/U-NEXT/レンタル 


5歳の時に母親と生き別れた番場の忠太郎。それから20年、母親を探し続けていることに、男児にとっての母親の偉大さを思い知る。そして、博徒の道を歩んでいるとはいえ、忠太郎がやたらと優しい男前!特に江戸に出てからが顕著で、母親くらいの年齢の女性が困っていると、思わず手を差し伸べる。その女性陣を演じるのが、浪花千栄子に沢村貞子とすこぶる豪華。さらに、満を持して登場するのが、忠太郎の母親演じる小暮実千代。彼女と忠太郎が対面するシーンが圧巻で、ぐいぐいと迫ってくる忠太郎を巧い具合に躱しながら、母親と分かる繊細な演技を見せる。悲しいラストではあるものの、母親に息子と認識され、名前を呼ばれただけでも、忠太郎は幸せだったと思いたい。また、半次郎演じる当時20歳の松方弘樹が、初々しくて可愛らしい。