ある大阪の女

あるおおさかのおんな|23 Steps to Bed|23 Steps to Bed

ある大阪の女

レビューの数

5

平均評点

68.0(21人)

観たひと

34

観たいひと

1

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 日本
製作年 1962
公開年月日 1962/2/24
上映時間 89分
製作会社 宝塚映画
配給 東宝
レイティング 一般映画
カラー カラー/シネスコ
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声 疑似ステレオ

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督須川栄三 
脚本依田義賢 
須川栄三 
企画藤本真澄 
金子正且 
撮影遠藤精一 
美術加藤雅俊 
音楽平岡精二 
録音中川浩一 
照明下村一夫 
編集庵原周一 
助監督川崎徹広 
スチル池上恭介 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演団令子 村井アヤ子
藤原釜足 村井準造
勝呂誉 村井建二
初風諄 村井幸子
川崎敬三 西村進
小沢栄太郎 浅井惣之助
萬代峰子 浅井すみ子
山茶花究 藤野
田武謙三 沢村
原知佐子 夏子
芝木優子 小泉行子
若松明 柴田睦男
黛ひかる 清江
内田朝雄 部長刑事
江並隆 刑事
藤田まこと ダフ屋
楠義孝 社員A
真白一平 社員B
双葉京子 マダム
茶川一郎 客A
赤木春恵 管理人のおばさん
津川アケミ 芸者

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

「続 悪名」の依田義賢と「「挑戦」より 愛と炎と」の須川栄三が共同で脚本を書き、須川が監督した社会ドラマ。撮影は「駅前団地」の遠藤精一。溝口健二監督作「浪華悲歌」(1936)のリメイク的作品。パースペクタ立体音響。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

大阪本町の問屋街。アヤ子は浅井産業事務所で机をならべる西村進と婚約の仲だが、気の弱いうえ、病苦の母を抱えて借金に悩む進は、新家庭を持つこともできず、安ホテルで愛情をたしかめ合うのが精一杯であった。貧民街のアヤ子の家では、ヤクザの弟建二が勤め先の品物に手をつけたばかりに、穴埋めのため父の準造が勤務先の二十万円を費消、矢のような催促をうけている。準造は朝からヤケ酒を呑み、アヤ子や幸子と口論の絶え間がない。こんな時、アヤ子の頭に浮かんだのは、浅井社長が妻すみの眼をかすめてアヤ子に預けていたヘソクリだ。浅井に無断で二十万円を借金の支払いに回わしてしまったアヤ子は、浅井にすべてを打ち明けた。「気にしいな」と、浅井はみずみずしいアヤ子の体を抱きしめた。アヤ子は郊外の豪華アパートに移り、浅井は足しげく通い続けた。一方、すっかりぐれてしまった建二は、せっかく勤めた町工場も長続きしないばかりか、悲嘆にくれる恋人清江の気持も解さず、彼女の父が経営するタイヤ修理工場から部品を持ち出しては小遣を稼いでいた。浅井の世話になりながらも進を忘れきれないアヤ子はある日、進から五万円の借金を申し込まれた。彼女は浅井を欺して金を出させようとした矢先き、浅井はとつぜん腹痛でベッドに倒れた。そのため、浅井の妻にいっさいがバレて彼は本宅へ連れ戻された。アキ子は友達の夏子がいるバーの女給になったが、以前から食指を動かしていた株屋の藤野に、自分の体を八万円で売り渡した。数日後、アヤ子は進に五万円とアパートの鍵を渡した。藤野と進がアヤ子のアパートで鉢合わせしたとき、アヤ子はビールびんで藤野の頭を割り、警察にひかれた。浅井、藤野、西村、進の証言は彼女に不利であった。アヤ子は傷害事件として書類送検され、身柄を準造に預けられた。「今度やるときは、もっとうまいことやったるわ」と呟いて、彼女は姿を消した。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1962年3月下旬号

日本映画批評:ある大阪の女

1962年3月上旬号

新作グラビア:ある大阪の女

1962年2月下旬号

特別グラビア:「ある大阪の女」の須川組

1962年2月上旬ベスト・テン決算総特集号

日本映画紹介:ある大阪の女

2020/07/14

2023/12/02

75点

選択しない 


1962年の浪華悲歌

 1962年の「ある大阪の女」であります。1936年の溝口健二×山田五十鈴による「浪華悲歌」のリメイク。監督は須川栄三、脚本は依田義賢のオリジナルに、須川自身が手を加へたやうです。音楽は平岡精二となつとります。

 主人公村井アヤ子(団令子)は浅井産業に勤めてゐます。当時の言葉だとBGでせうか。同僚西村進(川崎敬三)とは恋人の間柄ですが、お互ひの家庭の事情や経済問題で中中結婚出来ない状態です。
 家では父の準造(藤原釜足)が勤務先のカネ20万円を使ひ込みしたとして、問題になる前に返済するやうにと、会社から迫られてゐます。対応するのはアヤ子で、準造は雲隠れ。イライラを妹の幸子(初風諄)にぶつけてしまふ。そもそもグレた弟の建二(勝呂誉)が勤め先のカネに手を付けたのが原因で、その穴埋めの為に準造がやつてしまつたのです。

 アヤ子は浅井社長(小沢栄太郎)から、関係を迫られるも断固断りました。しかし頼まれて浅井の金を銀行に預ける途中、ついにそれに手を出してしまふ。20万円を準造に渡すアヤ子でした。しかしバレるのは時間の問題、西村に相談するも他人事のやうな態度に、アヤ子は怒つて席を立ちます。そして浅井に打ち明け、好きなやうに処分してくれと告げるのです......

 なぜこの時点で「浪華悲歌」なのか分かりませんが、舞台を1962年の現代に置き換へて須川監督が溝口の世界に挑戦した感じでせうか。長めのタイトルバックに流れる、当時の大阪の映像が興味深い。「大大阪」と呼ばれてゐた頃の活気が感じられます。現在は万博でゼイゼイ言つてますが。

 団令子のアヤ子は、元来素直な良い娘と見受けられます。貧困家庭に生れた故の悲劇が襲ひかかり、運命を変へてしまふのです。ベルさんの時は、確か電話交換手(当時の花形職業)であり、兄は大学に通つてゐました。戦前で大学まで行くなど、貧困層には難しい時代。それに比べて、戦後の団令子家庭の方が悲惨さが増してゐる感じです。

 つひには傷害事件まで起こし、しかも皆は味方してくれません。それでもへこたれない最後を演じる団令子は奮闘してゐるけれど、戦前ならこのキャラクタアは鮮烈でしたでせうが、この時代にリメイクする意義がイマイチ伝はりませんでした。

 一方で共演陣は小沢栄太郎、山茶花究、藤原釜足ら芸達者が揃ひました。冒頭のダフ屋藤田まことも印象的。勝呂誉は当時は俳優座で、まだ松竹で「サニーカップル」として売り出す前の段階。ひよつとしたら映画初出演でせうか。まだほつそりしてゐます。川崎敬三は若い俗物ぶりを発揮。

 女優陣は、宝塚映画製作と云ふ事で萬代峰子、黛ひかる、初風諄らが顔を見せます。尚、原知佐子は宝塚を受験するも落ちてしまつたさうです。
 それにしても皆大阪弁が自然な感じに聞えます。多分関西人が見れば全然なつとらんと怒るかも知れませんが、当方からすれば、木曽川を西に越えたら皆同じに聞こえますから。
 「浪華悲歌」とは別物と捉へ、当時の大阪へとタイムスリップする映画として愉しむのが良いでせう。

2014/11/23

2014/11/23

62点

テレビ/有料放送/日本映画専門チャンネル 


大阪の風景が懐かしい

溝口の「浪花悲歌」のリメイクだが、あの名作と比べられるのは気の毒ではある。映画としては平凡な出来栄えだが、60年代の大阪の風景がとても懐かしい。主役の団令子よりも、彼女の愛人になる小沢栄太郎や山茶花究の芸達者振りに目が行ってしまう。

2014/10/14

2014/10/14

60点

テレビ/有料放送/日本映画専門チャンネル 


浪華悲歌

ネタバレ

浪華悲歌のリメイクだが、時代が違っても男女の仲は変わらぬということか。山茶花究が憎々しく演技しているのが印象に残るが、反面、団令子に魅力がない。ラストに一人歩いて行く場面にも説得力がない。現代、団令子をみて、どうして人気があったのか判らない。

2013/06/06

2013/06/07

70点

映画館/東京都/シネマヴェーラ渋谷 


「浪華悲歌」のリメイク

#484 シネマヴェーラ渋谷「ある大阪の女」。山田五十鈴主演、溝口健二監督の「浪華悲歌」を団令子主演でリメイクした須川栄三監督作品。舞台を1960年代に移したことで倫理観も大分異なっているがヒロインを妾にする社長役の小沢栄太郎が溝口作品からのつながりとして存在感を放っている。

2011/07/17

2012/02/13

74点

映画館 


須川栄三の「ある大阪の女」は、溝口「浪華悲歌」のリメイクですが、そもそも溝口映画は通俗的な人物がステレオタイプの設定の中で通俗を極めることによって、通俗の先に突き抜けるような映画であるのに対して、須川はステレオタイプの段階で止まっています。主演の団令子は頑張っているとは言え、最初の絶頂期を迎えようとしていたベルさんと比べられてしまうという意味で、そもそも団には可哀相な企画でした。須川としても上り調子の頃の映画でしょうが、溝口に挑戦するのはまだ早かったかも知れません。