冒頭のタイトルソングは「北帰行」に変わる。シリーズのテーマソングともいえる「ギターを持った渡り鳥」の方はラストで聞かれる。シリーズはじまりの地、北海道は函館に再び渡ってきた渡り鳥の滝(小林旭)。今回も街の黒幕から嫌がらせを受けている人たちを助けてやるという図式は変わらない。この図式に変化を付けられればシリーズとしてももう少し続けられたと思うのだが。ただ今回は滝の親友(青山恭二)が麻薬絡みで殺されたことがきっかけで麻薬に恨みをもつ滝という設定が新しい。
敵の背後に麻薬シンジケートが登場してくるあたりは少しスケールアップしている。さらに謎の男、「ハジキの政」の存在もアクセントとして効いている。この自称ハジキの政(実は偽物)を演じた郷鍈治という人をこれまで自分は知らなかったのだが、このシリーズの常連宍戸錠の弟であったとは。しかも奥さんがあのちあきなおみだったとは。ただ兄ほどの華がなかったからなのかそれほどメジャーな役者にはなれないまま早世してしまったようだ。
ボスの黒川(内田良平)が元は自分の女だった幸江(小薗蓉子)を使って造船所を乗っ取ろうとする企みがちょっとまだるっこしいが、あとは麻薬取引の現場を押さえるラストにいたるまでシンプルな活劇を堪能できる。もちろん今回はいつも以上にルリ子と旭のツーショットを見ることもでき、ラストの別れの慕情も効果的に高まることができた。