マキノ・錦之助コンビの「若き日の次郎長」シリーズ、三作目にして最終作。
前作で新婚旅行としやれこんだ次郎長(中村錦之助)と女房のお蝶(丘さとみ)、この作品の冒頭はその続きみたいで、次郎長は甲府を目指すやうです。しかし馬子の権(千秋実)は、甲府へは行くなといふ。何やらヤバイ事があるらしい。その助言を無視して甲府入りする次郎長でした。
そこでは、悪代官・平垣三郎兵衛(柳永二郎)がヤクザの猿屋勘助(山形勲)に十手を与へ、悪政・圧政を強ひてゐました。甲州屋弥左衛門(水野浩)の娘・お竹(北沢典子)を強引に妻に迎へやうとしたり、人足を人間扱ひせず、逆つた人足仲間の薩州(本郷秀雄)を殺す非道ぶり。義憤を感じた次郎長は、薩州の弔ひをした廉で責苦を受けた上、権ら人足仲間と共に牢に入れられます。
大政(水島道太郎)ら次郎長一家は、連絡係として石松(渥美清)に牢番を挑発させワザと牢に入らせます。ここで脱出作戦を確認する一同。祭りの日に、晒し者にされる次郎長たち。ここで大政たちが一気に襲撃、次郎長を奪還し、逆に平垣の屋敷に殴り込むのでした......
この「東海道のつむじ風」は、小野竜之介単独で脚本執筆してゐるやうです。マキノ監督は関つてゐないのか、少し整理されてない部分も散見されます(千秋実と星美智子の関係は明らかに説明不足。寧ろこのくだりはカットした方がすつきりします)。
女優を輝かせる名人ですが、今回はイマイチ、マキノ節は物足りません。丘さとみは女房としてやや貫禄を示しましたが、星美智子は壺振りでチラリズムをみせるくらゐ、北沢典子の悲哀は通り一遍の演技と見受けられます。
一方男優たちは、ジェリー藤尾、渥美清、千秋実らが存在感を見せました。さういへば藤尾は後に結婚する渡辺トモ子と共演ですね。ワルの柳永二郎は次郎長に命を助けられ、人足たちの罪はない、皆無罪放免だと宣言させられます。実際には、かういふワルは反省しないので、次郎長が去ればまた同じことをするでせう。それにしても、ピストルの弾一発でやられる山形勲は呆気ない最期でした。
マキノ雅弘監督はこの後、「次郎長と小天狗 殴り込み甲州路」なるシャシンを撮り、錦ちやんも出てゐますが、主演は小天狗の北大路欣也でした。監督には、錦ちやん版次郎長をもう一本、東映オールスタアで撮つて欲しかつた喃と勘考するのでした。