太郎シリーズの第四弾にして最終作。再び万年太郎が登場です。そのせいかどうか、小林恒夫が監督に復帰、原作に源氏鶏太の名が再びクレジットされてゐます。脚本は舟橋和郎、音楽も木下忠司が再登板です。
製作は東映東京ではなくニュー東映。前身は東映が調子に乗つて設立した「第二東映」。しかし既に映画産業は下降線を描いてゐて、うまく機能することなく消滅してしまつた会社であります。末期には新東宝との合併話も出たりして迷走しました。それと関係があるのかどうか、ヒロインには元新東宝のアイドル・星輝美が抜擢されてゐます。さういへば撮影担当も新東宝から来た岡戸嘉外でした。
一作目の「万年太郎」のラストは、転勤の為北海道に旅立つところで終つてゐます。それを受けたのかどうか、商社勤務の万年太郎(高倉健)は北海道に異動でやつて来ます。もつともあの時は化粧品会社だつたし、山東昭子が一緒だつたので、一応別の設定と申せませう。
途中の汽車の中で一緒になつた先輩社員・板橋ゆみ子(星輝美)とは成り行き上、親分子分の関係になります。太郎が子分です。嫌はれ役担当は大村文武が復帰、取引先の上田吉二郎と結託し、私腹を肥やしてゐます。社長の十朱久雄よりもデカイつらをしてゐます。この嫌味つたらしい演技は天下一品ですな。
先輩社員に恐妻家で子沢山の伊藤雄之助。彼はシリーズ皆勤賞ですな。相変らず芸達者です。そして取引先の会長役に、「七剣聖」月形龍之介が登場。無駄に大物を起用するなと思つたら、クライマックスで黄門さまの芝居をし、「なるほど!」の展開。秘かに行動し、汚職の大掃除をした訳です。
又もや健さんはMMK。姐御の星輝美に加へ、月形の孫娘・小林裕子、アイヌ娘の山東昭子(この人も全作出演。しかしアイヌのくだりは要らないと存じます)、バアのマダム・ナンシー・ブローク(この人は知りませんでした。何者でせうか。イーデス・ハンソンみたいな喋り方)らが皆健さんに接近します。
最後で月形が小林と結婚してくれと頼むと、健さんは「札幌に来る前にもう心に決めた人がゐる」からと断ります。これに大ショックの輝美ちやん。観客も「アレ?そんな人出てたかな」と一瞬訝しがるのですが、最後に一休さんみたいなオチがありました。
健さんのコメディ演技も笑はせてくれるし(弁当を買つたら毛ガニだつたのは可笑しい)、当時の北海道の観光地のガイドもあり(虻田駅を洞爺駅に改称したのは残念)、何も考へずに愉しめる作品と申せませう。
白状すれば、星輝美ファンのわたくしは、彼女が出てゐるだけで問答無用に支持するのでした。許して下さい。