八百万石に挑む男

はっぴゃくまんごくにいどむおとこ|----|----

八百万石に挑む男

レビューの数

4

平均評点

70.7(14人)

観たひと

22

観たいひと

3

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 日本
製作年 1961
公開年月日 1961/9/13
上映時間 95分
製作会社 東映京都
配給 東映
レイティング 一般映画
カラー カラー/シネスコ
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督中川信夫 
脚本橋本忍 
企画坂巻辰男 
田口直也 
撮影三木滋人 
美術桂長四郎 
音楽渡辺宙明 
録音東城絹児郎 
照明田中憲次 
編集宮本信太郎 
スチル吉田晴光 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演市川右太衛門 山内伊賀之亮
中村賀津雄 天一坊
桜町弘子 ぬい
河原崎長一郎 柳沢
水島道太郎 赤川大膳
仲谷昇 藤井左京
徳大寺伸 吉宗
松浦築枝 りつ
明石潮 光悦
伊東亮英 源助
有馬宏治 吉田三五郎
尾形伸之介 遊び人
丘郁夫 小坊主
中村錦司 門番
浪花五郎 山甚
中村時之介 中盆
国一太郎 番人
長田健二 
香月涼二 瓦版売り
関根永二郎 武士A
山崎二郎 宝沢
藤田安雄 柳沢の幼年時代
御橋公 堀田相模守
坂本武 武州屋又兵衛
柳永二郎 天忠
山村聡 松平伊豆守
河原崎長十郎 大岡越前守

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

「南の風と波」の橋本忍の脚本を「「粘土のお面」より かあちゃん」の中川信夫が監督した天一坊をめぐる異色ドラマ。撮影は「はやぶさ大名」の三木滋人。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

東海道は金谷の宿場。賭場で負け続けの若者が懐中から短刀を出した。用人棒の赤川大膳の眼が光ったのも道理、紀州家に伝わる家宝の品である。大膳は仲間の藤井左京とその出所を追求するが、若者はさらにお墨付を出して将軍吉宗の落胤だといった。本人の真疑はさておき、短刀とお墨付は本物と睨んだ左京は、美濃の国常楽院の伯父天忠の許へ若者を伴った。話はこの若者宝沢が紀州の永寿寺にいた昔に遡る。当時十三歳の宝沢は幼い頃、祖母から短刀と手紙を見せられた記憶がある。それを聞いた友の柳沢は、本堂の須弥壇の中でその品を見たと告げた。深夜、宝沢はそれを盗み出したが手燭が床に落ち、本堂は焼け落ちた……。常楽院の大忠は宝沢、すなわちこの若者に天一坊の尊号を与えた。折も折、天忠の友で元は九条関白家にその人ありといわれた山内伊賀之亮が訪ねて来た。天一坊と対座した伊賀之亮は、彼が贋物なら天下の徳川相手に乗るか反るかの大勝負を挑むべきだといい放った。天一坊の腹は決った。伊賀之亮はただちに土地の豪農豪商に働きかけて軍資金を集め、天一坊を儀式に慣れさせると同時に、案山子同然の大阪奉行、京都所司代らを相手に御落胤を名乗り出て、天下の耳目を驚かそうという巧妙な作戦を立てた。大阪に発つ前夜、天一坊は強欲な商人武州屋が夜伽に差し出した娘ぬいに、一夜の情をかけた。伊賀之亮の計画は見事に当り、天一坊の美々しい行列は大阪、京都を経て、江戸は八ツ山に入った。すでにわが事成れりと喜ぶ天忠らにひきかえ、伊賀之亮は真の勝負はこれからだと思う。というのも、知恵袋といわれる老中松平伊豆守と名奉行大岡越前守の実力を知っているからであった。果して伊豆守は、その真疑に拘らず天下騒動の基因ともなりかねない天一坊を、贋物として処断する腹なのだ。伊豆守の役宅で越前守と会った伊賀之亮は二人の心底を見抜き、すでに敗れたことを知った。その夜、天一坊の宿舎に幼馴染の柳沢が訪ねて来たが、事の露見を恐れて左京が斬り伏せた。苦しい息の下から柳沢は、天一坊こそ本当の落胤だと告げた。しかし、このとき江戸周辺は、越前守の采配によって蟻一匹這い出す隙もなく固められているのだった。伊賀之亮は最後のはなむけとして、天一坊に乾坤一擲の智恵を授けた。天一坊はわが子を宿して尋ねて来たぬいを冷たく振り切り、死の親子対面に向うのだった。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1961年10月下旬号

日本映画批評:八百万石に挑む男

1961年9月下旬号

日本映画紹介:八百万石に挑む男

2023/11/30

2023/11/30

75点

VOD/U-NEXT 


こんな傑作が東映時代劇にあったとは。

天一坊事件をスリリングに描く会話劇・時代劇。それに隠れて親子の情についても描く脚本橋本忍の傑作。こんな傑作が東映時代劇にあったとは。

2020/09/13

2020/09/13

67点

映画館/東京都/ラピュタ阿佐ヶ谷 


中川監督は、時代劇もお得意

 「天一坊事件」を題材にした異色作。8代将軍徳川吉宗の落胤と自称する中村嘉津雄が正真正銘、吉宗公の実の子で、徳川の政権を揺るがしかねないという理由から、偽物として処される―というような話で、権力に対する批判が籠められているのだろう。
 怪談でよく知られる中川信夫監督だが、もともとは時代劇専門の監督だ。怪談とはまた違う、監督の別の顔を垣間見ることが出来る一本。終始威厳のある雰囲気から、同じ監督の作品とは思えないほど重厚な作風に。本作が公開されたのは昭和36年だから、だいたい新東宝が倒産した辺りに撮ったのだろうか?
 実の父親に一人でも会いに行く決心を固めた中村、彼を見送り最後まで武士としての潔さを貫く市川右太衛門、そして中村に棄てられながらも彼の情を悟る桜町弘子…派手な立ち回りこそないものの、しみじみと余韻の残るラスト。

2020/02/24

2020/02/27

78点

購入/DVD 


新鮮な東映時代劇

この映画は私にとってとても新鮮だった。以下その理由を4点述べる。

① 東映時代劇スターの頂点にある市川右太衛門が悪役(山内伊賀亮)を演じるのは本当に珍しい。この人が悪役を演じるのは寡聞にして「牢獄の花嫁」くらいしか記憶にない。まさに巨悪という感じで作品全体を引き締める。仁左衛門や吉右衛門が二木弾正を演じると「伽羅先代萩」の芝居全体が引き締まる面白さに通じる。

② これだけの悪役を主人公に配するなら、これを受けて立つ正義派は山村聰だけでは足りない。そこで河原崎長十郎久しぶりの登場となる。私にとっては、山中貞雄の「人情紙風船」、「河内山宗俊」、滝沢英輔の※「逢魔の辻」そして溝口健二の「元禄忠臣蔵」以来の出会いだから本当に久しぶりである(因みに戦後の何本かの独立プロ作品は未だ観ていない)。主人公に対峙する大岡越前を演じている。河原崎長一郎と親子共演を果たしているが、ドラマとしては顔を合わさない。
※ (因みに「逢魔の辻」はキネノートのデータには見当たらない。NHK大河ドラマ「三姉妹」の原作である。キネマ倶楽部が販売したビデオで観ている。是非データに加えて欲しい。この場を借りてお願いする。)

③ この映画、時代劇ではあるがチャンバラ映画ではない。この映画には私の記憶する限り、チャンバラシーンが全くない。チャンバラの始まる寸前まで目一杯溜めて、そこで切ってしまう。水島道太郎が大勢の捕り方を前にして槍を構えてジリジリ前に出るところで切ってしまうし、次のシーンで、右太衛門が右裃だけ脱いで抜刀し哄笑してカットになる。捕り方を前にしながら、チャンバラシーンを意図的にカットしてしまっている。それに続くシーンは瓦版売りの口上となってその後の顛末を観客に説明することで済ませる。

④ 叙情性を押さえ込んで展開してきたドラマはラストシーンの天竜川下りの船で、一瞬の叙情性を見せる。商人(坂本武)が娘(桜町弘子)の愛した男(天一坊:中村賀津雄)について世間の悪評と真逆の評価を口にすると、娘が人目を気にしてこれを小声でたしなめる。そこに一瞬の叙情性を見せたものの、すぐに、船が急流を下るロングショットに切り替わって「終」となる。観る者に惹き起こされた情緒は一瞬にして閉ざされてしまうので、なおさら余韻として観る者の内心に留め置かれる。計算された脚本(橋本忍)が見事である。

2017/10/10

2017/10/10

65点

テレビ/有料放送/東映チャンネル 


本物か偽物か

おなじみ天一坊事件の物語。将軍の落とし胤(中村嘉津雄)が山内伊賀之亮(市川右太衛門)の助けを借りて将軍に会いに行く物語。
しかしそこには落とし穴が。
伊賀の守は本物ならこっそり行け、偽物なら大々的に行けと策を授けるが、本人は偽物と思っているから鳴り物入りで登場した。しかしそれが裏目に出て将軍の恥を隠すため、本物でも偽物としてしまう方針に出た。しかし実は本物であったため、対面はかなわず偽物として処分されてしまう。
ストーリーはよくできており、最後は市川右太衛門と中村嘉津雄の見せ場で終わる。幕吏との殺陣は何も無く、余韻を持って終わる。