機動捜査班シリーズの第四作目、「都会の牙」であります。小杉勇監督は同じですが、今回は阿部桂一の原作付きで、脚本も長谷川公之が外れて松村基生・堀守夫・遠藤三郎の三名が参加。そのせいか若干テイストの違ふ作品となりました。
白タク営業を取り仕切り暴利を貪る黒沼興業。カシラの黒沼(内田良平)は配下のチンピラどもに命じ、自分の傘下に加はらず勝手に営業してゐた運転手・小松(山田禅二)をボコボコにして免許証を取り上げ、ボスの樺山(嵯峨善兵)の悪事を掴む山脇(市原久照)を轢き殺すやうに命じます。
一方悪徳情報屋の佐竹(山内明)は、小松から犯行の一部始終を録音したテープで黒沼を脅し2000万円を要求。更に「山脇メモ」をネタに強請りますが、利用した女のあけみ(堀恭子)が実は黒沼の情婦で失敗、自分が好意を寄せる女・ユリ(香月美奈子)のアパートに身を寄せます。そのアパートには捜査四課の刑事・大宮(青山恭二)が住んでゐて、ギョッとする佐竹。
警察側は山脇殺害と樺山の不正融資、黒沼の悪事が重なつてゐると見て、捜査一課、二課、四課の合同捜査となり、二課の三田村部長刑事(井上昭文)が四課にやつて来ますが、彼は黒沼とは戦友同士で、ズブズブの関係に見えます。黒沼への捜査もなほざりになつてゐるやうで、この様子を見て、大宮は「あなたの下では働けない」と、辞職願を出すに至ります......
ワルの中心がお馴染み内田良平。髭を生やして迫力増加。東京つて、ヤクザが取り仕切るほど白タクが繁盛してゐたんでせうか。前半目立つのが山内明の情報屋。強請り専門のやうで、策士ぶりを披露しますが、肝心のところで間抜けぶりを見せてしまふ。利用した筈の女が実は敵の情婦だつたり、或は殺された男の娘が名を変へて接近してきてゐたり。内田を恨む高品格と組んで暗躍しますが、結局この高品が内田に自白することから瓦解が始まります。
レギュラー香月美奈子は、曙ユリと名乗つてゐましたが、実は殺された山脇の娘・山脇純子。内田には「山脇メモ」は焼いたと騙し、最後まで守り通し、最後は好意を抱いた青山恭二に託すのです。
警察側のキャラクタアで特筆すべきは井上昭文でせう。内田とズブズブになつて、これは完全に悪徳刑事ではないのかと、青山恭二が辞職願を出す程の行動。敵を欺く前にまづ見方を、を地で行つてゐます。しかしこの井上さん、好い面構へです。
ラストのドンパチは益益派手になつて、凡百の刑事ドラマみたいになつてしまひました。日活としては銃撃戦は外せないのでせうか。それよりも香月美奈子を中心とした人間ドラマを深堀して頂きたいと存じます。まあ好き好きでせうが。