シネマヴェーラ渋谷の大映女優特集「夕やけ小やけの赤とんぼ」は、母の連れ子ゆえに家庭内で居場所がないのか、黒人ハーフ少年と遊ぶうち不良の仲間入りしている渚まゆみが、盲学校で音楽に打ち込む少年達を見て心動かされ、彼らのために音楽会を開こうとする話。強引な作りですが、渚まゆみが可愛いから許す。
「夕やけ小やけの赤とんぼ」は、戦前の「風の又三郎」や「次郎物語」、戦後間もない頃の「緑の小筐」など、児童映画に定評のある島耕二の監督作ですが、前半の渚まゆみが不良として描かれる部分も、彼女が仲良くなる黒人ハーフ少年も、有効に機能しているとは言えず、黒人ハーフ少年を媒介させて盲学校生徒たちを知るという形ではなく、渚まゆみが直接盲学校生徒と触れ合う話のほうが、説得力があると思えるなど、脚本作りは甘いと言うほかありません。
さらに、脚本が甘いだけでなく、島耕二の作劇テンポも相変わらずよろしくないのですが、“新スター”とクレジットされた新人・渚まゆみは、ちょっと悲しみを湛えた眼差しが魅力的で、彼女を観ているだけでこちらは満足なのでした。ちなみに、個人的にはこの映画の10年後、「人斬り与太」二部作で渚まゆみに首ったけになりました。