青い芽の素顔

あおいめのすがお|----|----

青い芽の素顔

レビューの数

3

平均評点

63.6(8人)

観たひと

11

観たいひと

2

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 日本
製作年 1961
公開年月日 1961/5/8
上映時間 63分
製作会社 日活
配給 日活
レイティング
カラー シネスコ
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督堀池清 
脚本下代田澄夫 
原案若杉光夫 
企画大塚和 
撮影間宮義雄 
美術横尾嘉良 
音楽真鍋理一郎 
録音片桐登司美 
照明吉田協佐 
編集丹治睦夫 
スチール目黒祐司 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演吉永小百合 山中みどり
奈良岡朋子 母しげ
南寿美子 姉もも子
亀谷雅敬 弟政雄
川地民夫 高木誠
木下雅弘 竹本
山本勝 竹井
松尾嘉代 君枝
堀恭子 幸子
椎名伸枝 志津子
葵真木子 戸田芳子
中川姿子 山本竹子
杉山元 工員一
林茂朗 工員二
亀山靖博 工員山田
山田昭一 工員山本
斎藤美和 高山貴子
神山勝 客A
二木草之助 客B
村田寿男 客C
相原巨典 客一
緑川宏 客二
野村隆 客甲
時照明 客乙
山中大成 客丙
玉村駿太郎 酔客
滝口恵子 吉井百合子
高野誠二郎 百合子の父
新井麗子 百合子の母
紀原土耕 林本の番頭
川村昌之 店員吉本
菊田一郎 工員風の男
柴田新三 運転手
萩志郎 若い男
雪丘恵介 佐藤
片桐恒男 細川
大川隆 工員甲
市村博 工員乙
小沢直好 工員丙
福田文子 窓口の女
金井克子 女工員甲
清水千代子 女工員乙

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

下代田澄夫の脚本を、「少女」の堀池清が監督した青春編。「破れかぶれ」の間宮義雄が撮影を担当した。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

下町の工場地帯。山中みどりは裏町の飲み屋「ほまれ」の娘。店は母親のおしげと姉のもも子がやっていたが、みどりは弟の小学生政雄とともに呑ん平相手の商売を嫌い、玩具工場に通い、働いたお金で大学受験を夢見ている。ある日、みどりはロードショー劇場の切符売場で金を忘れて困っている大学生高木誠のために代金を払ってやったのがきっかけで誠と親しくなる。誠は金持の息子で、金を忘れたといって女を引っかけようとしたのだが、みどりの上品な美しさにひかれ、母のすすめる吉井産業の社長令嬢百合子との見合いも断わる。次の日、みどりと誠はデートし、ナイトクラブへ行った。そこでみどりは誠の学友芳子や竹子と知り合い、つい「私も女子大生です」と嘘をつく。次の日曜日、誠はみどりをドライブに誘う。みどりは女工仲間の君枝を連れて行く。美しい山中湖、富士山。君枝は大学生気取りではしゃいだが、みどりは楽しくなかった。誠が好きになっていたのだ。そんなことを知らない誠は、翌日、公園で待っていると言った。--公園では誠が待ちくたびれていた。そのころ、みどりはダンス喫茶で踊っていた。「どうせ私はあんな立派な人とはつり合わない」。家に帰ったみどりは、誠ともう逢わないと姉と弟に告げた。誠はみどりが女子大生でないことに気がついていた。玩具問屋へ品物を届ける彼女の姿を見てしまった。「でも彼女は本気でぼくを好きなんだ」。彼はみどりの家を突きとめ逢いに行った。が、みどりは、ひとり思い出の公園を涙とともに歩いていた。淋しく帰ろうとする誠、そこへ政雄が飛び出してきた。「姉ちゃんのことお願いします、姉ちゃん泣いてばかりいるんです」。次の日、二人は公園のベンチでしっかりと抱き合った。

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2013/10/14

2014/07/04

75点

映画館/東京都/ラピュタ阿佐ヶ谷 


小さな幸福の貴重さ

 ラピュタ阿佐ヶ谷の日活レア物特集「青い芽の素顔」は、友人の呟きをまるまる引用すると“家が居酒屋で、大学進学を夢見て玩具工場で女工として働く小百合ちゃんが、財閥の御曹司の川地民夫と出会い、お互いに惹かれるが、女子大生と嘘をついていた事で罪悪感が出て…という青春物。さすが原案若杉光夫だけあって、大好きな内容。「青い芽の素顔」みたいにブルジョワとプロレタリアートの恋愛だと、本人は良い奴でも、家族や友人が貧乏人に偏見があったりするけど、この映画はみんなが善人で理解力がある。最後待ち合わせ場所で小百合ちゃんと川地民夫が会う横移動のシーンでうるっときた”という映画。
 わたくしは次のように呟きました。“この手合いの小百合ものは、当時掃いて捨てるほど作られていたような気がしますが、こうした小さな幸福の何と貴重に思えることか。美しい映画でした。それにしても、この映画の数年後、都の西北に通うことになる女性が、ポン女を騙る役を演じ、実際には大学中退らしい男が、西北に通う御曹司を演じる皮肉”

2013/10/13

2013/10/17

60点

映画館/東京都/ラピュタ阿佐ヶ谷 


当時の東京が実に丁寧に描かれている

ネタバレ

 山中みどり(吉永小百合)は玩具工場の女工である。彼女の母親(奈良岡朋子)はみどりの姉(南寿美子)と「ほまれ」という飲み屋をやっているのだが,酔っぱらい相手の商売を手伝うのを嫌い,外に働きに出ている。いずれは金を貯めて,大学に通いたいと考えている。
 ある日,みどりが映画を観に行くと,切符売り場で前に並んでいた学生風の男が金がないと言い出して困っていた。彼女がその男の分まで切符を買ってあげたことがきっかけで,翌日食事に誘われ,親しくなった。彼は高木誠(川地民夫)というのだが,実は金持ちの大学生である。金がないと言えば女が引っ掛かるという友人の軽口をそのまま実行しただけだったのだが,みどりには一目惚れしてしまったのである。一方,みどりは自分が女子大生だと嘘を吐いている。「どこの女子大ですか?」「目白です」「じゃあ,日本女子大ですか」なんていう会話がある。つい吐いてしまった嘘だったのだが,あまり気分のいいものではない。誘われたドライブに女工仲間(松尾嘉代たち)を連れて行き,彼女たちも女子大生だと言うような嘘まで重ねていく。
 しかし,そのうちに,みどりは,その嘘に耐え切れなくなり,とうとうデートもすっぽかしてしまった。振られたのかな?と思う誠。ただ,どうやら誠の方はみどりの嘘には感づいていたようである。さらに,誠の友人が自分の親が経営する玩具問屋へ玩具を納入に来る彼女を見てしまう。やはり,彼女は女子大生じゃなかったのか!どうしてもあきらめられない誠はみどりの家の住所を友人に調べてもらい,会いに行く。しかし,彼女はなかなか帰って来ない。致し方なく帰ろうとする誠に,みどりの弟(亀谷雅敬)が姉のことをよろしくお願いしますという言葉をかけに追いかけて来た。うなづく誠。
 翌日は誠が大阪へ向かう日であった。いつものデートの場所でと伝言されたみどりが日比谷公園に向かうと,誠の姿がそこにあった。日比谷公園から駅方面にかけていく二人の姿で映画は終わる。
 いかにも日活的な63分の小品であるが,当時(1961年)の東京が実に丁寧に描かれている。
 みどりが勤めているのが西新井橋停留所前の玩具工場で,川向こうにはお化け煙突で有名な千住火力発電所の姿がある。一方,飲み屋をやっているみどりの家は汐留川に面している。おそらく新橋付近。みどりが西新井橋から帰宅するのに乗り込むのが東武バスで,行先表示には新橋駅の文字がある。何と,当時は新橋からバス一本だったのである。汐留川はその後埋め立てられ,高速道路となるのだが,「ほまれ」のおかみである奈良岡朋子たちが,立ち退き話をしている。「立ち退くと言ってもどこへ行けばいいんだろう?東京オリンピックなんて来なければいいのに!」東京を一気に変貌させたのが東京オリンピックであったという事実はここでも明らかである。
 玩具工場で働く若者は皆楽しそうである。工場が引けると,男の工員は女工に声をかけながら,ストリップへと繰り出す。当時の大学生の行動もよくわかる。車を持っている金持ちの大学生はバーやキャバレーに通っていたのだろう。誠たちがドライブに行く先は相模湖。当然中央高速などない時代だから,山越えのつづら折れを登って行く。相模湖ではモーターボートに乗り,持ってきた弁当を食べる。
 デートの場所は日比谷公園。噴水周りは今とあまり変わらない。
 玩具工場から吉永小百合はミゼットで蔵前の玩具問屋に玩具を配達する。ミゼットの軽快な走りが存分に観られるのも楽しい。
 何とも貴重な記録がごく普通のプログラムピクチュアにもたくさん残っているのだ。

2013/10/12

2013/10/12

52点

映画館/東京都 


悪人は出ないし貧富の差も無問題

よくある設定だが、気分良く観られるのは悪人が出てこないから。
吉永小百合は玩具工場の女工。映画館で知り合った川地は符号の御曹司。つい女子大生と嘘をついてしまう。好きになってますます嘘に嘘を重ねる。玩具店の息子が配達に来た小百合を見て、川地に小百合が女工であることを教える。この玩具店の息子が悪い奴にも描けるのだが、「彼女は純真な娘だ。遊びなら手を引け」と忠告する。また、貧富の差という設定がありながら、それが何の障害にもならない。ここに本作品の健全さ、本質がうかがえる。結局はこれから二人にそれらの問題が待ち受けているのだが、みごとに逃げ切ってハッピーエンドにしている。