とにかく物語が酷い。ムショ帰りのチンピラが襲い強姦した相手が政治家の娘だったが為に身代金を要求。政治家はスキャンダルを怖れ、極秘に事件を解決するよう警察に頼み、0課の女刑事こと杉本美樹が活躍する、というものだが、とにかくお粗末。人質の娘以外を全員、消すのを仕事とする杉本美樹の身体を張ったのか謎だらけの仕事っぷりにしても、強姦から身代金の受け渡しまで行き当たりばったりの無計画なチンピラたちにもイライラしっぱなし。映画を観ている最中、ずっと唖然というか呆れというか、とにかく不快だった。
と、物語は最低なのだが、登場人物たちの造形は見事。冒頭、杉本美樹は外交官を殺して刑務所に入れられるが、それは友人の女性を痛めつけて殺した男を裁く為。誘拐事件についても、自身の女を安売りしつつも、被害者の娘にはどこか気遣いがあるような。とんでもない展開の中、杉本美樹は何もしないで見つめているだけで、それが物語を最低にしているのだが、その何もせずに見つめる視線は、まるで男たちを、あるいは映画そのものを軽蔑しているかのような鋭さがあり、そこから湧き上がる女の怒りを雄弁に語っているようだった。なので劇中はフラストレーションが溜まるばかりだったが、映画の結末で男たちへの復讐を遂げた瞬間のカタルシスは凄まじかった。すべてはこの為だったのか、と。
またチンピラたちのリーダー格も、おそらく戦後、駐日米兵たちを相手にしたパンパンたちの子どもたちであり、そもそも強姦したのも「基地反対」と書かれたヘルメットを被る左派の男へのあてつけがあったかもしれないし、映画の後半で米兵のいる施設へいくことからも、どこかチンピラたちを生み出した背景が垣間見れるよう。このあたり本当に東映らしい。野田幸男は満映を知る世代ではないにしろ、世代を問わず東映らしさはしっかりと持っているのだな、としみじみ。
物語がお粗末で描写は抜群ときて、演出はどうだったか。見事だった。杉本美樹の赤い衣装はもちろんだが、初めてチンピラたちと接触する地下鉄の階段のショットのカッコよさや、クライマックスの吹きつける強風と舞うビラだったりは、ペキンパーの西部劇やシーゲルのカーアクションを連想させるし、助けた娘と共に太陽のハレーションの中を走るショットの美しさは、まさしく映画。映画的な魅力ある画が多かったように思う。
さて、不思議なもので劇場にいるときは不快な気持ちだったが、観終わってみれば名作を観た後のような満足感が残る。もう一度、観るのは勘弁だが、思い返せばいくらでも新たな見方を発見できそうな気がする。酷い映画だと思う。だが豊かな映画でもあるのは間違いないとも思う。