封切時に見てから、何度も繰り返して見ているが、今見ても傑作だと思う。
監督の野田幸男は当時全くのノーマーク。従って、映画も軽い気持ちで見に行ったのだが、とんでもない傑作。だが、その後見た、他の野田幸男作品はどれも大したことがなく、この作品だけが、彼のフィルモグラフィーの中で突出している奇跡的な作品。
当時、流行っていた篠原とおる(「さそり」の原作者)の漫画を原作にして、「さそり」の後を杉本美樹で狙おうという考え。(最後のテーマ曲はもろに「怨み節」とかぶっている)どんな事態になっても顔色一つ変えないクールな杉本美樹もいいが、それよりも衝撃的なのは、郷鍈治、荒木一郎、遠藤征慈(「悶絶どんでん返し」)、菅原直行、小原秀明(「前略おふくろ様」)の五人の悪党。アベックを襲って、女は強姦するわ、男は殺しちゃうわで、もうやりたい放題。中でも、荒木一郎のいつもナイフをもてあそぶ変質者風の佇まいは、最高にアナーキー(それにしても、荒木一郎という人はそれほど映画に出ているわけじゃないけれど、出る映画はかなりの確率でいい映画なのがすごい)。そして、彼らを追う警察官室田日出男も狂気がほとばしり、遠藤征慈の手を万力で締め上げるシーンは痛かった。また、ヴァンプ三原葉子の逞しい食欲とその迫力。そうした面子が揃って、政治家令嬢の争奪戦を繰り広げる。まるで、西部劇のような舞台で、舞い散る紙吹雪の中の銃撃戦は、とてもじゃないが日本映画とは思えない。
野田幸男さん、素晴らしい。