長い間、大自然の中のラブストーリーとばかり思っていたら、熊井啓らしい土着が都市化に呑み込まれる社会告発映画になっていた。『地の群れ』でのネズミの大量殺戮同様に夥しい鯉の死骸や、日本アルプスの景観を発破が木っ端微塵にする場面など、相変わらず容赦がない中、関根恵子の溌剌とした肢体の躍動感がこの映画を救っている。

熊井啓監督の社会派作品の中で、初々しい関根恵子の圧倒的な存在感が見られる傑作！
冒頭から関根恵子は、大自然の中、素っ裸で泳ぐ度胸とその綺麗なヌード場面は、女優魂あふれる場面であった。（決してイヤラシイ感じではない。）

この作品、熊井啓監督の他作品のように○○事件を扱った社会派映画ではなく、大自然の中に住む人々、そしてその大自然を破壊してレジャーランドを作ろうとする開発業者との闘いを通じて、環境破壊を告発するような映画であった。

また、関根恵子の父親として仲代達矢も素晴らしい頑固親父だが娘への愛情あふれる男らしさを見せてくれる。
その他、関根恵子の恋人役に（やはり若い）北大路欣也、村人の味方という立ち位置に居ながら開発業者との癒着姿勢も見せる大物を佐分利信が演じており、凄い俳優陣。


この映画の中で、北大路欣也は「つ〇ぼさじきに置かれているこの村を……」なるセリフを述べるが、昔から大好きな吉田拓郎の曲「♪ペニーレインでバーボンを」が発禁になっていたのを最近知ったのだが、この曲の発禁理由がその歌詞に「つ〇ぼさじき」というキーワードがあるから。
こうしたセリフを含む映画が堂々と有料チャンネルで放送されているにも拘らず、吉田拓郎の曲が発禁はやり過ぎであり、原由子の曲「♪アイラブユーはひとり言」のように放送禁止でＣＤ販売は許すのが常識ではなかろうか？
映画の「つ〇ぼさじき」というキーワードを耳にして、長々書いてしまったが、吉田拓郎の曲は再発可能な扱いにしていただきたいものである。


映画に話を戻すと、この作品、熊井啓×関根恵子×仲代達矢らによる名演が見られるなかなかの佳作であった。

（日本映画専門チャンネルの録画を鑑賞）

＜映倫Ｎｏ．１７７２５＞

開拓地に開発計画が起こり、自然保護派と開拓農民が反対するが、強引に開発計画を進める。それに関しては地元の議員？あるいは有力者（佐分利信）が裏で噛んでいるが、表面上は開拓民の味方のような振りをしている。
開拓農民の作蔵（仲代達也）は娘の春子（関根恵子）と土地を守ろうとするが借金でがんじがらめにされている。春子の恋人朝夫（北大路欣也）は実は町の有力者の兄の隠し子で有力者の跡継ぎと開拓者の仲間というジレンマに陥っている。
仲代の演技は言うまでもないが、関根恵子と北大路の表情も豊かで人間性がよく表現されている。
映画全体に開発者側の汚いやり口と開拓者の身動きの取れない様子がうまく対比されて怒りがふつふつとわき上がってくるようなできばえ。
ただし冒頭の関根恵子の全裸の水泳シーンと最後の北大路とのラブシーンはとってつけた様でストーリーそのものには必然性の無いシーンでは無いだろうか。

当時のノートより

松村禎三の音楽がいいって。
ブラームス3番第3楽章とシューベルト グレート 第2楽章を突き混ぜたようだって。
聞いてみたいね。

長野の雄大な自然と関根惠子の荒削りで素朴な美しさが光ります。そのふたつが光るので対比して描かれる闇や欲望が際立つつくりに。

日本の生活苦→満蒙に夢託すも敗戦→命からがら帰って原生林開拓するも軌道に乗らず

そして

作品で描かれた70年代のレジャー開発からバブル、さらに現代へ続く道のり

長野の負の歴史に胸が痛いです。若い2人がその後どうなったか気になって仕方ない。

北大路欣也のあの時代の暑苦しさわざとらしさは本作でも健在。仲代達矢のやり過ぎ感にまけてないかも。

レジャー施設建設のために、住んでいた土地を追われる開拓村民達の悲劇を描いた傑作。冒頭の関根恵子が湖を泳ぐシーンがとにかく美しい。仲代達矢の抑えた演技も渋くて上手いのに、この傑作が何故パッケージ化されないのか謎である。