中島貞夫のモンド映画特集第4作「セックスドキュメント エロスの女王」を観るのは、確か新文芸坐がニュープリントで上映した時以来で、荒木一郎による僅か2音のベースラインが延々繰り返される音楽が耳にこびりつく映画ですが、この長~いヤラセ場面で終わりだっけ、と呆気ない幕切れに唖然としました。
この映画で一番面白いのは、冒頭1972年の除夜の鐘が鳴らされる場面に続く、まさに激動の年だったとして総括される72年のニュースハイライトで、沖縄返還、日中国交回復、札幌五輪、日本列島改造論、水俣病などの公害、横井正一さん帰国、あさま山荘、連合赤軍、日活ロマンポルノ摘発など、まさに時代の変り目だったことが思い出されました。
1972年は、坪内祐三氏の著書「一九七二」に書かれた通り、敗戦後の日本を律していた政治的・社会的文脈が終わりを告げ、それ以降の21世紀現在にまで連なる文脈へと切り替わる節目の年だと思われますから、中島貞夫もそうした時代の変わり目を体感したのだろうと思うものの、本篇の中のエピソードとしては、巧い実例を示し得ていないと思います。
この映画は、モンド映画過去3作がそうだったように16ミリで撮られて35ミリにブローアップされている一方、一部画面の口の動きと音が合っているものの、シンクロ録音ではなく編集時にダビングしたものだと思われます。ラストの乱交場面は隠し撮りふうですが、照明やキャメラ位置からしてヤラセに違いありません。