忍ぶ川

しのぶがわ|The Long Darkness|----

忍ぶ川

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レビューの数

24

平均評点

74.1(91人)

観たひと

147

観たいひと

14

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ラブロマンス / 文芸
製作国 日本
製作年 1972
公開年月日 1972/5/25
上映時間 120分
製作会社 東宝=俳優座
配給 東宝
レイティング
カラー モノクロ/スタンダード
アスペクト比 スタンダード(1:1.37)
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督熊井啓 
脚本長谷部慶治 
熊井啓 
原作三浦哲郎 
製作佐藤正之 
椎野英之 
撮影黒田清巳 
美術木村威夫 
音楽松村禎三 
録音太田六敏 
照明岡本健一 
編集丹治光代 
助監督佐川功 
スチール岩井隆志 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演栗原小巻 志乃
加藤剛 哲郎
永田靖 哲郎の父
瀧花久子 哲郎の母
可知靖之 文哉
井川比佐志 次兄
山口果林 亜矢
片山まゆみ 美那
岩崎加根子 香代
信欣三 志乃の父
阿部百合子 志乃の母
鹿野浩四郎 
大西加代子 小夜子
木村俊恵 おかみ
滝田裕介 木村幸房

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

原作は、幻の企画といわれ映画化の話が出ては消え、やっとこのほど11年ぶりに映画化の運びとなった、三浦哲郎の同名小説、第44回芥川賞を受賞している。脚本は、長谷部慶治、監督は脚本も執筆している「地の群れ」の熊井啓、撮影は「裸の十九才」の黒田清巳がそれぞれ担当。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

哲郎と志乃は料亭“忍ぶ川”で知りあった。哲郎は“忍ぶ川”の看板娘だった志乃に、初めての合った時から惹かれ、“忍ぶ川”に通うようになった。ある夜、話が深川のことに及んだ時、志乃は、私の生まれた土地で、もう8年も行っていないと言う。哲郎は志乃を誘い、薮入りの日に深川を案内することになった。志乃は洲崎パラダイスにある射的屋の娘で、父は郭では“当り矢のせんせ”と呼ばれていが、志乃が12歳の時、戦争で一家は栃木へ移住したのだ。やがて志乃だけが、弟や妹たちをおいて東京に働きに出ていたのである。深川から帰った夜、哲郎は志乃に手紙を書いた。「今日、深川で言いそびれた私の兄弟のことを、ここに記します。私は六人兄弟の末っ子です・・・」哲郎には兄が二人、姉が三人いて、上の姉二人は自殺、長兄は失踪、次兄はしっかりもので、哲郎を大学へ入れてくれたが、3年前に自分で木材会社を設立するという名目で逐電していた。一番最初に次姉が自殺した日が、よりによって哲郎の6才の誕生日だったため、それ以来彼は誕生日を祝ったことがない。哲郎の身の上を打ち明けた手紙に、志乃からの返事が来た。「来月の誕生日には私にお祝いさせて下さい。」7月末、志乃に婚約者がいることを知らされた哲郎が志乃に問いただすと、婚約はしたけれど、気はすすまず、栃木の父も反対しているという。哲郎は志乃に、その人のことは破談にしてくれ、そして、お父さんにあんたの好みにあいそうな結婚の相手ができたと、いってやってくれと言うのだった。秋の終わり、志乃の父の容態が急変した。志乃からひと目、父に会ってくれとことづかった哲郎は、急ぎ栃木の志乃の元へ--。「いたらぬものですが、志乃のことはなにぶんよろしゅうお願い申します」といい残し志乃の父は死んだ。その年の大晦日、哲郎は志乃を連れて故郷へ帰って来た。体の悪い父、老いた母、そして目の不自由な姉、残された哲郎の家族は皆、志乃を気に入ってくれた。そうしてあくる二日、哲郎の家族だけで哲郎と志乃の結婚式があげられた。初夜。馬橇の鈴のさえた音に、二人は裸のまま、一枚の丹前にくるまり、馬橇の通りすぎるのをいつまでも見ていた……。翌朝、新婚旅行に近くの温泉へ向かう汽車の中から志乃は「見える、見える、あたしのうち!」と子供のようにはしゃぐのだった。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1973年12月下旬号

映画「忍ぶ川」をめぐる総てについての記録:終

1973年9月上旬号

映画「忍ぶ川」をめぐる総てについての記録:第17回

1973年8月下旬号

映画「忍ぶ川」をめぐる総てについての記録:第16回

1973年8月上旬号

映画「忍ぶ川」をめぐる総てについての記録:第15回

1973年7月下旬号

映画「忍ぶ川」をめぐる総てについての記録:第14回

1973年7月上旬夏の特別号

映画「忍ぶ川」をめぐる総てについての記録:第13回

1973年6月下旬号

映画「忍ぶ川」をめぐる総てについての記録:第12回

1973年6月上旬号

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1973年5月上旬号

映画「忍ぶ川」をめぐる総てについての記録:第10回

1973年4月下旬号

映画「忍ぶ川」をめぐる総てについての記録:第9回

1973年4月上旬春の特別号

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1973年3月下旬号

映画「忍ぶ川」をめぐる総てについての記録:第7回

1973年3月上旬号

映画「忍ぶ川」をめぐる総てについての記録:第6回

1973年2月下旬号

映画「忍ぶ川」をめぐる総てについての記録:第5回

1973年2月上旬決算特別号

特別グラビア 日本映画ベスト・テン:忍ぶ川/軍旗はためく下に/故郷/旅の重さ/約束/男はつらいよ・柴又慕情/海軍特別年少兵/一条さゆり・濡れた欲情/サマー・ソルジャー/白い指の戯れ

1973年1月下旬正月特別号

映画「忍ぶ川」をめぐる総てについての記録:第4回

1973年1月上旬新年特別号

映画「忍ぶ川」をめぐる総てについての記録:第3回

1972年12月下旬号

映画「忍ぶ川」をめぐる総てについての記録:第2回

DISK レコード化された「忍ぶ川」:

1972年12月上旬号

映画「忍ぶ川」をめぐる総てについての記録:第1回

1972年6月下旬号

今号の問題作:忍ぶ川

1972年5月下旬号

特別グラビア:熊井啓の「忍ぶ川」完成!

シナリオ:忍ぶ川

1972年5月上旬号

日本映画紹介:忍ぶ川

1972年4月下旬号

特別グラビア:忍ぶ川/熊井啓

1971年10月上旬秋の特別号

特別グラビア:熊井啓監督 「忍ぶ川」開始!

2021/09/10

2021/09/19

75点

選択しない 


鈴の音

ネタバレ

 三浦哲郎の私小説ふうな原作を熊井啓監督が映画化した文芸映画。不幸を背負った男女の出会いから結ばれるまでを描くストーリー自体は典型的なメロドラマ風なのだけど、そちらに傾きそうな流れを何とか堪えて文芸映画としての骨格をを持たせようとしている。感傷に流れそうなところをギリギリでこらえているというか。
 それには主演ふたりの抑制された芝居によるところが大きいと思う。哲郎役の加藤剛はそもそもが感情を表に出すようなタイプの俳優ではないし、本作では自身が語り手ともなって志乃との来し方を振り返るという構成になっているので、なおさらその立ち居振る舞いは冷静に見える。
 一方の志乃役の栗原小巻はこの人が時に見せる過剰な演技がうまいこと抑制されていて、自分がこれまで見た彼女の作品の中ではいちばん美しく見えたし、強く印象に残るものになっていた。当時話題となったらしいヌードシーンも美しく撮られていて、そこから零れるわずかなエロチシズムも心地いい。これも監督の演出の賜物であろう。
 志乃が病に倒れた父(信欣三)を哲郎ともども見舞うシーンなど典型的な泣かせのシーンなのだけれど、ここでも品を崩さない。静かな別れのシーンがむしろ観る者の感情を揺さぶる。
 志乃に婚約者がいたと知った哲郎が彼女に詰め寄るシーンで「それでヤったのか」というストレートな哲郎の問いに志乃が「ヤるもんですか」と返すやりとりも何だか微笑ましい。文芸映画らしからぬ率直さ(庶民感覚)がむしろここでは好印象だ。
 哲郎が雪深い故郷に志乃を連れ帰る終盤のシークェンスも情感のこもったいい出来だ。とくに二人を迎える老夫婦(永田靖・滝花久子)がいい味を出している。不幸続きだったふたりにようやく訪れたささやかな幸せ。それは子供らに不幸が続いたこの老夫婦にとっても待ち望んだ幸せでもあったろう。
 振り積む雪のせいで物音ひとつ聞こえない静かな夜に、まるでふたりを祝福するかのように聞こえてくる馬ぞりの鈴の音。心憎い演出だった。

2020/11/25

2020/11/26

80点

購入/DVD 


耐え忍ぶ女。

熊井啓 監督による、純愛・浅草寺・秘密・ラブロマンス。
🚋・・・🍶🥢🍺・・・🎎😥🍨🎈・・・🏮🙏🎐・・・✉️🚂🚃・・・🧶💡🐎🛷
27才で学生に戻った、哲郎(加藤剛)は料亭「忍ぶ川」の看板娘、志乃(栗原小巻)と出会う・・・。

(清楚感を振りまく、栗原小巻の代表作。ヒロイン候補に吉永小百合も上がっていたらしいが、小巻さんで正解でした。)
(時代背景は、昭和20年代の後半と思われる。貧しい日本を抜け出しかけた頃。都電、蒸気機関車、東北の旧家、町の風俗、人々の会話、暮らしぶりがよく描けている。)
(タイトルから、もっと暗い内容を想像したが、安堵したいいラストでした。)
・以下印象的台詞。
「私は生きていてもいい?」
「姉ちゃんを独りぼっちにはしないよ。」
「雪国では、寝る時は何にも着ないんだ」・・・ホントですか~。
「けなり~の~、、ハハハハハ。」

1976/01/17

2020/05/06

-点

映画館/東京都 


期待ハズレ

高く評価されているので期待して観たが、正直言って期待ハズレ。終わり方も気に入らない。

2019/07/11

2019/12/30

80点

映画館/東京都/新文芸坐 


〈死〉を超える〈生〉、〈生〉を支える〈家族〉

テーマは、ずばり、〈死〉を超える〈生〉、そして〈生〉を支える〈家族〉。三浦哲郎の原作を執念で映画化した熊井啓監督畢生の傑作と声を大にして伝えたい。

映画前半で繰り返し描かれる、哲郎と志乃それぞれの家族の不可解な死や失踪。暗く湿っぽい旧家にひっそりと住まう住人、陰鬱な雪混じりの空を舞う海鳥、冬枯れの野をゆく野辺送りの葬列……。みずからもそうした死の呪縛に囚われているとの強迫観念から、付き合いを始めてからも無条件に心を開き、互いの思いを受け入れることのできない二人。まどろっこしいまでの展開は、後半部、哲郎の故郷での結婚式を期に一変する。

家族のみのささやかな結婚式を終え、夜具にくるまってはだか同志で抱き合う哲郎と志乃。初夜の営みは、二人から〈死〉の軛を解き放つ行為であり、同時に〈生〉の力強いエネルギーを受け入れる行為に他ならない。一瞬、インサートする、祈り続ける哲郎の両親、姉の姿……。雪あかりの中、遠く聞こえてくる馬橇が響かせる鐘の音を聞きながら、窓辺に立つ二人の神々しいまでの美しさ。死の影が垂れ込める旧家に、新しい朝が訪れる。

翌日、汽車に乗って温泉に向かう二人。窓の外に広がる一面の雪景色の中に哲郎の家を見つけた志乃が叫ぶ――「私の家が見える!」。家族と満足にひとつ屋根の下で暮らすことの叶わなかった薄幸の志乃が、ついに見つけることができた〈家〉とは、これから二人が紡いでゆく〈生〉の舞台、すなわち〈家族〉の象徴なのだろう。

2017/08/02

2019/05/11

-点

映画館/東京都/新文芸坐 


エンドマークが出るのが惜しい

映像、音楽とも恐るべきアナクロニズムに貫かれた純愛物語。最初は美男美女の主役ふたりのメロドラマ調に驚きながら観ていたが、その時点でかなり心地良く、雪国での質素な婚礼から初夜に至るまでの緊張感の中で前のめりにさせる力が満ちている。というより栗原小巻があまりにも良すぎてエンドマークが出るのが何とも惜しかった。

2000年代

2019/04/16

65点

レンタル 


余情豊か

モノトーンの諧調を活かした余情豊かな情景描写は楽しめる。ただ、映画としてはそれ以上でも以下でもなく、イマイチ自分好みでない物語や配役ともあいまってのこの点数。