「日活」がロマンポルノ路線に転換する直前1971年の作品です。
監督は、「野良猫ロック」シリーズやかぐや姫のヒット曲「赤ちょうちん」
「妹」等、アウトローもの、時代背景を色濃く反映した佳作を多く
残した藤田敏八。-俳優としても渋みのある役柄を巧みに演じて
鈴木清順監督のツィゴイネルワイゼンでの大学教授役や伊丹十三監督の
たんぽぽでの歯槽膿漏を悪化させる中年男役等が印象に残っています-
この映画、レイプに始まりレイプに終わるという、不良高校生の無軌道ぶりに
終始していて、見ようによっては、女性蔑視にもとれるわけで、さらには
ストーリーもどうってことはなく、ほんと「やること」しか考えていない若い男どもの
ハチャメチャな行動を描いているだけです。盛り上がりが無くていつの間にか
ラストへいってしまいますので、サビのない音楽のような違和感を持ってしまうのですが。
夏の日の朝、早苗(テレサ野田)は、遊び人風の学生達に輪姦された後、
車から砂浜に放り出されます。バイクで通りがかった清(広瀬昌助)が早苗を
救うのですけど、早苗の姉、真紀(藤田みどり)は清を犯人と思い込み、警察に
連れ込もうとします。しかし、清が無関係だとわかると、今度は清が怒り出して、
真紀を車中で犯そうとするんですが、未遂に終わります。
清の悪友で高校を中退した健一郎(村野武範)と清は何か熱中することが
あるわけでもなく、虚無感に浸り、悶々とした日々を送っています。
そんなある日、健一郎は母親の愛人亀井(渡辺文雄)を銃で脅してヨットを強奪。
清、早苗、真紀と四人でクルージングに出ていくのですが、唐突に健一郎と清が
真紀をレイプしてしまうのです。その時、船室から早苗が涙を流しながら銃を放ち
海水が船内に流れ込んでいきます。
何だかよくわかりませんけど、70年代シラケ世代の暴力とセックスを描いた
作品らしくて、その割りには暴力もセックスもあまり臨場感が無くて、空虚に
思えてしまいます。その空虚さの中にある暴力なりセックスなり、理由無き
若者の行動を描こうとしたのかもしれませんが、はっきりしません。
日活最高の青春映画と評する向きもありますが、果たしてそこまでの作品か
どうかは。ただ、最後まで飽きもせず、特にラストの上空から波高煌めく青い海と
そこに浮かぶヨットを写しだすカメラワーク。そして、ゆっくりと流れる石川セリの
気怠い歌声には、胸が熱くなるものもあって、なかなかのものでした。
リアルタイムでこの作品を見たわけではないので、私にはむしろ、「飛び出せ!青春」の
河野先生(村野武範)と生徒役の片桐君(剛たつひと)がこの映画では同級生役で
共演していて、しかも村野武範が不良役で剛たつひとがガリ勉役ということが
どうもしっくりこなかったわけであります。