1971年製作・公開の「極楽坊主」であります。この時代は同じく経営悪化に苦しむ大映と組んだ「ダイニチ映配」による配給となつてゐて、この「ダイニチ」のロゴを見ると物悲しくなります。弱い者同士がくつついても結局弱いままで、大映は倒産、日活はロマンポルノへ舵を切るのでした。監督は武田一成、脚本は中西隆三、音楽は玉木宏樹。
「極楽坊主」とは、宍戸錠演じる破戒僧。酒は飲むしギャンブル三昧、更に女好きの絶倫坊主。籠の中で女とせくーすしながら、その振動でお寺の鐘を撞く、と云ふ罰当りな行為をしてゐます。それで和尚の由利徹に追ひ出され、師匠の寺を訪ねますが、既に師匠は死去してゐました。で、寺は荒れ放題。
跡取り息子の岡崎二朗もまたバクチに狂ふトンデモ野郎。好色な音楽教師の藤江リカに童貞を売つて以来、小遣ひ欲しさに付き合つてゐますが、本命はキャバレーで働く隅田和世。寺を継ぐ気は一切なし、そもそもお経を聞くと蕁麻疹が出ると云ふ体質だから始末が悪い。
ジョーは師匠への恩返しとして、荒れた寺を修復し、檀家が戻るやうに努力します。檀家が戻ればカネも入ると岡崎に寺を継ぐやうに説得します。当初はジョーを疑つてゐた岡崎も、次第にジョーの考へを理解するやうになりますが、悪徳僧の由利徹、ヤクザの深江章喜、藤岡重慶らが結託し、寺に眠るお宝目当てに乗つ取らんと画策します。目玉は「雪舟の水墨画」らしい。迎へ撃つジョーと岡崎は......
ロマンポルノ直前の作品と云ふ事もあつてか、お色気満載であります。十分おきくらゐに女優のハダカが登場し、ジョーが絶倫ぶりを発揮します。立派な逸物を持ち、女たち(真山知子・霜月八重子・戸部夕子・相川圭子・小早川泰子ら)は皆虜になつてしまふ。立派過ぎて自分でも気付かずに物に当つてドンドンと音がする。「何の音だ? ああ俺か」なんて。
博才もあり、腕つぷしも強い。得意技は、男の急所を握り潰すと云ふ下品なもの。「めりめりッ」なんて音がして、握つた後の自分の手の臭ひを嗅ぎ、顔を顰めると云ふ漫画的演出が笑へます。
共演は前述の岡崎・由利・深江・藤岡の他に、寺男の大谷淳が目立ちます。インチキ僧侶の芦谷雁之助、葬儀屋の榎木兵衛らもトボケタ味はひで宜しい。因みに安部徹の名がクレジットにあり、何処で出たのか分からないの意見がありますが、ラスト近くで出てゐます。メイクが派手過ぎて一寸分かりにくいですが。
キャラクタアとしてはそれなりに魅力的ですが、ジョーさんも半分ポルノみたいな作品によく出演したものです。「ハレンチ学園」シリーズにも皆勤してゐるし、付き合ひが良過ぎる感じですね。やはり日活には愛着があつたのでせうか。ちなみにポスタアの惹句は「数珠のかわりに乳房モミモミ 女のカラダに引導わたす ケタの外れたポルノ坊主!!」......!