不治の病に侵された子供と向き合う父親の苦悩
ネタバレ
妻を亡くし十一歳になる一人息子・正一(山本善郎)を持つ増子一郎(天地茂)は、技術主任として足摺岬の海中展望塔の建設のため多忙を極めている。それでも再婚を決意し家を新築する計画でいるが、生活の方も妹のユミコ(寺田路恵)に任せきりで、正一の相手をする余裕などもまったくなかった。ある時、正一が腹部にしこりのようなものがあると訴えたため、念のため病院で診てもらうが、医者からはさらに大きい病院での精密検査を薦められる。検査の結果、正一はガンに侵されており残り3か月の命であることがわかる。僅かの余命しかない息子とどう向き合うか。そしてなにができるのか。一郎の父親としての苦悩が始まる。
自分の子供の死・・それもガンによる時間的猶予が限られた死・・に直面するという極めて深刻なテーマである。人はそれをどうしのいでいけばよいのか。父親は会社に長期休暇の願いを出す。限られた時間を子供とともに過ごす。そして子供が憧れていた四国の青い海を一緒に見に行く。
しかしどのようにしても、幼くして亡くなった子供に対し必ず悔いは残る。そして亡くなった後にそれはますます深まっていくかのようにさえ見える。安手のヒューマニズムなど寄せ付けない、人間が生きていくことの重苦しさに息が詰まる思いだ。原作者・倉本聰はここでも人間の実相を直視したシナリオで我々の日常に大きな問題を投げかける。