「若者たち」の第3作にして最終作。
前作から月日が経ち、三男は出版社勤務の傍ら、夜間高校の教師をしている。四男は車のセールスマンと、兄妹全員が社会人となっている。70年安保が終結し、時代は高度成長期に入る。
本作では、末弟の末吉(松山省二)が、長兄(田中邦衛)と三男(山本圭)と正面衝突する、末吉は、沢山車を売って給料を上げることが自分の幸せにつながると信じて、その目標に向かって猛烈に働く。それはこの当時のいわゆる猛烈サラリーマンの投影である。一方、長兄は戦後の貧しい時代をそのまま引き摺り、三男は社会運動の残滓を引き摺っている。どちらもお互いの立場を理解できないし、その対立は根深い。その対立は、安保闘争が終結を迎えて、社会が安定期に入る70年代の混沌をそのまま映している。お互いが自分の立場を強く主張するディスカッションこそがこの映画の面白さだと思う。これだけのディスカッションドラマはそうはない。
ラストシーンで、雑踏の中、署名を求められる末吉の顔がクローズアップとなる、果たして、彼は署名に応ずるのか、それとも無視して立ち去るのか、それは分からないが、立ち止まり逡巡することで、彼の中に相手を理解しようとする気持ちが芽生えたことは間違いない。なかなかにいいラストシーンだと思う。
途中で、三男が公害の被害者にインタビューするところが挿入される(その記事は、編集会議でボツになるのだが)。そのインタビューは本当の被害者にインタビューしたのではないか。それくらい生々しいものだった。