ラピュタ阿佐ヶ谷のレイトショー“大映青春篇 恵子・レモンの頃”と題した関根恵子主演作特集、彼女のデビュー作「高校生ブルース」は、ほぼ同世代のわたくしにとっては高校1年生の時に公開された映画で、正直なところ馬鹿にして観る気も起きず、今の今まで観逃していましたが、いかにも男性的発想のお話でした。
原作はどうやらティーン向けの小説のようで、脚本を書いた伊藤昌洋は東宝争議の中心的人物・伊藤武郎の息子(父と東宝争議について書いた本を読んだ事があります)。凡庸な脚本だと思って観ていたら、終盤近く、妊娠中の関根が“私は産んでもいい。父親が誰かバレてもいい”と居直るあたり面白くなりました。
関根恵子が居直ると、キャラクターに増村保造映画のような図太さが出てきて、映画が面白くなりそうな気がするし、じじつそれまでクローズアップを多用するばかりで凡庸に思えた帯盛迪彦の演出も、舞台設定を美術教室の彫刻だらけの部屋に据え、ちょっと面白い画面を作りましたが、終盤の展開にはガッカリしました。
一度は居直ったかに思えた関根恵子が結局選び取った自ら流産するという道は、女の子が自分で選ぶとは到底思えぬ男の発想による解決策に思え、帯盛迪彦の限界が露呈していました。関根恵子自身は、初主演作として十分に頑張っていたとは思います。