シネマヴェーラ渋谷の大映特集「唇に賭けろ」は、この前に観た「悪魔からの勲章」と同様、「警視庁物語」の長谷川公之の脚本ですが、「警視庁~」の頃はあれほど地に足が着いたホンを書いていた長谷川と同一人物とは到底信じられない粗雑なお話で、ヒロイン江波杏子を始め、長谷川明男、平泉征、炎三四郎らにおる産業スパイ・グループが、いくつもの試行錯誤が実を結ばなかった末、同性愛者であると判明した秘書・赤座美代子にヒロイン江波が接近して一夜を共にするだけで、相手方某産業専務・千秋実の別荘が判明し、そこで呆気ないまでに入手する機密ですが、爽快感も納得感も皆無です。
この映画が公開された1970年6月の約1年半後の71年12月、大映は倒産してしまうのですが、末期大映映画の中身のお粗末さをはっきり露呈している映画でしょう。