井上梅次がソツなくまとめたひばり映画である。話の筋がどんどん読めて、殆ど読みは裏切られないで展開する。もう少し意外性を見せてくれないかとドラマを観る側としては期待をしたが予想どおり残念な結果になった。強いて予想外の展開を挙げれば、高山(林与一)が霞(ひばり)に別れ話をしたのは狂言だったというところくらいである。一瞬、新派狂言のヒネリを見たが、話は特にそれ以上には膨らまなかった。
あとはひばりと森進一の歌を楽しむことにした。「影を慕いて」などの名曲が幾つか聴けたのは、さすが二大歌手の共演映画ならではの収穫である。
北上弥太郎の実質的には最後の作品である。「月形半平太」「山を守る兄妹」等何本かコンビを組んできたひばりとの17年ぶりの共演である。