「日本女侠伝」二作目は明治末期の北海道が舞台であります。開拓といふ名の略奪侵略行為が行はれてゐた頃でせう。即ち一転して西部劇風のアクション映画に仕上つてゐます。荒唐無稽。降旗康男監督作品。脚本は笠原和夫が担当。
博労総代の松尾(小沢栄太郎)は、対立する大野(天津敏)配下に殺害されます。総代の後釜に呼ばれたのが、九州からやつて来た一人娘の松尾雪(藤純子)。一旦は総代を継ぐのを断る雪でしたが、父の遺した文書から経緯を知り受諾します。
一方大野側は源次(山城新伍)を立てる。源次は松尾殺害時に現場に居合せたため、大野に拉致され監禁されてゐました。表決は大野側5名に対し松尾側が一名理事が少なく4名しかゐません。理事長(清水元)が自ら松尾側に一票投じて、辛うじて引分、継続審議みたいになります。
その欠けた一名といふのが風見五郎(高倉健)で、かつて彼の父(徳大寺伸)は雪の父と対立して自害してゐます。開拓の手段として農業か馬喰かで争つてゐまのでした。それで五郎は恨みをもつて牧場へ戻つてきます。理事長は歓迎するが、父の仇をとつて復讐するといふ五郎の言葉に困惑するのです。かなり険悪な態度。完全に復讐モードに入り、とても友好的な雰囲気にはなりません。
しかし大野たちの嫌がらせ行為はエスカレートし、遂には警察署まで占拠する無法ぶり。余りの非道さに五郎は怒り、雪たちの側に付くのでした......
といふ事で、前作とはがらりと雰囲気が変つてゐます。馬賊芸者から馬喰へ。シリーズものとはいへ、「緋牡丹のお竜」とは違つて毎回藤純子の役名は違ひます。舞台も北九州から北海道へと変り、和風西部劇に任侠映画が絡む感じであります。
健さんは今回も主役を喰ふ存在感。しかし藤純子も負けずにドスやライフルを駆使して戦闘します。前回の芸者は踊るだけでクライマックスは健さんに任せつきりだつたので、観客が不満に思つたのでせうか。いづれにせよ、結論からいふと彼女は何を演じても絵になる、スタア女優だなと。
ワルの頭領はお馴染み天津敏。あまりのあくどさに仲間の筈の遠藤辰雄さへ諫める場面もあります。無論最後は高倉・藤のタッグに敗れ、無様に死ぬ訳ですが。
今回高倉健は死にません。総代を断り旅に出ると宣言した藤が追ひかけるのですが、この後二人がどうなるのかは分かりませんね。結ばれるといふ保証はなく、観客の想像は色々と膨らむ訳です。
やや雑なホンと一本調子の演出ですが、役者陣(石山健二郎、山本麟一、小松方正らが特に良い)の奮闘で、見られる作品になつてゐると存じます。しかし血は出過ぎですねえ。ドバドバ。