様々な暴走族グループが鎬を削る未来都市サンダーロード。
だが、警察の圧力により敵対していたグループはそれぞれに休戦協定を結び、中でも過激な武闘派として恐れられた魔墓狼死(まぼろし)のリーダー健は、グループの解散を宣告する。
この決定に納得できないハミダシ者の仁は、茂や英二、幸男、忠など数人の仲間を引き連れ暴走を繰り返す。
いつしか仁は様々なグループに敵視されるようになり、ついに巨大な連合から制裁を加えられてしまう。
そんな仁を救ったのが魔墓狼死の創始者であり、ゴリゴリの右翼団体の代表である剛だった。
剛は仁を立派な男に育てることを約束し、連合に手出しをさせないようにする。
こうして仁はお国の未来(?)のために働くことになるのだが。
とにかく細かい説明なしに観客を映像の世界に引き込む演出の巧さが際立っていた。
演者の演技は拙い部分が多いのだが、それを補って余りあるほどのエネルギーに満ちている。
このような泥臭くサイケデリックな作品はもう作られないだろう。
泉谷しげるの音楽の効果も絶大で、時代のパワーを感じさせる作品だった。
ロックで構成された作品ではあるが、剛が『君が代』を歌いながら仁の前に現れたり、盛大に軍歌が流れたりと、かなり異様なバリエーションに富んでもいる。
スーパー右翼による時代錯誤な槍の訓練シーンなど、かなりコメディに振り切った演出も面白い。
初めは弱々しかった茂が、右翼の訓練により面構えが男らしく変わっていく様も印象的だった。
しかし、それは決してプラスな印象ではない。
後半の茂からは人としての温かみや優しさが一切感じられない。
剛により洗脳されてしまったといってもいい。
一方、ずっとハミダシ者で暴れることしか知らない仁は、最後まで人間らしく足掻き続けようとする。
スーパー右翼を抜けた途端に彼は攻撃を受け、片手と片足を失う。
復讐のために武器を集めて連合を迎え撃つ仁の姿は、まるでサイボーグのようだ。
クライマックスの乱戦シーンはカオス。
最後に仁がどうなったのかは直接描かれないが、ラストカットと冒頭のシーンが繫がった時に、その答えがはっきりする。