ツィゴイネルワイゼン

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ツィゴイネルワイゼン

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レビューの数

74

平均評点

77.2(374人)

観たひと

592

観たいひと

73

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 日本
製作年 1980
公開年月日 1980/4/1
上映時間 145分
製作会社 シネマ・プラセット
配給 その他
レイティング 一般映画
カラー カラー/スタンダード
アスペクト比 スタンダード(1:1.37)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督鈴木清順 
脚本田中陽造 
企画伊東謙二 
製作荒戸源次郎 
撮影永塚一栄 
美術木村威夫 
多田佳人 
音楽河内紀 
録音岩田広一 
照明大西美津男 
編集神谷信武 
助監督山田純生 
スチール荒木経惟 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演原田芳雄 中砂糺
大谷直子 中砂園
大谷直子 小稲
真喜志きさ子 妙子
麿赤児 先達
樹木希林 キミ
木村有希 盲目の若い女
玉寄長政 盲目の若い男
佐々木すみ江 宿の女中
夢村四郎 青地家の書生
米倉ゆき 豊子
江の島るび 女給
紅沢ひかる 看護婦
渡辺忠臣 盲目のこども
間崇史 盲目のこども
小田美知 おひさ
中沢青六 漁師
内山信子 女達
堀妙子 女達
石井まさみ 女達
川平京子 女達
山谷初男 巡査
相倉久人 青地家の来客
玉川伊佐男 甘木医師
大楠道代 青地周子
藤田敏八 青地豊二郎

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

特設映画館を作って各地で映画を上映して回るという日本映画の新しい形を目指すことで注目を集めるシネマ・プラセットの第一回作品で、最初の公開は東京タワーの駐車場に作られたドーム型特設劇場で行われた。昭和初期、一枚の奇妙なSP盤に取り憑かれた二組の男女と一人の女を描く。脚本は「おんなの細道 濡れた海峡」の田中陽造、監督は「悲愁物語」の鈴木清順、撮影は「殺しの烙印」の永塚一栄がそれぞれ担当。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

ドイツ語学者、青地豊二郎と友人の中砂糺の二人が海辺の町を旅していた。二人の周囲を、老人と若い男女二人の盲目の乞食が通り過ぎる。老人と若い女は夫婦で、若い男は弟子だそうだ。青地と中砂は宿をとると、小稲という芸者を呼んだ。中砂は旅を続け、青地は湘南の家に戻る。歳月が流れ、青地のもとへ中砂の結婚の知らせが届いた。中砂家を訪れた青地は、新妻、園を見て驚かされた。彼女は、あの旅で呼んだ芸者の小稲と瓜二つなのである。その晩、青地は作曲家サラサーテが自ら演奏している一九〇四年盤の「ツィゴイネルワイゼン」のレコードを中砂に聴かされた。この盤には演奏者のサラサーテが伴奏者に喋っているのがそのまま録音されている珍品だそうだ。中砂は青地にその話の内容を訊ねるが、青地にも、それは理解出来なかった。中砂は再び旅に出る。その間に、妻の園は豊子という女の子を産んだ。中砂は旅の間、しばしば青地家を訪ね、青地の留守のときも、妻・周子と談笑していく。そして、周子の妹で入院中の妙子を見舞うこともある。ある日、青地に、中砂から、園の死とうばを雇ったという報せが伝えられた。中砂家を訪れた青地は、うばを見てまたしても驚かされた。うばは死んだ園にソックリなのだ。そう、何と彼女は、あの芸者の小稲だった。その晩は昔を想い出し、三人は愉快に飲んだ。中砂は三人の盲目の乞食の話などをする。数日後、中砂は旅に出た。そして暫くすると、麻酔薬のようなものを吸い過ぎて、中砂が旅の途中で事故死したという連絡が入った。その後、中砂家と青地家の交流も途絶えがちになっていく。ある晩、小稲が青地を訪ね、生前に中砂が貸した本を返して欲しいと言う。二~三日すると、また小稲が別に貸した本を返して欲しいとやって来た。それらの書名は難解なドイツ語の原書で、青地は芸者あがりの小稲が何故そんな本の名をスラスラ読めるのが訝しがった。そして二~三日するとまた彼女がやって来て、「ツィゴイネルワイゼン」のレコードを返して欲しいと言う。青地はそれを借りた記憶はなかった。小稲が帰ったあと、周子が中砂からそのレコードを借りて穏していたことが分り、数日後、青地はそれを持って小稲を訪ねた。そして、どうして本を貸していたのが分ったのかを訊ねた。それは、豊子が夢の中で中砂と話すときに出て来たという。中砂を憶えていない筈の豊子が毎夜彼と話をするという。家を出た青地は豊子に出会った。「おじさんいらっしゃい、生きている人間は本当は死んでいて、死んでいる人が生きているのよ。おとうさんが待ってるわ、早く、早く……」と青地を迎える……。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2019年1月上旬特別号

巻頭特集 キネマ旬報創刊100年特別企画 第4弾 1980年代日本映画ベスト・テン:ベスト15グラビア解説

2012年1月下旬号

UPCOMING 新作紹介:鈴木清順監督“浪漫三部作”「ツィゴイネルワイゼン」

2011年9月下旬特別号

特別企画 アウトサイドを駆け抜ける原田芳雄 1968-2011:疾走の軌跡(フィルモグラフィー) 映画作家は語る 「反逆のメロディ」澤田幸弘監督、「オレンジロード急行」大森一樹監督、「ツィゴイネルワイゼン」鈴木清順監督、「生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言」森崎東監督、「どついたるねん」阪本順治監督、「寝盗られ宗介」若松孝二監督、「鬼火」望月六郎監督、「歩いても 歩いても」是枝裕和監督

1981年2月下旬決算特別号

特別カラー・グラビア:日本映画作品賞 「ツィゴイネルワイゼン」

1980年6月上旬号

日本映画紹介:ツィゴイネルワイゼン

1980年5月下旬号

グラビア:ツィゴイネルワイゼン

日本映画批評:ツィゴイネルワイゼン

2024/03/08

2024/03/08

83点

テレビ/有料放送/日本映画専門チャンネル 

備忘メモ:
生と死を描いているのか、現実と夢か、はたまた、正気と狂気か。それとも、前者と後者の3つづつをごっちゃ混ぜにして、観客に提示しているのか?
後者の世界に移った時の女優二人が妖艶過ぎる、これが描きたかったのか、と思ってしまう。それに、妹も絡む。後者へ誘うのは、常に原田芳雄。彼は、鎌倉にいるか、放浪の旅に出るか。藤田敏八だけが、前者の世界に取り残される。でも、ラストで遂に誘われる。豊子は生きていたのだろうか?最初から、、、
鎌倉は、前者と後者の境界線な雰囲気を醸し出す。
大正という時代も。豪奢な生活と貧困な生活(目が見えない旅芸人)。豪奢な生活の中にも、表と裏、建前と本音、つまんない日常と魅惑的な別世界。

戦争に勝ち続け、大東亜戦争に邁進する狭間のほんの一瞬の大正の期間、、、

2024/01/20

2024/03/06

84点

映画館/茨城県/あまや座 


幻想譚

ネタバレ

士官学校の教授と無頼の友人と、彼らの妻、後妻との関係を幻想的に描いてゆく。
鈴木清順監督。田中陽造脚本。4Kデジタル完全修復版。1980年。

冒頭は列車。ウィスキーを飲み、本を読むインテリの男、青地。その眼差しの先に、握り飯を頬張る若い女と彼女に漬物を与える年寄り、その通路でしゃがみしゃっくりでもするかのような奇妙な声をあげる若い男。インテリがウィスキーの入った水筒のキャップを落とした音に反応する三人。盲目だ。

この奇妙な冒頭。鈴木清順の作品は、人物造形とその言動に形式化されたモディファイが施され、リアルさと一線を画した世界を描き出す。
転じた海岸のシークエンスは、数十人の人々の群れが右往左往しつつ、トウモロコシを頬張る長髪の男、中砂を挟み込む。溺死した女をめぐって、男が下手人として疑われている。

ここから、青地と中砂の男二人の食と性と死がほぼ幻想譚として描かれる。彼らに関わるのが、小稲という芸者。そして、小稲にうりふたつの女、園。青地の妻、周子。義妹、妙子。
男女の関係が重なりあって絡み合う。
この本編の幻想譚の合間に盲目の芸人一行三人の旅が「滑稽物」として挟まれる、主人公男女に対する合わせ鏡であり、富裕という駄肉を削ぎ取った彼らの本質なのだと示しているようだ。

終盤は、誰が生きているのか、死んでいるのか、混然となってくる。幻想の極致に達して、青地の死を暗示して、ぷつんと終わる。

ツィゴイネルワイゼンのレコードのエピソードが語られ、意味不明の声というモチーフが、物語に点在し、幻想譚の違和感を増幅し、終盤はそのレコード自体が青地と周子と中砂と小稲の因縁の印となり、小稲と娘富子により青地の死出へ誘うチケットともなる。

ひたすら幻惑されて、白日夢として楽しむ。奇妙な時間を過ごした。
こういう経験は、これまで、ほぼ無い。大林宜彦監督の晩年の作品にもあった感覚だが、鈴木清順監督のそれは、メッセージ性を極力排除し、極めて個人的な情感の遊びとしての幻を出現することに注力している。
が、この個人的という括りが実はとても政治的なメッセージではある。

2024/02/23

2024/02/23

72点

映画館 


見んでええかも言うてたけど、やっぱ見て良かったわ。陽炎座よりわかりやすく感じたのは、陽炎座で楽しみ方がわかったからかな。しかしこの監督の映画に出てくる小豆洗いみたいなSEはほんと印象に残るなー。
破滅型の粗暴漢、中砂と、生真面目なドイツ語教授の青池の友情と、彼らを取り巻く女の絡んだ不思議な関係。この中砂、本当にまともに付き合っちゃいけない人間なんだけど魅力的なんでしょうねえ。皆が彼に惹かれて壊れていく。そして彼は壊すだけ壊して先に消えてしまう。
残された皆が少しずつ崩れるように中砂の幻影に振り回されて壊れていく中で、青池の妻周子だけひとりびくともしないのつえーなー……。彼女は彼女で奔放で、どの男にも執着してないというか刹那的に楽しんでいる感はありますが。「アンダーグラウンド」のナタリヤみたいな女。
ナタリヤと違ってやりおおせて、報いは受けないからさらに強いのだけど…。
彼女は出てくるたびひたすら豪華な何かを食べているのが印象的ですね。ある種の野性味というか、理性や良識に囚われてない印象を受ける。
そして中砂の娘の豊子が…演技が、美味いな~! 絶妙に不気味な子供を体現してる…。中砂パパは多分きっと君のこと、全然微塵も興味を持っていなかったろうに、夢に見てのめり込むほど浸食されてかわいそうだね…。大人は皆、君の後ろのパパの影法師しか見てないしね…。
でも、その不気味さはもうちょっと味わいたかったなあ。ラストが結構呆気なかったので寂しい。あと、盲人の門付け3人組が悲惨なのにコミカルでちょっと清涼感あった。輪廻したっぽい子供の3人は痛々しかったけど…。
大分迷ってたけどやっぱり見ておいて良かったなあ。面白かった。陽炎座より入りやすかったかもしれん。でもほんとにこれで満足したから、もう三部作の最後の「夢二」は行かんでいいでしょ。
中砂のおうちがめちゃくちゃ素敵な場所にあったので、叶うなら聖地巡礼したい。

2023/12/10

2024/01/07

73点

テレビ/有料放送/日本映画専門チャンネル 


もう一度見なくては

何か夢のようで、もう一度見なければ良く判らない映画。確かにムーディーであり、ノスタルジーな映像であるが、どんな物語であるかは判然としない。俳優はそれぞれが良い味。

2023/12/06

2024/01/03

70点

映画館/宮城県/フォーラム仙台 


藤田敏八監督はどんな気持ちで演じていたんだろう

 1980年の作品。4Kデジタル修復版を「SEIJUN RETURNS in 4K」で鑑賞。内田百閒の短編小説「サラサーテの盤」を原案とした作品。士官学校独逸語教授の青地は海辺の町への旅で友人で元学者の中砂と合流する。そこで芸者小稲と出会い3人連れの盲目の旅芸人たちを眺める。中砂はそのまま旅芸人たちを追っかけ青地と別れる。後日中砂が結婚したという知らせを受け青地が訪れると妻の園は小稲と瓜二つだった。中砂が持っているサラサーテのツィゴイネルワイゼンのレコードを聴かされ、途中に入っているサラサーテ自身の声の聞き取りを頼まれるが青地にも聞き取れなかった。中砂は結婚後も気ままに旅を繰り返し小稲との関係も続けていた。中砂夫妻の間に娘の豊子が生まれるが園はスペイン風邪で亡くなってしまう。青地が中砂を訪れると豊子の乳母として中砂と再婚した小稲がいた。また青地は妻周子の妹妙子から、周子と中砂が見舞いに来た際の二人の様子から二人が関係していると聞かされる。その後中砂は旅先で麻酔薬の過剰投与で死んでしまう。それから5年、小稲は豊子を連れて青地の家を訪れては、中砂が貸して忘れていた本を返すよう求める。普通の人ならわからないようなドイツ語のタイトルは、豊子が中砂の霊と会話から青地のところへあると語ったという。青地は豊子から中砂が生前約束していた骨をくれといい、生きている者は本当は死んでいて、死んでいるものが生きているのだというのだった。青地逃げ出すが、その先の海辺で白菊を飾った船で豊子が待っているのだった。
 昔々に観た時よりはちょっとはわかりやすかったかな。小稲とそっくりの園と結婚し、園の死後小稲と結婚するとか、三人の盲旅芸人の話とかコメディかと思う部分もあれば、中砂と周子のエロチックな描写もあり、さらには豊子と中砂の霊との会話のようなオカルトもあるかなり盛沢山なお話なんだけど、現実と非現実の境目がないまるで絵のような映像で見せてくる鈴木清順の映画でした。でもちょっと長い。

2023/12/08

2023/12/09

80点

映画館/千葉県/キネマ旬報シアター(旧TKPシアター柏) 


どこまでが現実でどこまでが幻想かの面白さ

清順監督生誕100年の今年に日活時代のプログラムピクチャーを何本か観る事が出来たのはうれしい出来事でした。
日活以降の代表作である本作を実に数十年ぶりに鑑賞する。当時としては画期的なドーム形態の映画館での公開方法やその年の映画賞を独占するなど地方に住む映画小僧には羨ましかったことを懐かしく思い出す。
そして改めてこの映画を観ると隅々まで清順美学に貫かれたのっぺらぼうの怪談映画(本人談)の傑作である。主演の4人の俳優の怪演ぶりや(映画監督が本業の藤田敏八だけがまとも)美術、撮影、そして田中陽造の脚本素晴らしい。