相変わらずストーリーが雑だけど、倉田の奮闘で10点増やした
熱海城でロケした敵のアジトである奇巖城の各階にいる武道家と闘うという設定は「死亡遊戯」のぱくりである。東宝東和が「ドラゴン危機一発」と「ドラゴン怒りの鉄拳」を配給したので、当然残りの「ドラゴンへの道」も・・・ということになっていたのだが、そこへ東映洋画部(当時は東映は外国映画も配給していたのだった。でも洋画といっているけど、ブルース・リー映画は洋画じゃないでしょ、と突っ込みを入れられるが)が入り込んできた。製作会社のゴールデン・ハーベストは東宝東和にも東映にも上映権を売ったのでもめごとになった。この辺の映画業界のうさん臭さがこれまた外部のやさぐれ映画ファンにはそこがいいんじゃない、と思ったりする。どうせ他人事だからそういう業界のもめごとも野次馬根性で面白がるのである。
東映は「東京―ソウルーバンコク 実録麻薬地帯」のバンコクロケで香港に立ち寄りゴールデン・ハーベストと懇意になる。そのとき「ドラゴン怒りの鉄拳」の上映権を買わないかと言われたそうで、結局は東映が「ドラゴンへの道」の配給権を獲得する。その時にゴールデン・ハーベストからブルース・リーの未完の映画があるという話を聞き、そのプロットをパクリ・・・じゃなかった、知恵を拝借したわけである。それなら後に「死亡遊戯」は一本の映画として完成されて公開するが、これを東映がやればよかったんじゃないかなあと思ったが、この時はそんな気持ちは起こらなかったようだ。
が、「死亡遊戯」風に創ることに決めたが、ラスボスに強烈な敵を、ということでベンガル虎との対決になった。この虎さんは芸名もあるようで、動物タレントだね。おとなしい虎というが、いつ野性の血に目覚めて暴れるかもしれないから、虎とからむのは非情に危険である。それが倉田保昭がベンガル虎に組み付いているのにはびっくりした。アップの場面で、ぬいぐるみの虎と格闘ということを考えていたのに、物凄いことをしたものである。命を失ったり重傷を負うという大事にいたらなくてよかった。だが、倉田の右手の甲に虎の爪痕が残ってしまうという怪我をしている。
でも倉田のこの奮闘ぶりよりも驚くのは、奇巖城が燃えることだ。勢いよく燃えている場面はもちろんセットだろうが、倉田たちが遠くから燃えている奇巖城の内部に火が燃えているのが見られる。当然、こんな撮影を許可はしないだろうから、黙ってやっていたんだろうなあ。これも火事にならなくて良かったものの、この蛮勇がもの凄い。1970年代までの映画はコンプライアンスとかなんかよりも映画を面白く見せるのが優先だったのだなあ、と燃える奇巖城(熱海城)のラストを観て思うのだった。