大地の子守歌

だいちのこもりうた|Lullaby of the Good Earth|----

大地の子守歌

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レビューの数

23

平均評点

74.3(116人)

観たひと

176

観たいひと

21

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 日本
製作年 1976
公開年月日 1976/6/12
上映時間 111分
製作会社 行動社=木村プロ
配給 松竹
レイティング 一般映画
カラー カラー/スタンダード
アスペクト比 スタンダード(1:1.37)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声 モノラル

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督増村保造 
脚本白坂依志夫 
原作素九鬼子 
製作藤井浩明 
木村元保 
撮影中川芳久 
美術間野重雄 
音楽竹村次郎 
録音太田六敏 
宮下光威 
照明福富精治 
編集中静達治 
助監督近藤明男 
スチル上村正樹 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演原田美枝子 りん
佐藤佑介 正平
賀原夏子 ばば
灰地順 茂太郎
堀井永子 さだ
中川三穂子 あさ
千葉裕子 はる
渡部真美子 みつ
野崎明美 きみ
木村元 佐吉
山本廉 源蔵
加藤茂雄 清助
今井和雄 医者
由起艶子 佐吉の妻
岡田英次 伝導師
梶芽衣子 若い女
田中絹代 農婦

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

13歳にして売春宿に売られた少女が、苛酷な運命に耐え生き続ける姿を描く。脚本は「動脈列島」の白坂依志夫、監督も同作の増村保造、撮影は中川芳久がそれぞれ担当。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

秋の四国路の野山に、美しい鈴の音がこだまする。山道を踏みしめていく幼いお遍路の瞳はつぶらだが盲目であった。少女の名はりんという。彼女は四国の山奥で、ばばと二人で野性の子として暮していたが、ばばの死後、瀬戸内海のみたらい島に売られた。りんが13歳の時だった。島でりんを待っていたのは売春という地獄だった。近い将来、りんも春を売る女にされてしまう。彼女は反抗し続け、苦しい時はばばがよく歌った子守唄を歌った。この島では陸地での売春と別に「おちょろ舟」を漕ぎ出して沖に停泊する船での売春があった。りんはおちょろ舟の漕ぎ手を志願した。舟さえ漕げれば、いつの日か島を脱出できると考えたからだ。が、やがて初潮を迎えたりんは、客をとらされた。島で知り合った少年との淡い恋も散った。りんは狂ったように働きつづけた。その結果、視神経を犯されてしまった。それでも、生きる、という望みを捨てなかった。負けるものか、という闘魂がりんの心を支えていた。そんなりんに同情した伝導師が、りんを島から逃がそうと舟に乗せた。四国へ逃げのびてお遍路になれ、という男に向かって、りんは帯をといた。生まれたままの姿で、りんは男にとも、天にとも、海にとも解らぬまま、汗と涙で汚れた手を合わせた。「うちはただでお金をもらうことはできまへん。どうぞ、うちを好きにしておくれまへ。この恩は、一生、忘れはせんけんな!盲のおりんのこの気持をうけとっておくれまへ」……。朝焼けの四国路を幼いお遍路が行く。りんは夜露のおりた土に顔をこすりつける。いっぱいにひらいた瞳で、大地の底まで見通そうと一心に目をこらす。やがて、土の下から声が上ってくる。「おりん、おりん」それは、ばばの声であり、大地の声であり、神の声であり、また、浄化されたりん自身の声でもあった。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2023/03/01

2023/03/01

88点

VOD/GyaO!/レンタル/スマホ 


激しい女性の生きざまを描いた名作

原田美枝子の初期の代表作で、青春の殺人者と同じ年度で、私が高一のときだ。次代背景が昭和初期で、野生的で激しい女性を見事に原田美枝子が演じ、貧困な地方での生きざまを赤裸々に描いて感動作品に仕上がっている。見応え充分な迫力ある作品に圧倒された。1976年キネマ旬報ベストテン第3位

2023/02/10

2023/02/10

78点

VOD/GyaO! 


原田美枝子の痛烈な個性

 当時17歳の原田美枝子がみずみずしくも痛烈な個性を放っている。昭和初期、13歳で女郎屋に売られ、お遍路となった16歳までのりんを体当たりで演じている。とにかく気性が荒く、感情の起伏が激しい。負けん気が強く、強情で、気に入らなければ手を上げる。四国の山奥で老婆に育てられ、人を信じるなと教えられたため、人を見ると敵か味方かの色分けするのが癖になっているようだ。
 初潮を迎え、客を取らされるようになるが、幼さが残る顏とは裏腹に、豊満な肉体が何ともアンバランスでエロティックだ。上半身裸にされせっかんされるSMまがいのシーンもあり、まさにからだを張っている。若くしてたくましい女優魂の持ち主だ。
 お遍路となり、たったひとりで巡礼の旅を続ける身となったが、彼女の心に救いはあるのだろうか。観る者に問いているようでもある。

2023/02/06

2023/02/07

95点

VOD/GyaO! 


思い出

昨年瀬戸内島巡りの旅行をし、12島目の大崎下島で重要伝統的建造物群保存地区御手洗を散策しながらこの映画を思い出していた。
本日録画していた『新日本風土記 選「北前船の旅人たち」』を見ていたら御手洗を紹介していた。
そこでWEB検索をしたところ、GYAO無料配信を知り早速鑑賞、封切り以来約半世紀ぶりであったが、冒頭の田中絹代、そして原田美枝子の若さ・おちょろ舟・よいしょのかけ声・・・が懐かしく甦ってきた。
シナリオ・台詞も素晴らしく、頻繁な宣伝がなく、映画館の大画面で見たら100点だったかも、ちょっと残念。
ブルーリボン賞作品賞、キネマ旬報賞主演女優賞等々に納得。

2022/03/19

2022/03/19

80点

VOD/GyaO! 


性による聖なる運動

お遍路さんは、ちょっと食べきれないほどのデカいおにぎりを渡され当惑もしていない。うさぎを手に持った女おりん(原田美枝子)が山道を駆けて家に着いたところ、ババア(賀原夏子)はどうもコタツにあたったまま死んでしまったらしい。ババアの声がどこからか聞こえてくる。ババアの死体を見た男(山本廉)、おりんに棒でぶっ叩かれる。石柱には指差しの案内が浮き彫りにされている。石鎚山の麓でウサギの汁が煮られている。ビンビや麦の飯が語られ、御手洗という島が示され、海が志される。おりんは石と呼ばれ、石なごをお手玉のようにして戯れる。洗濯、掃除、肩叩き、姉さんたちの支度もしながら、富田屋の上客にバケツで水をぶっかける。おちょろ船を漕ぐこと(ちょろおし)をおりんは旦那(灰地順)に願い出る。船は揺れている。不動明王の像が見えている。豪雨の中、おりんは「ババア」と唱えながら船を漕いでいる。おりんはひしゃくを振るい、暴力に訴えて出る。あんころ餅、みかんが見え、魚は男に投げられて三匹、四匹と海に返されていく。おりんは三度折檻されて、血塗れになっている。棒で突かれ、足蹴にされて、さらに抱かれる。佐吉(木村元)を殺しかけ、酒をあおる。膳の椀を投げ割り、長崎土産のガラスの人形を叩き割り、土を食って、土を撫でている。ラザロ丸の牧師(岡田英次)は、一升瓶をあおり、おりんに福音を授けようとしている。
昭和10年、目の見えなくなったおりんは、それでも「見える」と言う。おりんは櫛けずりながら、甘茶に誘われる。停滞していたおりんは再び動き出す。おりんは牧師に担がれ、松の中を運び出されていく。船はまた揺れている。鈴(りん)が鳴っている。秋の虫の音がしている。炎の中に業がフラッシュバックしている。またしてもババアの声が聞こえ、牧師の声がして、全ての声が重なっていく。
おりんの運動は悲しくもあるが、心地よくもある。それは野生によって文明を批判している。女郎が文明的な制度の端緒にあるとすれば、おりんの運動によるぶち壊しは、まずそこから手始めに、身体的に批評されていくのである。

2022/03/16

2022/03/16

72点

VOD/GyaO! 


自然児の流転

38年ぶりの再見。
当時ヒロインが初潮になって戸惑い途方に暮れたシーンが妙に記憶に残っている。
原田美枝子はやや一本調子になりながらも、彼女なりにヒロイン像を描くことの必死さが伝わってくる。
お遍路しながら13歳から置屋に売られた過去を回想する形式をとる。
教育もろくすっぽ受けておらず、拾って育ててくれたおばあの言うことを聞いて育ったヒロインは、決して屈服しない自立的な強い意志をもつヒロインが昭和9年、人に騙され利用されついには失明し、牧師によって島から解放されるまでの過酷な少女の人生を増村監督の激烈なタッチで描かれる。
当時も今も真の優しさを彼女が感じたことで、彼女が救われることを祈るのみだ。
娘を持つ身となると思入れがだいぶ異なるのを感じた。

2022/02/27

2022/03/01

80点

VOD/GyaO!/レンタル/PC 


山で育った少女が島の売春宿に売られて過酷な体験をする、ある意味「アルプスの少女ハイジ」の暗黒版。
13歳ながら、どんな過酷な状況にあっても、どんなに回りの大人に責められようと、決して自分を曲げず「バカたれが」と反発する主人公おりんのキャラがとにかくすごい。
女衒のどんな華やかな話にも騙されなかったおりんが、海を見たいという一点で話に乗ってしまうのが子供らしくて面白い。
反抗的なおりんに、男が数人がかりで折檻するのが凄まじい。
血みどろになりながら、その痛みに無表情で耐えるおりん。
島の少年との、淡い、しかも残酷な心のふれあいが印象的。
ついに女郎になるが、直接男に買われる描写がないのが救い。
女衒の男のキャラも面白い。自分が最悪のことをしているが、一見とても優しく、自分はいい事をしていると信じ込んでいるようなのだ。
だが、おりんによってその欺瞞が露わになり、耐えられず自殺する。
突然牧師に助けられるおりん。
お遍路になるが、火に包まれ過去の体験を悪夢に見る。
その後土の中から自分を呼ぶ大勢の声を聞く。それが、おりんの存在を全肯定しているようで、とても心に響いた。