1974年春・東宝チャンピオンまつりプログラムの一つ。同時上映は「ゴジラ対メカゴジラ」「ハロー!フィンガー5」「新造人間キャシャーン」「アルプスの少女ハイジ」「侍ジャイアンツ」。
ある夜、パトロール中の警官二人が「捨て子塚」の怪物に襲はれ犠牲になります。この事件を受け、電話でたたき起こされる東光太郎(篠田三郎)。殺人事件なら警察だろ、夜勤明けくらゐ寝かせてくれよ!と怒りますがしつこい再度の電話に出動します。但し私服。その時赤い花を抱へる少女・かなえ(下野照美)を見かけます。彼女は皆に花を配つてゐて、光太郎の下宿先・白鳥家の少年・健一(斎藤信也)も貰ひます。
白鳥家ではさおり(あさかまゆみ)が不在で、なぜかZATの森山隊員(松谷紀代子)が手伝ひに来てゐました。その夜、この花は捨て子塚から伸びてきた蔦と合体して就寝中の森山を襲ふ......! この蔦は怪獣バサラの一部であつたのです。
第11話「血を吸う花は少女の精」のブロウアップ版であります。タロウにしてはおちやらけ度が小さく、真面目な一作(あくまでもタロウにしては、ですが)。実母に捨てられた少女の、社会に対する復讐心が怪獣に利用されたと申せませうか。しかし母親個人ではなく、さうさせた社会全体に恨みを持つのは子供らしくない。誰かに吹き込まれたのかも知れませんなあ。
里親(万里昌代)も自分本位の人物で、本心から子供の事を考へてゐないところに絶望を感じます。万里昌代さんは嘗ては座頭市のヒロインになるなど、結構な存在感があつた女優ですが、ここではあまり好い役ではありません。ちと可哀想。
ラストシーン、怪獣が退治された後も、墓場で花を摘む事を止めない少女に、本質的な問題は何も解決されてゐないことが示され、苦い幕切れとなりました。
個人的には、松谷紀代子演じる森山隊員の出番が多いのが嬉しい一作であります。