主演の前川麻子がいい。とびきりの美少女ではないし、胸だって小さい。地方都市のどこにでもいそうな女子高生。
青空に飛んでいく風船と、落下する少女の切り返しにハッとさせられる。このシーンから映画の雰囲気ががらりと変わる。死にそびれこの世につなぎとめられた少女は、ダメ男と堕ちていく日々を選ぶ。ダメ男の一人、河原さぶの怪演も特筆ものだが、ダメ男はダメ男なりにきちんと描かれている。
娘を開放する条件に体をダメ男たちに自由にさせる母。「そっちを向いていなさい」という母の願いに顔を背け、怒りと悲しみで冷蔵庫の中に籠る少女。冷蔵庫は体内回帰願望の象徴、子宮の暗喩に他ならない。そう、母の凌辱シーンという陣痛を経て、少女は子宮から再度、この世界に生まれ落ちるのだ。
映画の最初と最後で、スクリーンいっぱいに広がる海。流れる「ひこうき雲」(ただしユーミンのカバー)は同じでも、冒頭でテトラポットの上でじゃれあっていた三人は、ラストでは主人公一人になっている。死と再生――生まれ変わった少女は、何かを吹っ切ったように街を行く。
危うい青春を描いたロマンポルノ後期の名作。