丸山健二の同名小説が原作。
森田芳光に純文学は肌が合わないようで、換骨奪胎どころか骨なし作品にしてしまった感がある。
広角カメラのピンボール台から始まり、パソコン画面に「組織に不要な人間を排除せよ」というメッセージが映し出される。次いで、函館近郊の山荘に舞台は移り、管理人(杉浦直樹)とテロリスト(沢田研二)、派遣コンパニオン(樋口可南子)の奇妙な共同生活が続いた後、標的は宗教団体トップの会長だったというサスペンス。
派遣コンパニオンの選考がコンピュータだったことから、不要な人間を決定したのもコンピュータということになるが、パソコンを操作する謎の少年も登場して、無機質なコンピュータ社会の到来を描く、近未来の寓話を意図しているようにも見える。
そうしたメタファーを散りばめている割には道具立てが稚拙で、豪華な別荘に豪華な食事、宗教団体に支配される町や警察など漫画的で、出来の悪いファンタジーでしかない。
ニヒルでストイックという設定のテロリストに至っては、沢田の演技力不足か、ゴルゴ13の贋者のようなただのカッコつけで、毎日の筋トレはギャグに近い。そもそも大金で雇われたプロのテロリストの割には、殺害方法は群衆に紛れての刺殺という、ゴルゴもびっくりの一時代前の暗殺方法。テロに失敗しての自決も自爆テロと変わらず、悲劇性が感じられない。
寡黙なテロリストに惹かれていく管理人と派遣コンパニオンの奇妙な関係を描きたかったのだろうが、記号化され過ぎていて空振り。ドット絵で示される作戦シミュレーションも、技術的にではなく内容的にアマチュアの発想レベルのゲーム画面でしかないのも安っぽい。
海中でのテロリストと男(岸部一徳)の争いも、車のバックの衝突も、それを追いかける車も、唐突でストーリーに脈絡がなく、宗教組織、テロリストの実家(?)を含め、テロリストの人間像が描けていない意味不明な作品。