ヴィデオテープのたたき売りでワゴンセールで見つけて、これはレンタル店でも置いていない貴重なものだと購入。その割には買ってから数年たってからの観賞。カビがはえて観られない状態にならなくて良かった。
血のつながらないアカの他人同士が疑似家族を形成するが、最後には本物の家族の繋がりを築くという話。
この映画が作られた頃は核家族が進んで、祖父母と同居という形が崩れて、また祖父母の方でも迷惑かけたくないから独り暮らしをするといった空気になってしまったころではなかったか。
そんな中で松竹らしく心温まる話ではあるが、この疑似家族に入ろうとして、入れない川谷拓三の存在が作者のこの映画のテーマとして描きたかったのではないか。
彼は当初は同僚の中村雅敏に息子になってくれという老人有島一郎の金を狙い、中村に息子になってやれと強要し、その金が取れないとなると老人に生命保険をかけさせる。
が、そのうちに寂しくなった川谷は中村の家族ごっこに加わりたくなるが、拒否させられてしまう。
その後、この疑似家族は崩壊、老人と一緒に酒飲んでいた川谷は、老人が寝入ったときに、放火して保険金を得ようとする。が、考え直して火を消して寝るが、完全に火が消えたわけではなく、川谷は火事で焼死。
家族が欲しくてたまらなかった川谷のみじめな死。
そして、一度は壊れた疑似家族は再び集まり、血はつながらなくとも絆を深める。
家族だと血の繋がりが一番重要だろうが、そうでなくても家族の絆は築けるからそれにこだわる必要がない。
と同時に血の繋がりは問題にならなくても、なんだかイメージに合わないと彼らから家族になることを拒否された川谷は、家族にはふさわしくないと烙印を押された残酷さに、作品の毒気がある。
無名時代の高田純次がシリアスな芝居をしているので、今のイメージとは違うので最初は似ている人なのかと思った。