ど田舎に生まれ、育った者にとっては、
ハードボイルド小説、ロック音楽、アクション映画、どれをとっても都会的であり、
どれをとっても自分とは対極の位置にある世界だった。
それでいながら、魅かれるままに、「ポケミス」の乾燥した活字の群れに、「MM」の
小さな活字のコンサート情報に、日活の無国籍アクション、東映やくざ映画に、身近
にないものを探し読み、見続けてきた。
いわば、媒体情報で、妄想を膨らませ、日常生活では味わえない憧れのものとして、
神格化したものが自分のうちに育っていたと言えるかもしれない。
そして、この映画である。一言一言が名セリフで、和田誠の「お楽しみはこれからだ
」で取り上げてもらいたいような気障すぎて日常会話に使えない台詞が、連射される。
何と出演者は、内田裕也、安岡力也、宇崎竜童、クリエーションと日本ロックの黎明
期に、単に音楽というのではなく、社会にロックに賭ける反骨な精神を注ぎ込んできた
人物達であり、蟹江敬三、山田辰夫、山西道広とクセのある脇役が映像を膨らませる。
松田優作。原田芳雄の弟分のように映画界に登場し、人気TVドラマ「太陽にほえろ」
「大都会」「探偵物語」と知名度を高め、遊戯シリーズのキャラクターと共に、国民的
?スター扱いとなった男優といえる。そのイメージそのままに、ブルースシンガーなが
ら、ストイックさと身軽なアクションをこなす探偵という役どころである。
何と、ミュージックビデオのようにバンド携えた十分に渋いブルース、独特の松田節
ともいえるシャウト感を味わえたりもする。
原案が松田優作、脚本丸山昇一、監督工藤栄一によるどんでん返しのあるストーリー
のなかに、全編を通じて都会ヨコハマ界隈を醸成する映像シーンの一つ一つ、記憶に残
すべき一コマに見えてくる。
松田と辺見マリ、田中浩二との関係想像は、ハードボイルドには、深い情けは似合わ
ないゆえにさらりと。何といっても遊びこころを楽しむ映画として製作され、それを楽
しんだ者こそ傑作とレスペクトする映画なのだから。最高である。