1981年公開の「月光仮面」。如何なる経緯で製作が決定したのか存じませんが、原作の川内康範が製作・監修・脚本のみならず音楽まで担当して大張り切り。お馴染みの主題歌「月光仮面は誰でしょう」に加へ、「愛の助っ人」なるエンディング曲を作詞作曲してゐます。監督は沢田幸弘で、川内康範と共に脚本も担当してゐます。
敵は「ニューラブカントリー」なる新興宗教みたいなもので、一部の若者が熱狂的な支持者になつてゐます。カシラは竹林賢法(鈴木瑞穂)で、この名は「幽霊島の逆襲」にて岡譲司が扮した役名と同じであります。主要メムバアに志穂美悦子、地井武男、ガッツ石松、五代高之ら。この「ニューラブカントリー」(も少しマシな名は無かつたのでせうか)は、レッドマスクなる全身赤いマントで覆はれた犯罪集団を率ゐ、銀行強盗とかを繰り返します。
そんなワル集団の前に立ちはだかるのが、我らが月光仮面。この作品世界では周知の存在のやうで、主題歌通り「どこの誰かは知らないけれど/誰もがみんな知っている」状態。「アッ月光仮面だ!」と、銀座のホコ天で、ビルの屋上に立つ姿を発見する人も目が良い。時代も下つた事もあり、そのスタイルは洗練されてゐますが、ターバンがヘルメットに変更されてゐます。アニメ版に合せたやうですが、好みぢやない。バイクアクションが中心で、CGなしの生身の演技で頑張つてゐます。一方二挺拳銃でバンバンは控へ目。後半ではヘリに掴つてワルを追ふ活躍も見せます。
ワルが強奪したカネを持ち主に返すのは良いけれど、「正義の手数料」として10%(被害者が悪辣な小松方正だつた時は20%だつたが)を徴取するのが特徴。「テンパーセント」と発音してゐます。
月光仮面を演じるのは、米国帰りのジョージ小原に扮する桑原大輔。この人、良く知らないのですが、素顔での出番は少なかつた印象です。やはり私立探偵・祝十郎に登場して欲しい喃。
志穂美悦子や地井武男がワル側か、と意外に思ひましたが、後半で信者の若者たちを悪事に巻き込まんとする鈴木瑞穂に反発して対立します。志穂美は鈴木に恩が有る身で、裏切つた地井を殺せと命じられますが、逡巡する間に、月光仮面に阻止されます。ところが鈴木の放つた刺客に地井は殺される! 何やつてんだ月光仮面。
若者たちを救ふ為に、志穂美は警察に身代金を要求、松田警部の藤岡琢也が現金入りのケースを持つて指定場所の東京球場へ赴きますが、してやられ、カネは取られるは若者たちは救へないはで散々であります。さらに信者の若者を集めた鈴木瑞穂、騙して毒で乾杯して集団殺人を目指しましたが、そこへ月光仮面が......!
何かと評判の悪いカラー新作(当時)の「月光仮面」ですが、わたくしはそれ程酷い作品とは思ひませんでした。少なくともリム出版の「8マン」より100倍良い。何しろヒーロー月光仮面の活躍をたつぷり披露してくれるのが良い。人が総て生身で演技するのも好ましい。ストオリイ的には前時代的だと感じる事が多いのですが、それこそ月光仮面のテイストではありますまいか。
勿論突込みどころは満載ですが、それも含めて微苦笑を交へながら鑑賞した次第であります。