香魂女 湖に生きる

こうごんおんなみずうみにいきる|Oilmaker's Family 香魂女|Woman Sesame Oil Maker

香魂女 湖に生きる

レビューの数

4

平均評点

76.3(10人)

観たひと

19

観たいひと

2

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 中国
製作年 1993
公開年月日 1993/11/20
上映時間 103分
製作会社 天津映画製作所=長春映画製作所
配給 東光徳間
レイティング
カラー カラー/ビスタ
アスペクト比 アメリカンビスタ(1:1.85)
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演スーチン・ガオワー 香二嫂(シアン・アルサオ)
レイ・クーシヨン 二叔(アルシユー)
ウー・ユィチュアン 環環(ホワンホワン)
チエン・パオクオ 任忠実(レン・チヨンシー)
フー・シアオクワン 燉子(トンツ)
チン・レイ 芝芝(チーチー)

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

香魂湖畔のゴマ油工場の女主人の姿を通して、中国の封建的倫理観や慣習とそれに伴う人生の悲哀を描く。九三年ベルリン国際映画祭グランプリを受賞した作品。監督は「蕭蕭(シャオシャオ)」、「黒い雪の年」などで日本でもよく知られる謝飛(シェ・フェイ)。主人公二嫂(アルサオ)を演じるのは名作「駱駝の祥子」のフーニウ役の欺琴高哇(スーチン・ガオワー)。知的障害の息子燉子(トンツ)の嫁、環環(ホワンホワン)を演じるのは中央実験話劇院の伍宇娟(ウー・ユイチュアン)。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

美しい水を湛えた香魂湖畔。香二香嫂油坊の女主人、香二嫂(シアン・アルサオ)は、二二歳になる知的障害の息子、燉子(トンツ)と従業員の金梅(チンメイ)と共に胡麻油を精製して生計を立てていた。夫は酒浸りで仕事をしなかったので、娘の芝芝(チーチー)を学校に送り出した後はもっぱら一人で工場の切り盛りをしていた。ある日、日本企業の女社長が香二嫂香油坊に投資するため、実地調査に来た。二嫂は女社長を湖へ案内したが、湖岸に来てみると燉子が漁師の娘、環環(ホワンホワン)にしがみついていた。環環は脅えて泣いていた。燉子の嫁取りのことで悩んだ二嫂は、胡麻油の卸業をしている任忠実(レン・チョンシー)に相談した。彼と二嫂は、彼女が三歳で売られて、一三歳でお金のために今の亭主に嫁いでからというもの、二十年来愛人関係にあった。環環を嫁に取ることを思いついた二嫂は、環環と恋人の金梅を引き離すように仕向け、環環の家が抱えている借金の督促をした。環環は金のために燉子の嫁となった。結婚してからも環環は、燉子を恐れて家に逃げ帰ることがあったが、それを二嫂は連れ戻した。ある日、忠実から別れ話が出た。その晩、亭主に忠実と会っているところを見つかりそうになった二嫂は、窓から忠実を逃がすが、その際、現場を環環に目撃された。次の日、忠実という支えを失った二嫂は、起き上がれなくなった。数日後、やっとベッドから這い出た二嫂は、湖に出た。かつての逢い引きの場所で泣きながら、同じ運命を辿ろうとしている環環のことをふと思うのであった。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2018/04/18

2018/04/19

70点

購入/VHS 
字幕


二人の女性の絶望と希望

飲んだくれの夫に代わってゴマ油製造の家業を切り盛りしている妻が知的障害のある長男のため金の力で嫁を迎え入れるが、このことで自分の過去と否応なしに向き合うことになる女性一代記。香魂湖と呼ばれる水の綺麗な湖を映し出すオープニングとエンディング、そこに流れるたおやかな歌曲が印象的であった。

大黒柱の妻もそこへ嫁いでくる若い娘も生活苦によって好きでもない男と結婚させられたという共通点があった。この事実を双方が認め合うことで精神的距離が縮まり、最後には姑の方から息子と離婚するよう勧められる。泣き崩れながら”貰い手がいない”と口にする嫁。二人の様子をじっと見つめる湖。ハッピーエンドではないけれど理解し合えた二人の女性の姿から、希望が絶望に僅かに打ち勝ったような心持になれた。

2003/01/26

2016/08/29

75点

テレビ/有料放送 
字幕


中国第四世代の傑作

謝飛監督作品でも、地に足がついた作品。どうしようもないような「あはれ」を感じさせる、中国第四世代の傑作。

2016/05/22

2016/05/22

78点

レンタル/東京都/TSUTAYA/SHIBUYA TSUTAYA/VHS 


湖に生きる。

ネタバレ

都市には都市の暮らしがある。山には山の、海には海の暮らしがある。そして湖には湖の暮らしがある。

主人公のアルサオは、飲んだくれの夫と知的障害のある息子を抱えながら、ゴマ油工場を切り盛りしている。朝早くから仕事をして、末娘を学校に送り出すと、家事をすませ、店番をし、再び工場で働く。彼女は界隈でも働き者でなかなかのやり手と評判だ。ある時、香魂湖の水を使って精製するアルサオのゴマ油に日本の企業が目をつけ、そこの女社長が彼女の元にやって来る。日本人が来たことで、小さな村は大興奮となる。アルサオも、女社長に招かれた高級ホテルとプレゼントされたキレイなスカーフに舞い上がる。見事契約が成立し、軌道に乗れば工場も拡大し、暮しも豊かになる。苦労を重ねれば、必ずいつかは良いことが起こる。アルサオは村人からますます一目置かれ、鼻高々だ。後は年頃になった息子に嫁を見つけて、自分も少しは楽になりたい。アルサオは知的障害のある息子の嫁に、村イチ貧乏な家庭の娘ホァンホァンを、金でつって半ばむりやり嫁に貰う。ホァンホァンは、工場の従業員と密かに恋仲だったが、アルサオは従業員に重要なポストを与えて、ホァンホァンと別れさせることに成功する。これで家も工場も安泰だ。メデタシメデタシ。

本当にそうだろうか?これで全て巧くいくのだろうか?

ある日、嫁のホァンホァンが泣きながら実家に逃げ帰ったまま帰らなくなった。知的障害のある息子が、ホァンホァンを抱いている最中に発作を起こして泡を吹いて倒れてしまったのだ。このうえなく恐怖を感じたホァンホァンは、ショック状態に陥ってしまったのだ。たったこんなことで実家に逃げ帰るとは、女手ひとつで家族と工場を切り盛りしている自分に比べて、この嫁はなんと根性の無いことか。アルサオはホァンホァンに苛立ちを覚える。アルサオは結婚の際にやった金をたてに、ホァンホァンを連れ戻しに行く。貧乏な実家の暮らしぶりを考え、ホァンホァンはしぶしぶ嫁ぎ先に戻ることする。

湖に生きる女たちは本当に働き者だ。アルサオも、ホァンホァンも、まだ子供の末娘まで。工場の規模も大きくなり、ゴマ油製造は軌道に乗り始め、嫁も落ち着き、これでアルサオの望みが一つひとつ叶っていく。あとひとつ残された最大の望み以外は・・・。

アルサオには十数年来の仲になる愛人がいる。兄と違って利口な末娘は、実は彼との間の子供だ。愛人は工場に物資を届ける配達人だ。街に住む彼には家庭がある。アルサオは彼から「妻とは離婚する」と言われ続けている。男の常とう手段だ。アルサオは何年も何年も、役立たずの今の夫と別れて、彼との新しい“幸福な”暮らしを夢見てがんばって来たのだ。

だが・・・結局、男は自分の元から去って行った・・・。アルサオは、湖に船をだして、誰もいない湖の真ん中で、ひとり泣く・・・。ただひとり泣く・・・。

長年の疲労もあり、とうとうアルサオは寝込んでしまう。彼女の心配をし世話を焼くのは、夫でも息子でもなく嫁のホァンホァンだ。結婚前は笑顔の絶えない可憐な少女だったホァンホァンだが、今ではもう笑顔をみることはほとんどない。アルサオはホァンホァンの体に無数の小さな傷跡を発見する。それは息子がホァンホァンに噛んだりつねったりした痕だった。実は、障害のある息子は「妻を抱く」という本来の行為を理解しておらず、「妻を抱く」ことは、妻の体を噛んだりつねったりすることだと思っていたのだ。アルサオはすぐにでも孫の顔を拝めると思っていたが、それは全くの間違いだったことを初めて悟る。

か弱いと思っていたホァンホァンが人知れず抱えていた苦しみ。この若い女も忍耐強い湖の女だ。とたんにアルサオの中に湧き出る憐情。「息子と別れてもいいわ」と嫁に伝えると「行くところがありません」と答えが返ってくる。アルサオは若いホァンホァンに、ふと自分の人生を重ねる。もしかしたら、彼女も、役立たずの夫を抱え、口先だけの愛人との“幸福な”人生を夢見て、この湖に生きるのかもしれない・・・。女ふたり、湖のほとり。自分の過去と嫁の未来を見つめ、静謐な水面を見つめる・・・。

湖には湖の暮らしがある・・・女には女の暮らしがある・・・。

1993/12/02

2013/07/02

95点

映画館/大阪府/テンロクユウラク座 
字幕


傑作

1993年12月2日に鑑賞。大阪・天六ホクテン座2にて。
配給は、TJC東光徳間である。中国映画20本目。

主役の女優スーチン・ガウアーがすばらしい。