原題"Amantes"で、恋人たちの意。
1950年、フランコ政権下のスペインで兵役を終了した青年が婚約者の下に戻り、就活するものの上手くいかず、紹介された下宿の未亡人といい仲になってヒモのようになってしまうという物語。
実話が基になっていると字幕されるが、正直、どうでもいい話で、婚約者と未亡人の間を行ったり来たりする青年の愛欲の煩悩が主題。未亡人に実は夫を毒殺したと打ち明けられ、婚約者を殺すように仕向けられ、結局青年は未亡人を選んで婚約者を殺してしまうが、時代が時代ゆえ、婚約者も愛が失われたことを知って自殺を望むという、いわば嘱託殺人のような結末を迎えるサスペンスタッチの終盤が、多少盛り上がる。
公開当時は濡れ場が売り物だったんじゃないかと思うが、今観れば大したこともなく、三角関係が好きだとか、年増女に恋人を奪われて死んでしまう悲劇のヒロインに感情移入したいというのでなければ、特段、愛について哲学しているわけではないので、退屈なラブストーリーでしかない。
フランコ政権下という状況設定もこのラズストーリーには一切関係ないが、あるいはフランコ時代の青年の閉塞感と退廃を描きたかったのかもしれないと深読みしてみるが、残念ながらそれは伝わって来ない。