ポンヌフ。男と女。絵描き。
となれば、わたしが連想するのはブレッソン『白夜』であり、4K修復の影響かもしれないが、パリの夜の青さは本当に美しい。ブレッソンもカラックスも画の美しさでは似ているかも。ただし、当然のこととして描写するものは全く違う。あくまでブレッソンは淡々と対象を捉えるだけだが、カラックスは対象の行動を通してドラマをみせる。大道芸をするホームレスのアレックスと眼を患う絵描きのミシェル。夜のポンヌフを彷徨う2人を通りすがりの車が発見する冒頭のシーンは既にドラマチック。
正直、ドラマとしてはいまいち。というのも主人公であるアレックスが好きになれない。ミシェルが過去を話さないのと同様、アレックスの過去も見えない。ミシェルを橋から追い出そうとする老人は、ホームレスという社会から外れた存在になるな、という人間の尊厳を大事にする意思を感じるが、肝心のアレックスは、いい言い方をすれば純粋な好意と愛をばら撒いているが、あまりにも純真すぎる。それ故のポスターを燃やす行為だったり人を殺めることになるのだが、そこには身勝手な愛ばかりがあるように感じられた。わたしが日本的な感性なだけかもしれないが、愛する女の為に身を引く美学がメロドラマの肝であり、それが大好きである手前、どうしてもアレックスに共感できない。ミシェルの悪夢は目の手術によって醒めることになるが、アレックスは自覚しない悪夢、いや薬もしくはミシェルの愛情がないと眠れない彼にとっては橋の上で彼女と一緒にいる現実だけを欲し、橋の上の生活から抜け出そうと、醒めようしているようには見えないところも、いまいちわたしにはピンとこない。当然、あの結末も。アレックスだけしか納得できないように思えるし、ミシェルも過去を話す時期を逸してしまったようにも思える。
とにかく、画の美しい素敵な面白い映画だとは思う。ただ好きになれなかっただけのこと。メロドラマとしては異質なカンジがした。それがレオス・カラックスの魅力なのだろうが。