ポンヌフの恋人

ぽんぬふのこいびと|Les Amants du Pont-Neuf|The Lovers on The Bridge

ポンヌフの恋人

レビューの数

47

平均評点

77.8(316人)

観たひと

571

観たいひと

72

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 フランス
製作年 1991
公開年月日 1992/3/28
上映時間 126分
製作会社 フィルム・クリスチャン・フェシュネール=フィルムA2
配給 ユーロスペース
レイティング
カラー カラー/ビスタ
アスペクト比 アメリカンビスタ(1:1.85)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

場面 ▼ もっと見る▲ 閉じる

予告編 ▲ 閉じる▼ もっと見る

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

パリのポンヌフ橋を舞台に、天涯孤独の青年と失明の危機にかられた女子画学生との愛を描く。レオス・カラックス監督・脚本による、「ボーイ・ミーツ・ガール」「汚れた血」に続く〈アレックス青春3部作〉の完結編で、製作は「カミーユ・クローデル」のクリスチャン・フェシュネール、エグゼクティヴ・プロデューサーはベルナール・アルティーグ、撮影は「汚れた血」のジャン・イヴ・エスコフィエが担当、音楽はリタ・ミツコによるオリジナル曲『恋人たち』をはじめ、デイヴィッド・ボウイなどの既製曲を使用。2025年12月20日(土)よりユーロスペースにて4Kレストア版上映。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

真夜中のパリ、人気のないセバストポル大通りの真ん中に横たわる男の足を一台のスポーツカーが轢いていく。それをなすすべもなく見つめる子猫を抱いた女。その男、アレックス(ドニ・ラヴァン)は今は修理のため閉鎖中のポンヌフ橋で暮らす天涯孤独の青年で、女は恋の痛手と眼の奇病を持つ画学生ミシェル(ジュリエット・ビノシュ)だった。数日後、収容所を抜けてポンヌフに戻ってきたアレックスはミシェルがそこで眠り込んでいるのを見つけ、橋に暮らす初老の男ハンス(クラウス・ミヒャエル・グリューバー)に彼女をここに置いてもらうように頼む。アレックスはミシェルの親友マリオン(マリオン・スタランス)の家に侵入し、彼女が初恋の相手であるジュリアン(クリシャン・ラルソン)に去られ、絶望に陥り放浪生活を始めたことを知った。革命200年祭を祝う夜のパリの街を、喧噪や花火や音楽が乱れ交う。アレックスは見物客に得意の火吹き芸を披露し、その姿にミシェルは感動する。2人は互いの気持ちを確かめ合い、夜のポンヌフ橋を踊り狂い、街をさまよい、抱き合うが、地下鉄構内でチェロの音を聞き、それがジュリアンだと分かると狂ったように捜し回るミシェルに、アレックスは彼女がやがて橋を去るのではと不安を抱く。ミシェルに放浪生活をやめ前向きに生きるよう忠告してくれたり、念願の絵を見るため美術館まで連れていってくれたりしたハンスは、自らセーヌへ身を沈めた。季節は秋となり、ある日、地下道を歩く2人の目の前に大きなミシェルのポスターが立ち塞がった。空軍大佐であるミシェルの父が出した尋ね人のポスターであり、彼女の眼の奇病の治療法が見つかったと記されてあった。ラジオでそれを知ったミシェルは有頂天になり、アレックスのもとを去る。次々とポスターを焼き尽くし、最後にはポスター貼りの男を車もろとも爆破、炎上させてしまったアレックスはやがて逮捕される。監獄に入って数カ月後、突然ミシェルが現れ、互いに生まれ変わったことを確認し喜び合う。そして、2人は雪の降りしきるクリスマスの夜に再会する。時を忘れシャンパンで祝ううち、3時の鐘を聞いたミシェルは帰ろうとするが、アレックスは彼女を道連れにセーヌの川底に落ちていく。一瞬抵抗したミシェルだったが、やがて目の前を横切った老夫婦の船に乗り、2人は2度と離れないことを誓い合うのだった。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2022年3月上旬号

読者の映画評:「ポンヌフの恋人」田﨑優歌/「パーフェクト・ケア」三吉啓司/「チャーリング・グロス街84番地」西脇蔵人

2019年9月下旬特別号

巻頭特集 キネマ旬報創刊100年特別企画 第5弾 1990年代外国映画ベスト・テン:ベスト15 解説

2011年2月上旬号

UPCOMING 新作紹介:「ポンヌフの恋人 ニュープリント版/HDリマスター版」

2005年11月上旬号

特集「ポンヌフの恋人」:

1992年6月上旬号

外国映画紹介:ポンヌフの恋人

1992年4月上旬春の特別号

外国映画批評:ポンヌフの恋人

1992年3月下旬号

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1992年1月上旬号

グラビア《Special Selections》:ポンヌフの恋人

2025/11/03

2025/11/11

80点

選択しない 


ふきだまりのような橋

ネタバレ

 久しぶりの再見。初見時は暗い映画という記憶しかなかった。そりゃ失明の危機にある画学生とか路上生活者といった底辺で暮らす人びとに焦点を当てているのだから暗いに決まっている。でも今回改めて観てみて、そんな彼らに一筋の光が差し込む瞬間がひときわ印象深く刻まれていて感慨深いものがあった。
 ふたりが出会う改修中のポンヌフ橋は愛を喪失した人々のふきだまりのような場所なのだろう。画学生ミシェル(ビノシュ)を追い払おうとする老人も妻と娘を亡くした不幸な過去がある。若いミシェルの居つくような場所じゃないという親心だろう。態度は随分と横柄だが。
 大道芸みたいなもので糊口をしのいでいるアレックス(ラヴァン)が自分のねぐらに寝ていたミシェルに興味を持つ。一目惚れというより興味を持ったといった感じ。片目を覆う絆創膏が痛々しい。アレックスがまるで猫とか犬といった動物のように描かれているのが面白い。映画はアレクッス三部作と呼ばれているのだから彼が主役に違いない。
 犬や猫のようにミシェルにまとわりつくようになる。離れたくない。だから彼女を連れ戻すために貼られた人探しのポスターを目の敵にする。張り巡らされたポスターに火を放つシーンは彼の一直線で不器用な愛を簡潔に表現している。
 結局その放火が元で監獄へ入れられるアレックス。いったん喧嘩別れしたにも関わらず面会に訪れるミシェル。そこで交わされる約束。
 終盤の雪のクリスマスのポンヌフでの再会シーンは名場面だと思う。でもなぜそのあとミシェルは帰ろうとするのか? 自分にはまだ問題があるみたいなことを呟いていたけど。このへんが監督の屈折したところだろうか。愛はそう簡単に成就しない、そういうものだという思い込みか。
 アレックスはやけになって彼女を道連れに川に飛び込むことでその愛の殻を突き破ろうとしたのだろうか。そこには死という結末もありえたかもしれない。当初のシナリオはそうだったようだ。でもふたりは砂利を運ぶ船に助けられ何とか未来に希望を繋げることができた。一瞬でも死を意識したふたりにはもう怖いものはなくなったのかもしれない。
 この映画が莫大な予算を費やした映画というのが最初どうにも腑に落ちなかった。登場人物は少ないし、寂れた橋が舞台だしどこにそんな金が掛かるのかと。でも実情を知って驚く。それも含めてインパクトのある映画でした。

2024/12/30

2024/12/31

79点

購入/ブルーレイ 
字幕


こんな映画は本当に4Kで丁寧にレストアされた条件で観てみたい。最初にフィルムに刻まれた映像がどうであったか。
高価になっても手元に持っていたい作品

2024/08/21

2024/08/21

80点

その他/TSUTAYA DISCAS 
字幕


そしてル・アーブルへ

パリオリンピックを見た後なので、セーヌ川周辺の風景が懐かし。特に後半のアレックス(ドニ・ラヴァン)が盗んだボートでミシェル(ジュリエット・ビノシュ)が水上スキーを行うシーンや花火のシーンは、オリンピックの華やかさを先取りの絵になる映像である。
映画は、レオス・カラックス監督のアレックス三部作の最終版であるが、アレックス自身は監督自身を映していると言われる。若者の孤独やエゴを描いている。
セーヌ川シテ島の先端にある名前(新しい橋)とは反対のフランス最古の橋と言われるポンヌフ橋上でホームレス生活をしている老人ハンスとアレックス。アレックスの本業は不明だが大道芸人で生活費を稼ぐ若者。
ハンスは娘を亡くし、生きがいを亡くした妻がホームレスとなり死亡したことを悔やみ自分もホームレス生活を選択した。そんな背景もあり女性のホームレスには厳しい。恋人ジュリアンにふられやけになったミシェルがこの仲間に入るが、ハンスは彼女を排除する。
ミシェルは父親が軍の大佐であり裕福な育ちのようだが、画学生であるが目の病でいつ失明するかもしれない悩み。アレックスとミシェルが不思議な関係で恋人のような関係になるが、ミシェルの捜索願いのポスターを目にしたアレックスがポスター張りの男を過失で殺し刑務所へ。その間にミシェルは手術で目が回復。3年の服役期間の間に二人の愛は再燃する。橋の上ではしゃぐ二人はセーヌ川に落ちたが、土砂運搬船に助けられ、そのままル・アーブルに向かう。船の舳先のシーンは、タイタニック(1997)を思い出すが年代的にジェームズ・キャメロン監督の方が参考にしたのでしょうか?
セーヌ川の先端にある橋だが、日本映画「泥の河」の堂島川の下流先端にある下に食堂のある船津橋を思い出す。

2023/08/27

2023/08/28

90点

テレビ/有料放送 
字幕


刹那の果てに

青春は一瞬。刹那とは、青春の閃光の時。
刹那的に生きることで命を燃焼する。時として、アナーキーに、破滅的に、ふしだらに。自分が傷つくことも恐れずに、毎日を刹那に生きる。それが自由だからだ。生きるためのお金は大道芸で稼ぐ。炎を吐くドラゴンよろしく、すべてを燃やし尽くす。
そんな不器用な社会から落ちこぼれた青年が、恋をする。自分の根城のポンヌフ橋で、彼女と出会い、恋に落ちる。
その彼女も刹那に生きる同類だった。刹那的な恋は、古今東西当然のように破滅に向かうと思われるが、これがなかなか破滅しない。彼女の失明が徐々に訪れるように、破滅も徐々にというとか。
破滅しないどろころか、さらに燃え上がる。漆黒の夜空を焦がす花火のように美しく。このポンヌフ橋、花火、恋人たちという刹那を掬い取った瞬間、映画は詩となる。カラックスのセンスを世界に証明した瞬間だ。映画は才能あるものによって進化する。後に続く者たちは、常にポンヌフの花火と比較される運命になる。
当然カラックスもヌーベルバーグの先輩たちを乗り越えようとする。そこでとった手段は禁じ手である、「ハッピーエンド」に打って出る。青春の一瞬の閃光は刹那として、突然な死を迎え、結果として永遠を獲得するという美学からあえて逸脱し、「まどろめよ!パリ」と叫び、恋人たちは未来に向かうのである。

2022/12/27

2022/12/28

80点

レンタル 


愛とはなんぞや?

パリのポンヌフ橋の上で暮らすホームレスの青年と、目の病気で失明しかかっている女性との恋を描いた作品。

愛とか恋とかいうものは結局わがままなのだな、と思わせるようなシナリオが見事。自分の都合のいいように庇護される存在でいてほしい、そのためなら相手の不幸すら願う、という人間の究極のエゴを見事に描いている。そのエゴが通じるなら両想い、通じないなら片想い、ということなのかな…。このあたりは「昼顔」などに通じるものがあるな、と思った。予想もつかない物語による不安定さが芸術的な方向によく昇華されている。評価されている作品というだけのことはある。主人公を追いかけるときの大胆なカメラワークなど、演出面も見応えがあると思う。

30年も前の作品だけれど、古さを感じさせないのも、普遍性があって素晴らしい。

2021/09/09

2021/09/09

84点

VOD/U-NEXT 
字幕


孤高に聳え立つ奇跡の一作

スタイリッシュな映像と色彩構成に全精力を注ぎこんだかのような作風です。中でも革命200年祭の花火の場面は映画芸術の魅力を凝縮した本作の白眉と言える仕上がりでしょう。

閉鎖されたポンヌフ橋に居着く大道芸人アレックスと失明の危機に怯える女子画学生ミシェル。ディテールこそ奇抜ですが基本骨格はオーソドックスなボーイ・ミーツ・ガールものです。目を疑うシーンは多数あれどストーリーとしては予定調和と感じました。

ジーン・シモンズばりの火吹き、燃え上がる地下道のポスター、火だるまになる業者。「火」にまつわるシークエンスが取り分け目に付きます。何のメタファーでしょうか?要・考察です。

アレックスの髪が伸びた辺りから転調します。ミシェルが「私のことはいつか話す」と言い続けた内容が明かされぬまま幕となり、やや消化不良でした。最後だけミステリアスになられても私のような初心者は困るのです…。結末は監督の意図と真逆らしいので、素直に映像美と雰囲気を楽しめば良いのでしょうね。

壮大なスケール感で後進の追随を許さない孤高の域に燦然と聳え立つ奇跡の一作と思います。