クー嶺街少年殺人事件

くーりんちぇしょうねんさつじんじけん|牯嶺街少年殺人事件|A Brighter Summer Day

クー嶺街少年殺人事件

amazon
レビューの数

111

平均評点

80.5(565人)

観たひと

793

観たいひと

158

(C)1991 Kailidoscope

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル 青春 / 社会派 / ドラマ
製作国 台湾
製作年 1991
公開年月日 1992/4/25
上映時間 188分
製作会社 楊徳昌電影
配給 ヒーロー
レイティング PG-12
カラー カラー/ビスタ
アスペクト比 アメリカンビスタ(1:1.85)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

男子中学生によるガールフレンド殺害という実際に起きた事件の再現を通して、1960年代当時の台湾の社会的・精神的背景をも描いていく青春映画。「海辺の一日」「恐怖分子」など台湾ニューウェイヴ映画界の旗手として知られる楊徳昌(エドワード・ヤン)監督の長編第4作目であり、日本における彼の初の劇場公開作。製作はユー・ウェイエン、エグゼクティヴ・プロデューサーはジャン・ホンジー、脚本は楊徳昌、ヤン・ホンヤー、ヤン・シュンチン、ライ・ミンタン、撮影はチャン・ホイゴンが担当。91年東京国際映画祭インターナショナル・コンペティション部門審査員特別賞、国際批評家連盟賞受賞。1992年4月25日より188分版(配給:ヒーロー)が、1992年6月5日より236分の完全版が公開されている。2017年3月11日より完全版の4Kレストア・デジタルリマスター版を上映(配給:ビターズ・エンド)。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

1949年、中国大陸での国共内戦に敗れた国民党政府は台湾に渡り、それに伴って約200万人も台湾へと移住した。1960年、そのように移住した張家の次男小四(シャオスー)(張震)は、中学の夜間部に通っており、“小公園”と呼ばれる不良少年グループに属する王茂(ワンマオ)(王啓讃)、飛機(フェイジー)(柯宇綸)、滑頭(ホアトウ)らと同級生だった。小四は少女小明(シャオミン)(楊静恰)と知り合う。彼女は小公園グループのボス、ハニー(林鴻銘)の彼女という噂だ。ハニーは対立する“217”グループのボスと小明を奪い合い、相手を殺して台南へ逃げたという。ある時小四は小明と一緒にいたと217グループに因縁をつけられるが、最近小四のクラスに転校してきた軍の指令官の息子小馬(シャオマー)(譚至剛)がひとりで助けてくれた。小四は小明へのほのかな愛情や、小馬との友情を育んで日々を過ごしていく。小四の兄(張翰)は優等生だが、たちの悪い友人“葉っぱ”と一緒に217グループのたまり場のビリヤード店に出入りするようになっていた。葉っぱはコンサートを開いて一儲けしようと企んでいたが、ビリヤードで負けがこみ217グループの現ボス、山東(シャンドン)に脅され、彼を滑頭に引き合わせることになる。山東は歌に夢中になっているハニーの弟二條(アーティアオ)を出し抜き滑頭に小公園グループをまとめさせ、さらに自分がそれを牛耳ろうという腹づもりでいた。そんな頃、ハニーが帰ってくる。50年代のアメリカン・ポップスに沸き立つコンサート当日の会場に彼はやって来て山東と和解しようとするが、山東は走り来るトラックの前にハニーを突き飛ばして殺してしまう。小明はショックで寝込み、小四は台湾人ヤクザとともにハニーの仕返しに行く。山東は殺された。その晩帰宅すると、小四の父(張國柱)は共産党との関係を問われ秘密警察に呼び出されていた。ある日、小四は小明とのつきあいを注意されてかっとなって反抗し、退学になる。彼は昼間部への編入試験を目指して勉強するが、滑頭から小明と小馬の仲を告げられる。小明は失業中の母をお手伝いに雇ってもらい、小馬の家に住み込んでいた。下校時の小馬を脅そうとして小四は学校へ行くが、小明に会い、話しているうちに自分でも分からぬまま小明を刺し殺してしまう。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2019年9月下旬特別号

巻頭特集 キネマ旬報創刊100年特別企画 第5弾 1990年代外国映画ベスト・テン:ベスト15 解説

2017年11月上旬特別号

MOVIE at HOME:●DVD COLLECTION 「台北ストーリー」「クー嶺街少年殺人事件」

2017年7月上旬号

読者の映画評:「メッセージ」吉田伴内/「メッセージ」広沢達哉/「クー嶺街少年殺人事件」志村秀人

2017年3月下旬映画業界決算特別号

「クー嶺街少年殺人事件」:対談 宇田川幸洋×暉峻創三 「クー嶺街少年殺人事件」1991年(あのとき)と2017年(いま)

「クー嶺街少年殺人事件」:若き映画監督が「クー嶺街少年殺人事件」を観たら・・・・・・

UPCOMING 新作紹介:「クー嶺街少年殺人事件 デジタル・リマスター版」

1998年2月上旬号

COMING SOON【新作紹介】:クー嶺街少年殺人事件

1992年9月上旬号

外国映画紹介:クー嶺街少年殺人事件

1992年6月上旬号

外国映画批評:クー嶺街少年殺人事件

1992年4月下旬号

グラビア《Coming Attractions》(新作紹介):クー嶺街少年殺人事件

2024/01/21

2024/01/21

90点

テレビ/有料放送/ムービープラス 
字幕


身のうち深くに振動波を送られてしまう

特に以下の俳優さんの存在感の波長がピリピリ来る。
小四(シャオスー)役の張震(チャン・チェン)さん
小明(シャオミン)役の楊靜怡(リサ・ヤン)さん
小猫王(リトル・プレスリー)役の王啓讃(ワン・チーザン)さん
小翠(シャオツイ)役の唐暁翠(タン・シャオツイ)さん

『リバーズ・エッジ』や『トレインスポッティング』のようなノーフューチャー(by 妻)行き詰まりの青春ではなく、家族の共同幻想をまだ信じ、どこかに「世界は変えることができる」という幻想を抱えた少年たちの物語。停電は多いものの、スイッチで灯りの点滅を試みることはできるのだ。それはエゴの存在証明。しかしそれはとても「自分勝手」な思いだから、ギリギリの人生を歩む中でこれしかない自分を生きている少女たちには暴力に近い圧力だ。また、本作には描かれていないが、その男性の「自分勝手」さは、中国大陸から台湾に逃走した「外省人」の宿命でもあるから、元から台湾に住んでいた人々にとってもやはり暴力的であったに違いない。

とはいえその「外省人」たちにしても、故郷を失い、不安を抱えて日々を送っている。その不安は、現在の不安定だったり貧しかったりする生活がかりそめのものではなく、ひょっとして永遠に続くのではないかと思い始めている不安でもある。だとすると台湾に順応した方が賢明なことはわかりきっているのだが、、、そういう親世代の不安は、家族共同体の中で伝染していく。だから少年少女は家庭以外の場所でも生き抜ける居場所を見つけなければならないのだが。スイッチで点滅させても灯りがつくとは限らないのだ。

時に頑固に定点カメラの視点で描き、時に暗闇と灯りの対比をさせ、スタッフやキャストの熱気、監督の技は圧倒的だ。傑作。










2023/12/31

2023/12/31

70点

テレビ/無料放送/BS松竹東急 
字幕


国家以上の必然が天体や気候のように画面を冒す

この世界は点滅しているかに見える.小四(張震)の母(金燕玲)だっただろうか,室内の照明を子が点けたり消したりすることを咎めている.時に世界は暗転し,闇に包まれてしまう.それは照明のスイッチを切るからでもあり,照明器具をぶち壊すからでもあり,停電するからでもある.手元に蝋燭が灯されることもあり,山東(楊順清)はそれを頼りに食事を摂っていることもある.また,小四は懐中電灯を学校と隣り合う映画スタジオから盗み出し,夜のどこかを照らすことがある.それでも暴力的な闇は抗いがたく,訪れてくる.チーム「小公園」のリーダーであったハニー(林鴻銘)は,セーラー姿で南の方からこの街に戻ってくるが,山東によって闇に投げ出されてしまう.その闇への意志は,誰の意志なのだろうか.
スタジオでの映画の撮影風景は,俯瞰的に示され,化粧や衣装があり,女優や監督がいる.小四は高音の声域を持つリトル・プレスリーこと小猫王(王啓讃)とスタジオの上部に忍び込んでいるため,撮影を俯瞰できるのであり,小四は後に監督に対し「何が映画か」とその薄っぺらさを突きつけている.
「我」あるいは俺がいて,家があり,国家がある.国家の走狗として子どもたちは学校に縛り付けられ,学生となっている.また,退学処分を受けても,学に拘らなけれならない事情がある.国家は斉唱を押し付け,学生がフリーズしている最中にあって,ハニーはその静止の中に動いている.彼が闇に放り込まれたのもその罰だったのだろうか.小四の父(張國柱)も学校教育に疑念を抱き,小四に対する学校の処分に抗議をする.道徳的な家族は小四を諭そうとするが,あまり響くわけでもなく,ただ聖歌がその場に響いている.経済や歴史の権化のような 小馬(譚至剛)が「兄弟」の認識で小四の前に現れ,アンニュイなヒロイン,小明(楊靜怡)をその経済力で平らげている.
ラジオは叩き,水平を調整すると時に聞こえてくる.バスが走り,戦車とすれ違い,オートバイや自転車が走る.また,台風がきて雨降る夜には,傘と合羽で武装した集団が現れ,輪タクに乗っている.バスケットボールが遊ばれ,ビリヤード台で玉が撞かれ,テニスコートも見えている.野球も盛んで,バットは凶器としても現れる.日本による占領の象徴として幾種類もの刀も見えている.そして製氷の技術も導入されており,うちわや扇風機とともに,その気候のありようを示している.庭には椿が植えられ,愛でられている.こうした背景や事情は,家や国家のさらに外部からやってきて,蚊帳の内側や押し入れの中に逃げ込んだところで,逃れるべくもないものたちとして現れている.
英語が聞こえる.翻訳される.叫び声や歓声がどこからともなく声の音として聞こえている.手元で木を叩く音が不愉快に聞こえ,さらに床を叩く,木靴か革靴の音がところどころで響いている.また,ブラスバンドの音楽がやや場違いに,しかし時にタイミングよく聞こえている.大きな必然と小さな偶然が多数の人生を織りなしていく.

2023/08/13

2023/08/13

88点

映画館/東京都/TOHOシネマズシャンテ 
字幕


シャンテにて、4K 4時間完全版鑑賞

初見、4時間完全版インターミッションもなかったがあっという間。主人公の少年、少女とも本当に魅力的で、公開時みていたら共感半端なかったと思われ残念。どぎつい描写とかは一切ないが、あまりにも瑞々しく切ない。私は変わらない、変えようなんて身勝手すぎる、というのは台湾人の本音のメタファーなのか。
家でテレビで観るには長すぎてきっと途中で止めてしまい、最後まで見切れないであろうことを考えれば絶対スクリーンで見るべき作品。
若い中国人、台湾人がたくさん見に来ていたように思われ、彼らにとっても大事な作品なんだろう。ぜひ若い感性があるうちに観ておきたい。まごうことなき傑作。

2023/03/25

2023/03/26

50点

テレビ/有料放送/WOWOW 
字幕


長すぎる・・

う~ん、伝えたいメッセージは何となく分かるけど、4時間弱という長さにする必要性があったんだろうか?3時間弱でも長く感じるのに、この長さではとにかく退屈で仕方がなかった。

2022/08/21

2022/08/22

90点

VOD/U-NEXT 
字幕


「僕だけが君のこと 助けてあげられる! 私はこの世界と同じ。誰にも変えることなど出来ないわ…」

妻がずっと気にかけてたので観賞。
四時間という長尺に妻が耐えられるか心配だったがなんとか完走。
事前にわかりにくいところを説明してたのが功を奏したか。
自身二回目だったが一回目のわかりにくかったところは解消できてたので純粋に楽しめた。
名作といわれてるが二回観て実感。
いつか三回目観るだろうしその時はもっとハマれそうである。

2022/02/27

2022/03/10

75点

レンタル 
字幕


思春期の殺人者の不条理。

ネタバレ

エドワード・ヤン監督のプロフィールは、1947年、上海に生まれ、2歳のときに家族で台北に移住した
外省人(Wiki)、と紹介されている。本作の主人公小四と一緒だ。それだけに現実の少年殺人事件には
驚愕したのだろう、夜間中学生小四の視点に対する忠実性は、作品の信頼性を上げる。

戦後の台湾は多難な模様は、1989年に公開された侯孝賢監督の映画「悲情城市」に代表される。
本作は、外省人が権力を握り、ある程度の落ち着きを示した1960年が舞台だ。それでも戒厳令下で、
本作の闇の深さはそのメタファーでもある。自然光のみで照明を使わず、人物が真っ黒になっても
カメラを回す。時折、傍若無人に走る軍用車も不気味だ。「大陸反攻」というスローガンも生きている。
蒋介石総統時代は国民党の一党独裁で、プレスリー好きの少年たちにも頭を覆う暗雲となっている。

映画では夜間中学校の隣に映画スタジオがある設定になっている。生徒たちは、スタジオの梁に
潜んで盗み見する。撮影中の監督は、主演女優のワガママに辟易している。設定ではティーン
エイジャーなのだが、三十がらみの女優で無理が目立つ。しかもスポンサーの後ろ盾を吹聴する。
監督は見学に来ていた小明を気に入り、オーディションに参加するように薦めた。
つまり監督は劇中劇を借りて、名もない思春期の出演者であることの真実性を強く訴えるわけだ。
この方針は大成功した。異春期特有のあやうさが映画の眼目なのだ。思春期の殺人者とはそういう
者なのか、思春期のファムファタールは成り立つのか、ローティーンの魔の域に達した。
トリュフォーの「大人は判ってくれない」がジャン=ピエール・レオと不可分なことは明らかだ。本作の
二人の主演者にも共通する。

ちょっと予習が必要な気もした。サラッと外国の中学生の物語として観ると、長丁場が少々退屈に感じる。
台湾の独裁政治の1960年を意識しないと闇の深さが理解出来ないだろう。
あまり調べて観ると、ラストの衝撃が割り引かれる。公開から時間が経つと、映画をベストな環境で
観ることはさらに難しくなる。