ミシュリーヌ・プレール日本初紹介作品 * ジャック・ベッケル
DVDはながらく希少商品だったが、この2023年4月12日に発売のコスミック出版「ボヴァリー夫人」10枚組に収録されている。
ジャック・ベッケルで検索されたし。
恋愛を題材にしながら、まるでフィルムノワールのようなタッチである。
軽薄な恋愛ドラマの装いをして、なんと辛辣な作品であろうか。
「肉体の冠」もまたシモーヌ・シニョレ主演のフィルムノワールに感じたものだった。
ミシュリーヌ・プレールは、ジェラール・フィリップとの共演作「肉体の悪魔」1947 が有名だが、本作はドイツ占領下の1944年に製作され、解放後の1945年にパリで公開された。
*日本公開は1949年。
キネ旬ベストテンで、1票もなし。
双葉氏も淀川氏も、無票。
双葉先生は75点ですが。
プレールが21才の時の作品である。
大人びた美しさで、とても21には見えない。
顔がアップになると、眼の美しさに陶然となる。
本作の彼女の役名もまたミシュリーヌで、なんか微妙に嬉しい。
ミシュリーヌ・・・、レティシア・・・、フランソワーズ・・・、フランスの女性名は美しい。
*この2023年8月で、なんと101才、お元気・・である。
「まぼろしの市街戦」が懐かしい。
映画は、300人の女性職員を抱えるファッション事務所が舞台、そこのデザイナーにして社長の男が主人公である。
演じるはレイモン・ルーロー、知らない俳優だ。
仕事でも恋愛でも、女性を道具にしか思わない、しようもない男。
彼の周りは、女だらけなのである。
そして社長の公私共々の友人ジャン・シュヴァリエのフィアンセとなるのが、プレール。
一カ月後あたりに結婚するのだという。
友人のフィアンセと知っていながら、何の迷いもなく彼女に猛アタックを開始する主人公・・・。
さて、この不道徳な恋の行方は?
男とは、女とは、恋とは、また真実の愛とは?
それらを冷ややかな目で、監督は見つめている。
この冷徹な眼がなければ、映画はただの女たらしの、くだらないストーリーへと堕してしまうだろう。
その眼を感じられるかが、この作品への肝である。
主人公に感情移入出来なければ、ペケという見方はおかしいと思います。
ただ不愉快なだけだと、ツライんだろうけど。
だから私は映画の中では、不倫はOK・・・です。
初期にして、ジャック・ベッケルの大傑作。
作品のタッチはまるで違うけど、クレールの「夜の騎士道」に一脈通ずるものがある。
紀伊国屋書店のDVDは、原版がPAL。
動きがモヤッと悪くて、この会社の製品にしては珍しく質が悪い、残念。
モノクロ・スタンダード、PALで1時間47分。
ジャック・ベッケル
「最後の切札」1942から「穴」1960 までの長編監督期間。
1958年にオフュルスの後を継いで「モンパルナスの灯」を完成させたのだが、その僅か2年後に53才で死去。
オフュルスは1957年に54才で他界している。
昔は、みな何と短命であったのだろうか。
まさに人生50年だ。 (プレール100年・・・)