偽れる装い

いつわれるよそおい|Falbalas|----

偽れる装い

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レビューの数

5

平均評点

82.6(11人)

観たひと

21

観たいひと

8

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 フランス
製作年 1945
公開年月日 未公開
上映時間 0分
製作会社 レソオル
配給
レイティング
カラー モノクロ/スタンダード
アスペクト比 スタンダード(1:1.37)
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

「アントワンとアントワーヌ」で名をあげた新人ジャック・ベッケルが監督した映画で、彼自らモーリス・オーベルジュおよびモーリス・グリッフと協力して脚本を書きおろし、オーベルジュが台詞を書いた。撮影はニコラ・エイエ、装置はマックス・ドゥーイ・音楽はジャン・ジャック・グリュネンワルドである。主演は「みどりの園」のレイモン・ルーローと新人ミシュリーヌ・プレールで、「六人の最後の者」のジャン・シュヴリエ「旅路の果て」のガブリエル・ドルジア、ジャンヌ・フュジェ・ジル、フランソワーズ・リュガーニュ、クリスチアーヌ・バリー、ロジーヌ・リュゲエ等が助演する一九四五年作品である。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

フイリップ・クラランスは、婦人服仕立屋としてパリでも名人といわれる腕利きである。職業柄、毎日婦人に接しているせいもあるが、性来の浮気男で女を口説くのも名人だ。冬の婦人服の新しいデザインと、目新しい女を得たいことが、彼のさしあたっての望だったが、友人ダニエル・ルウソーがリヨンに出かける前日、フイリップはダニエルの許嫁ミシュリーヌ・ラフォーリと初めて会った。女に知合いは多いが、彼女はすばらしい清純な美しさの持ち主である。婚約はしているがダニエルを愛しておらぬミシュリーヌは口説き上手のフイリップにほれてしまった。彼女はダニエルがリヨンから帰ったら、事情を打明けて婚約を解消してもらい、フイリップと結婚したいと考える。ところが、何としたことか、フイリップは処女の操をおのれのものとしながら、結婚の意思などはてんで無いことがわかる。ミシュリーヌは身もよもあらぬ心地がしたが、何ともやむを得ない。心ならずもダニエルのもとに帰って結婚する決心をして、花嫁衣しょうを、フイリップに注文する。彼は流行の新型の考案に一心になっていたが、ミシュリーヌの注文を受けると、彼は急に彼女を真実愛していることを感じ、彼女がダニエルと結婚するのを思いとどまらせようとする。ところが彼女は男心の変りやすさにいや気がさし、フイリップともダニエルとも結婚しないで、何処かへ行ってしまいたいと考える。フイリップが一緒に行こうとやって来る。そこに来合せたダニエルは、ミシュリーヌとフイリップは駈落するのだと感違いして、矢庭にフイリップに打ちかかり、外へほっぽり出す。彼はパリを終夜さまよい歩いて翌朝帰宅した。そしてミシュリーヌのために縫いあげた花嫁衣しょうをろう人形に着せて店を閉じてしまった。そこにミシュリーヌとダニエルが連立って訪れ、戸を破って入るとフイリツプ・クラランスの姿はなく、窓があいたままであった。窓から下を見おろすと花嫁衣しょうを着たフイリップは身を投げて死んでいた。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2023/11/06

2023/11/06

80点

購入 
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ラストは、ヒッチコック「めまい」です

2023年11月6日に鑑賞。DVDにて。1時間48分秒。スタンダード・黒白。ESSOS CINEMATOGRAPHIQUE FRANCAIS。

ジャック・ベッケル、巧いです。

前半2/3 は、フランス人が好きな恋愛模様である。後半、ミシュリーヌが花嫁衣裳の仮縫いに来た場面から、物語が転がる。

秘書「先生を呼んで来て」クラレンスの愛人のアンヌがミシュリーヌの花嫁衣裳の仮縫い室を覗く。クラレンス「君が必要なんだ」ミシュリーヌ「それでも土曜日に結婚するわ」クラレンス「2人でここを離れよう。総てを捨てて今すぐ」ミシュリーヌ「店もコレクションも捨てて?」★聞き耳を立てるアンヌ。クラレンス「偽りの自分を演じていた。やめるよ。愛してるよ。信じてくれる?」ミシュリーヌ「信じるわ。フィリップ」★アンヌ、ドアを開けた。クラレンス「盗み聞きか?アンヌは過去の女だ。そうだろ?」ミシュリーヌ「知ってるわ」クラレンス「ミシュリーヌ、君は帰ったほうがいい。明日また」アンヌ「皆が待ってるわ」クラレンス「そのためにここへ?」アンヌ「お別れね」→アンヌは従業員たちのパーティに出ずに、自宅で薬で自殺する。

パリの有名な服飾デザイナーでプレイボーイのクラレンスは、自分が製作したコレクション発表会に出すドレス(42着くらい)にすべて女性の名前をつけている(笑)また、今まで付き合った女性たちに最初に贈った自作のドレスを「マーガレット 1940年4月~1941年8月」などのタグをつけて秘密のクローゼットに保管している。

パリですが、主人公たちは皆、ディナーに行くときも自転車に乗っている。主人公のフランソワ・クラレンスは、パリで最高のデザイナーであるのに、彼女との有名レストランへのディナーに自転車で行っている。相手の女性も自転車である。そういう時代なのか?戦時下なんですね。だが、画面に戦時下という描写は全く感じられない、というのもすごいです。

2023/05/10

2023/05/11

80点

購入/DVD 
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ジャック・ベッケル監督がこれ程までの恋愛悲劇作品を作っていたとは!

フィリップ・クラランス、オート・クチュール界のトップ・デザイナーながら、その女たらしの何とも凄まじいこと。観る者全ての反感を買うのではないかと思う程だが、その身勝手さがかえって堪らなく良い。そんな彼が友とも言えるダニエルの婚約者ミシュリーヌと出会い、一目惚れ。ここからの押しが呆れるばかりだが、その展開もなかなか。確かにミシュリーヌの美しさと言ったら、、。あの結末も意外に胸を打つ。作品としての面白さもさることながら、この作品がナチス治世下のもとで撮影されていたということ。戦争の匂いを全く感じさせないばかりか、オート・クチュール界の華やかさや裏舞台を丹念に描いているということ。蛇足ながら、邦題のセンスの素晴らしさには脱帽(原題は「フリル」)

2023/03/21

2023/03/22

100点

購入/DVD 
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ミシュリーヌ・プレール日本初紹介作品 * ジャック・ベッケル

DVDはながらく希少商品だったが、この2023年4月12日に発売のコスミック出版「ボヴァリー夫人」10枚組に収録されている。
ジャック・ベッケルで検索されたし。

恋愛を題材にしながら、まるでフィルムノワールのようなタッチである。
軽薄な恋愛ドラマの装いをして、なんと辛辣な作品であろうか。
「肉体の冠」もまたシモーヌ・シニョレ主演のフィルムノワールに感じたものだった。

ミシュリーヌ・プレールは、ジェラール・フィリップとの共演作「肉体の悪魔」1947 が有名だが、本作はドイツ占領下の1944年に製作され、解放後の1945年にパリで公開された。
    *日本公開は1949年。
     キネ旬ベストテンで、1票もなし。
     双葉氏も淀川氏も、無票。
     双葉先生は75点ですが。
プレールが21才の時の作品である。
大人びた美しさで、とても21には見えない。
顔がアップになると、眼の美しさに陶然となる。
本作の彼女の役名もまたミシュリーヌで、なんか微妙に嬉しい。
ミシュリーヌ・・・、レティシア・・・、フランソワーズ・・・、フランスの女性名は美しい。
   *この2023年8月で、なんと101才、お元気・・である。
「まぼろしの市街戦」が懐かしい。

映画は、300人の女性職員を抱えるファッション事務所が舞台、そこのデザイナーにして社長の男が主人公である。
演じるはレイモン・ルーロー、知らない俳優だ。
仕事でも恋愛でも、女性を道具にしか思わない、しようもない男。
彼の周りは、女だらけなのである。

そして社長の公私共々の友人ジャン・シュヴァリエのフィアンセとなるのが、プレール。
一カ月後あたりに結婚するのだという。
友人のフィアンセと知っていながら、何の迷いもなく彼女に猛アタックを開始する主人公・・・。
さて、この不道徳な恋の行方は?

男とは、女とは、恋とは、また真実の愛とは?
それらを冷ややかな目で、監督は見つめている。
この冷徹な眼がなければ、映画はただの女たらしの、くだらないストーリーへと堕してしまうだろう。
その眼を感じられるかが、この作品への肝である。
主人公に感情移入出来なければ、ペケという見方はおかしいと思います。
ただ不愉快なだけだと、ツライんだろうけど。
だから私は映画の中では、不倫はOK・・・です。
初期にして、ジャック・ベッケルの大傑作。
作品のタッチはまるで違うけど、クレールの「夜の騎士道」に一脈通ずるものがある。

紀伊国屋書店のDVDは、原版がPAL。
動きがモヤッと悪くて、この会社の製品にしては珍しく質が悪い、残念。
モノクロ・スタンダード、PALで1時間47分。

ジャック・ベッケル
  「最後の切札」1942から「穴」1960 までの長編監督期間。
   1958年にオフュルスの後を継いで「モンパルナスの灯」を完成させたのだが、その僅か2年後に53才で死去。
   オフュルスは1957年に54才で他界している。
   昔は、みな何と短命であったのだろうか。
   まさに人生50年だ。 (プレール100年・・・)

2022/12/26

2022/12/26

-点

映画館/東京都/シネマヴェーラ渋谷 
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『偽れる装い』。マネキンと寝ている男が写る、誰だこれ?となったが話が進むにつれ分かってくる。振出しに戻って「FIN」。それにしてもこの男(レイモン・ルーロー)、人の婚約者(ミシュリーヌ・プレール)に手を出すとは節操なさすぎ。この高級服飾店、男性社員は社長だけのようだ。自業自得。

2009年

2015/02/22

85点

テレビ 


パリのオート・クチュール界を舞台にした恋愛悲劇

製作はベッケルの監督第1作『最後の切り札』(42)を製作したベッケルの幼馴染のアレイ・デ・フォンテーヌ。原案・脚本は同じく『最後の切り札』のモーリス・オーベルジュ。撮影はドイツ占領下末期の1944年3月1日に始まりましたが、電力不足などの理由で大幅に遅れ、パリ公開は1945年6月になりました。

パリのオート・クチュール界を舞台にした、華麗で洒脱にして狂気に満ちた恋愛悲劇です。

パリのオート・クチュールの高名なデザイナー、フィリップ(レモン・ルロー)は、取引先の絹織物業者ダニエル(ジャン・シュヴリエ←コメディ・フランセーズの名優)の婚約者で、19歳のミシュリーヌ(ミシュリーヌ・プレール)を強引に口説き落として、ものにしてしまった。ミシュリーヌはダニエルとの婚約を解消してフィリップと結婚したいと望むが、フィリップにはミシュリーヌと結婚する誠実な気持ちはなかった。ミシュリーヌは仕方なくダニエルのもとに帰って、ダニエルとの花嫁衣装をフイリップに注文する。ミシュリーヌの注文を受けると、彼は急に彼女を真実愛していることを感じ、ダニエルとの結婚を思いとどまらせようとするが…。

映画の冒頭に、マネキンと一緒に倒れて死んでいるフィリップの姿が映り、映画はセンセーショナルに幕を開けます。そして、フィリップの生前に時間は戻り、このようなことになった事の次第を説明して、ラストに再び冒頭シーンが再映される、というドラマチックな仕立てになっています。オート・クチュールの有名デザイナー、フィリップの存在感が最初から際立っていて、と言うよりも「どこか変」な感じを漂よわせていて、コレクション前の準備に忙殺されるフィリップの異様な雰囲気が、この作品に通底する不安感を生み出しているような気がしました。

ストーリーは三角関係(四角関係?)の恋愛ものなのですが、フィリップの独特なキャラクターとそれを際立たせる演出が、単なる恋愛映画で終わらせない緊迫感を醸し出してします。

また、ミシュリーヌ役のミシュリーヌ・プレール(当時21歳)のまばゆいばかりの美しさをぜひご覧ください。

カメラワークも大変美しいです。撮影のニコラ・エイエは「恐喝」 (64)、「いぬ」 (63)、「獅子座」 (59)、「巴里の空の下セーヌは流れる」 (51)、「陽気なドン・カミロ (51)、「オルフェ」 (49)、「パルムの僧院」 (47)、「商船テナシチー」 (34)などを手がけた名匠です。