もう1世紀も前の映画である。古典中の古典であり自分にとっては正直映画を観たという感覚よりも絵画とか美術品を鑑賞したという気分に近かった。
これまで断片的に観たことはあるけど、全編を通してみたのは今回が初めて。字幕も少なめでありストーリーもわかったようでわからない。ただおどろおどろしい雰囲気は同じドイツ表現主義映画とされる「ノスフェラトゥ」や「メトロポリス」「M」などと同様であった。
しかも当時の映画らしからぬ(つまり現代でも充分通用する)捻りの効いたオチが用意されている。このオチのおかげでそれまでモヤがかかっていたストーリーに晴れ間がのぞいた気にさせられた。なるほど本編が悪夢の如き背景によって描かれていたわけがわかったというか。ヒッチコックがやりそうなどんでん返し。
映画はもちろん無声映画なので背後にピアノ演奏が常に鳴らされていたのだけど、これがうるさく感じてしまった。映画と合っているようで合っていないように感じた。サイレント映画の難しいところだ。