怒りのキューバ

いかりのきゅーば|Soy Cuba|----

怒りのキューバ

レビューの数

7

平均評点

74.5(28人)

観たひと

41

観たいひと

4

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル 戦争
製作国 ソ連 キューバ
製作年 1964
公開年月日 1968/2/13
上映時間
製作会社 モスフィルム=イカイク撮影所
配給 日本ヘラルド映画
レイティング
カラー
アスペクト比
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

ソビエトの詩人エフゲニー・エフトゥシェンコの長編叙事詩『私はキューバ』を、エフトゥシェンコ自身とキューバの作家エンリッケ・ピネダ・バルネットが共同で脚色、「戦争と貞操」のミハイル・カラトーゾフが監督にあたった。撮影はセルゲイ・ウルセフスキー、音楽はカルロス・ファキニヤスが担当している。出演はセルヒオ・コリエッリ、サリヴァドル・ウッド、ホセ・ガリアルド、ルス・マリア・ラーソなど。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

○(わたしはキューバ、アメリカ人よ!)高層ビルとスラムが同居し、街は毒々しいネオンに彩られ、賭博場と夜の女が氾濫し、キューバの首都ハバナは、キューバ人のものではなく、支配者のものだった。マリアは、その歓楽街のクラブで、生活のため身を売っていた。ある日、アメリカ人観光客の一人がマリアに目をとめ名前をきいた。マリアは店で呼ばれている名前「ベティ」と答えた。その夜、アメリカ人はマリアの貧しい小屋にとまった。翌朝、アメリカ人は早々に身仕度をすますとマリアの十字架を買いたいと言った。その時、マリアの恋人で果物行商をしているルネが入ってきた。彼はそこではじめてマリアの職業を知った。「さよなら、ベティ」アメリカ人は逃げるようにして去っていった。屈辱と悲しみをかみしめるようにルネは呟いた。「ベティ?……俺は君のことをマリアだと思っていた」と。○(だれがこたえる、これらの涙に)働いても働いても借金がふえ、いつの間にか士地は全部地主のものになりペドロはすっかり老いこんでしまった。それでも老人は砂糖キビ畑で働いていた。灼熱の太陽の下で汗をながして働く時だけ悲しみを忘れることができた。ある日、地主の使いが、「この土地はアメリカ人に売り渡した。すぐに出て行け!」という、不意な、そして残酷な命令を持ってきた。老人は、心をこめて育てた畑に、住みなれた小屋に、火を放った。炎と黒煙は老人の絶望を嘲笑するかのように天に立ちのぼっていった。○(革命の書はインキで書かれない)ハバナ大学の学生運動家エンリケは警視総監暗殺を計画した。だが、家族と食事をする善良そうな、あまりにも平和な警視総監の姿に、ライフルの引金を引くことができなかった。しかし、家庭から一歩足をふみだし、施政者となった警視総監は一変した。アジビラを印刷していた学生を警官隊が急襲し、捕えられながら叫ぶ学生を、警視総監は、顔色一つ変えず射殺した。「闘わなければ!」エンリケは立ちあがり、校庭で集会を開いた。そしてその集会は、警察の威嚇射撃が、一羽の白い鳩を殺したことから、怒りのデモに変った。激しいデモの人垣に向つて、ホースの水が飛び、射撃の音が響き、その中でエンリケは警視総監のピストルに射殺された。しかし、革命は死ななかった。○(マノロよ、あなたの来ることを私は知っていた)貧しい暮しではあったが、妻と子供たちにかこまれ、マノロは農民として、ささやかながら幸せな生活を送っていた。ある日、銃を待った男が、マノロの家に立ちよった。恐らく、その男はシエラ・マエストラに立ちこもったカストロのゲリラ部隊に加わるために長い道を歩いてきたものらしかった。銃を持った男の嫌いなマノロは食物を与えると、その男をすぐに追い出した。男が去って間もなく、政府軍の飛行機が現われ、爆撃を開始、マノロの家は破壊され子供は殺された。ここで初めてマノロは敵を知り、戦いの必要をさとった。彼はカストロのゲリラの一員に加わるためにシエラ・マエストラに向った。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1968年4月上旬春の特別号

外国映画批評:怒りのキューバ

1968年3月上旬号

新作グラビア:怒りのキューバ

誌上ティーチ・イン 「怒りのキューバ」その問題点:キューバ革命をシンボライズ

誌上ティーチ・イン 「怒りのキューバ」その問題点:遺憾なく描かれた民衆の姿

誌上ティーチ・イン 「怒りのキューバ」その問題点:本質的葛藤は回避

誌上ティーチ・イン 「怒りのキューバ」その問題点:参考になる革命のアプローチ

誌上ティーチ・イン 「怒りのキューバ」その問題点:詩情豊かに綴られた革命映画

誌上ティーチ・イン 「怒りのキューバ」その問題点:真実を“煙”で覆った面も

誌上ティーチ・イン 「怒りのキューバ」その問題点:「怒りのキューバ」の成立事情

外国映画紹介:怒りのキューバ

2022/09/13

2022/09/13

80点

VOD/YouTube/レンタル/PC 
字幕


映像が!すごい!

Twitterでこの作品のハイライトシーンがなぜか何度も流れてくるのを見て、まるで実現不可能にしか見えないそのカメラワークに驚愕したのは私だけではないはず。YouTubeで公式動画が見つかったので見てみました。(「Mosfilm I am Cuba」検索で見つかるはず)

キューバは憧れの国。ツアーで見て回れたのはごくごく一部だけど、ストリートミュージシャンやストリートダンサーのスキルがあまりにも高いのと、素朴で明るい人たち、南国のさわやかな気候に魅せられました。老後に移住するためにスペイン語勉強しようと思ったくらい。(一瞬だけ)

でこの映画。音声はスペイン語(キューバだから)にロシア語のボイスオーバー、英語字幕。英語はYouTubeユーザー用につけたんでしょうね。このボイスオーバーのめちゃくちゃ邪魔な感じ、・・・ウズベキスタン航空の機内映画と同じだ。出演者が何人いても男女二人だけがボイスオーバーする。吹き替えじゃなくて、元の音声を残しておいて、少し遅れてロシア語が重なるという、同時通訳方式。ウズベキスタンも旧ソ連だから、この文化を受け継いでしまったのかな。機内で「ジョージアは映画の国だけど、ウズベキスタンの映画文化はあまり盛り上がってないんだろう」と感じたけど、旧ソビエト圏みんな同じなんだろうか。

内容は、戦意発揚というには、キューバ人がやられっぱなしだった。革命で彼らは勝ったのにそういう良い場面がない。冒頭は高級リゾートホテルで水着ファッションショーをやっているところを俯瞰~プールの中にまで降りていくショットが見どころ。悪い外国人は英語を話す。クラブの音楽は「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」みたいなのじゃなくて、この頃全盛期だったアフロ・キューバン・ジャズってやつだな。オチがないんだけど高揚感があってクールなのだ。マチートというアーティストのCDを持ってるんだけど、彼は亡命して欧米で成功したみたい。この音楽は革命のときにキューバから出て行ったのかな。そして今のキューバ音楽に通じる市民の音楽が残った。

Twitterで見た、パレードを追っていたカメラが壁に沿ってビルを上り、葉巻工場の中を通って、彼らが掲げた旗を通り越して、空中からパレードをまた見下ろす映像。ドローンを使っても操作が難しそうな圧巻の映像は、開始から1時間45分頃です。

解説テキストがYouTube動画のところに載ってるので、それも読むと手持ちカメラを受け渡しながら撮影したとか、多少は情報が載ってます。撮影技術に興味のある人には必見の作品です。

2019/04/13

2019/09/13

75点

映画館/東京都/シネマヴェーラ渋谷 
字幕


こんなにも自由で大胆なキャメラワーク

シネマヴェーラ渋谷のソヴィエト映画特集。「戦争と貞操」「赤いテント」を大昔観ただけのカラトーゾフですが、「怒りのキューバ」は、革命万歳を無邪気に唱えるヨヨギ的単細胞教条主義にはうんざりするものの、まるでラウール・クタールや鈴木達夫を思わせるキャメラの自由な動きを駆使した長回しには、心底度肝を抜かれました。カラトーゾフに、こんなにも自由で大胆なキャメラワークが許されていたとは驚きです。
「怒りのキューバ」は、翻訳・岩崎昶(!)とクレジットされた冒頭の字幕で、この映画が革命前夜のキューバ、つまりバティスタ政権下の合衆国の傘下にあった時代を再現したことを伝えており、都会のホステスから、サトウキビ農家の小作人、カストロらのゲリラ活動に連帯する学生などが、バティスタによる独裁政権下の圧政に喘ぐというオムニバス映画です。
冒頭近く、首都ハバナと思しき街のナイトクラブで気に入ったホステスの自宅に押し掛け、関係を持った米国人が、翌朝、彼女の家があった貧民窟から街中に降りてゆく姿を、延々と手持ち長回しで追ったあと、キャメラがグンと上に上がる俯瞰ショットが、どうやって撮ったのか不思議です。
もっと驚いたのは、エンリケという名の男が反政府ゲリラデモの過程で警官に射殺され、彼の遺体が運ばれる様子を映したキャメラが、建物沿いにどんどん上がり、上階にある葉巻工場にキャメラが入った後、工場内を移動して窓から出たキャメラが、上空から見下ろす俯瞰ショット。ドローンがない時代、どうやって建物から出たキャメラが宙空から見下ろす俯瞰ショットが撮れるのでしょうか。
「怒りのキューバ」は、その撮影手法や場面構成、スペイン語で朗読される詩や出演者の台詞を吹替るのではなく、ロシア語訳を上から被せる形でナレーションする表現法など、カラトーゾフの作劇の斬新さは素晴らしいと思えるだけに、結局のところ人民の団結万歳、革命万歳というお題目に収まる姿勢が残念です。

2019/04/17

2019/04/18

85点

映画館/東京都/シネマヴェーラ渋谷 


確かにこれはすごい。
一体どうやって撮影してんだってシーン多し。
ダッチアングルをあおりでキメるそのアングルに全く迷いがない。
カメラに人格を与えたような撮影手法に、爆撃、暴動、放火と規模感でも圧倒してくる。
内容がプロパガンダ的ストーリーだったので、最後までストーリーに没入することはなかったけど、映像資料としては群を抜いてると感じた。
演者のアクションにあわせてカメラも動く。
銃口を覗くシーンなんか寸分違わず動く。そして寸分違わず止まる。即興撮影とでも言うべきか。
エグい。

特に、石段での暴動の後市民によって行進していくシーンは、確実に一回ダイナマイトみたいなのを作ってる「地面のある空間」をドリーしているはずなのに、そのまま空撮的に宙を浮いて俯瞰のまま前に進んでいった瞬間、これはマジックか??と前のめりになった。
マジどうやって撮ってるんだよあれ。

とりあえず、滑り込みで観れてよかった。


2019劇場鑑賞76本目

2013/09/20

2013/12/27

60点

映画館/東京都/シネマヴェーラ渋谷 


ソビエトの監督が1964年に撮った、キューバ革命前夜を舞台とした映画。たしかに社会主義プロパガンダ映画には違いないのだけれども、冒頭のボートで小川を下るシーンから、スタイリッシュで臨場感あふれる白黒映像の美しさにひきこまれる。ストーリーも、特定のヒーローに焦点をあてるものではなく、恋人がいながら米国人相手のクラブではたらく娼婦、地主が土地を米資本に売り渡したために追われる農民、抵抗運動に参加する学生、ゲリラが出没する山岳地帯の農夫の短いストーリーをつなぐオムニバス・スタイルを採用しており、大げさな感情移入を強いる典型的なプロパガンダ映画とは一線を画している。絶望した農夫がさとうきび畑に火を放つシーンや、抵抗運動に倒れた学生の葬列を人々が見送るシーンの、なんとダイナミックで美しいことよ。ソ連から来たスタッフが、主義主張よりも何よりも、キューバに魅せられて撮っていることが伝わってくる映像だ。

2013/09/20

2013/09/21

60点

映画館/東京都/シネマヴェーラ渋谷 


印象的なシーンの数々

これも映像がいい。特に後半、一体どうやって撮ったのか不思議な迫力のあるシーンが続々と繰り出されて前のめりになった。作品としては政府広報というか、革命を美しくまとめ過ぎた感あり。

2013/09/15

2013/09/16

74点

映画館/東京都/シネマヴェーラ渋谷 


驚嘆すべきカメラワーク

#804 シネマヴェーラ渋谷「怒りのキューバ」。ソ連、キューバ合作の1964年作品。擬人化したキューバの視点でコロンブスによる発見からカストロによる革命までの500年をオムニバス形式で綴った叙事詩である。ナイトクラブや貧民街、サトウキビ畑でのカメラワークには驚嘆すべきものがある。