本作が1925年に製作された共産主義のプロパガンダ映画のカテゴリーに入るものだとしても現代において映像の圧倒的な訴求力に驚かされる。
その最たるものがオデッサの階段と呼ばれる「映画史上最も有名な
6分間」だろう。
帝国のコサック兵が横一列で階段を下りながら階下で逃げ惑う一般民衆を一斉射撃で狙い撃ちする整然たる粛清の構図の中,驚愕、憤怒、混乱する民衆の姿を時にクローズアップを織り交ぜながらカオスの惨劇が描かれる。
特に手を引いて逃げたはずの幼い息子が階段で転び母親と一瞬離れたすきに息子は上から急いで逃げ惑う民衆に散々踏みつけられ虫の息に、その息子を助け抱いて銃を構えて降りてくるコサック兵に抗議する母親の悲痛な叫びはクローズアップと共に鮮烈だ。
そして容赦なく撃ち殺し、階段を下りていく兵隊たち。
更に赤ん坊を乗せた乳母車が撃たれた母親に押される形で階段を落ちていく惨劇。
これがモンタージュ理論の先駆であり現代においても一つの模範と言われるのも納得だ。
また本作の描く戦艦ポチョムキンの水兵たちが艦長ら上官に反乱を起こすきっかけが食べ物に由来する事件でウジのわいた肉を調理した料理を拒否して備蓄された缶詰めを食べたことから命令違反として銃殺されそうになったことを疑問に感じた兵らが起こしたものだ。
その中でウジのわいた肉を見て、日露戦争で日本の捕虜になって出た料理の方がましだという一節があり、この反乱の直前に日露戦争の敗北があり、帝国への不満から革命へと大きな歴史のうねりを予感させる。
映画として歴史的証言として貴重な作品と評価したい。
また、ロシアという国の権力者が人を人と思わない中で権力装置としての軍隊を恐れる理由の一端もわかる気がした。